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【ニッチすぎる法律解説】シリーズ|弁護士山下瑞木

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あまり解説されていない法律知識を解説します。すぐではないかもしれないけれど、いつかなにかの役に立つかも。
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記事一覧

司法関係者が使いがちな「本件〇〇」という用語法【ニッチすぎる法律解説】

法律用語で、一般に使われる意味と違う意味のものがあります。たとえば「善意・悪意」「社員」「期日」といったものです。 また、法律業界では世間と違う独特の読み方をするものがあります。「遺言(いごん)」「競売(けいばい)」「兄弟姉妹(けいていしまい)」「境界(けいかい)」とか。 どの業界でも、特有の言葉や用語法ってありますよね。 法律実務における「本件〇〇」今日ご紹介したいのは、わが村でよく使われる「本件〇〇」という用語法です。 たとえばどんなふうかというと、こんな感じです

来週は4連休!祝日って何を祝うの?【ニッチすぎる法律解説】

Go Toトラベルキャンペーンが話題になっています。結局、7月16日には、「東京発着旅行は対象外へ」という報道。かなり迷走している印象です。 政府がこのタイミングで「Go To」を中止にしたくないのは、7月23日からの4連休をにらんでのことではないかと思います。 「Go To」の是非はともかく、新型コロナ拡大といった社会情勢もいったん脇において、祝日ってわくわくしますよね。 っていうか、「スポーツの日」って何?体育の日じゃないの?今回は、そんな祝日、休日について、法律が

いろはにほへと・ちりぬこる?事件記録符号が愛くるしい件【ニッチすぎる法律解説】

7月14日の記事を書くに当たって、久しぶりに最高裁の事件記録符号規程を見たのですが、この符号たち、意外に愛くるしいところがあります。 符号に使われる文字と並びまず、符号がどういう並びになっているかというと、基本的にはイロハ順です。民事の場合はカタカナ、刑事の場合はひらがな、家事は「家」の後にカタカナとなっています。 行政事件だけはなぜかアイウエオ順で、「行ア」から始まり「行ニ」まであります。「六法に入れてもらえぬ行政法」という有名な川柳がありますが、最高裁も、行政事件を特

事件の名づけはどうやってするのか【ニッチ過ぎる法律解説】

今回は民事訴訟事件のネーミングの話です。民事訴訟はどれくらいあるかというと、だいたい年に50万件くらい起きてます。平成30年度司法統計年報によると、地方裁判所で受理した通常訴訟の件数が約14万件、簡易裁判所で受理した件数が約34万件となっています。 これだけありますから、それぞれの事件を他の事件を区別するための「名づけ」が必要です。市民の場合、氏名とか住所とか生年月日とか、あるいはマイナンバーとか基礎年金番号といったものがありますね。民事訴訟事件にもそういうものがあります。

続・弁護士は事務機能を外注できないのか【ニッチすぎる法律解説】

「弁護士は事務機能を外注できないのか?」(2020/7/7)の記事を書いた後、永尾廣久「福岡県弁護士会における事務局法人問題のとりくみ」(自由と正義1995年10月号)に接しました。 やや古くなっているところはありますが、「事務局法人」に関する数少ない文献ですので、本稿でご紹介したいと思います。 論文のタイトルには「事務局法人問題」とあります。事務局法人に慎重なスタンスなのかな、という第一印象を持ったのですが、実際の内容は、全体として事務局法人の普及・活用に前向きな論調に

弁護士は事務機能を外注できないのか?【ニッチすぎる法律解説】

弁護士法は、弁護士又は弁護士法人でない者が法律事務を取り扱うこと等を禁じており(72~74条)、かつ、弁護士の職務遂行上のルールである「弁護士職務基本規程」は、非弁護士との提携や報酬分配を禁じています(11条、12条)。なので、弁護士にとって外部業者への「外注」とか「業務委託」は結構デリケートな問題です。 弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所の破産世間、そして業界を大いに騒がせているこの問題。報道(上記ダイヤモンドオンラインの記事、週刊新潮2020/7/9号の記事等)によると

自分の事件なのに「調停がいつ開かれたか」を確認できない?【ニッチすぎる法律解説】

前回のニッチすぎる法律解説で「大法廷への論点回付」について解説したところ、思いもよらず反響をいただきました。どの層に受けたのかさっぱりわかりませんが、うれしいですね。SNS感あります。 今回は、自分自身の体験から反省も込めて。 調停の経過を確認したいある担当案件で、民事調停が不調となって訴訟に移行したものがありました。現在も訴訟が進行中で、ここにきて和解の機運が出てきています。 私は、調停の経過を確認しようと思い、自分で作っている手控えと照合するため、調停を担当した某簡易裁

弁護士でも知らない?大法廷への「論点回付」とは【ニッチすぎる法律解説】

ツイッターを見ていると、当代一流の刑事弁護人であり尊敬する先輩でもある趙誠峰弁護士(早稲田リーガルコモンズ法律事務所)のツイートが目に入ってきました。 これ、最高裁判所大法廷への「論点回付」という制度なんです。 念のため断っておきますが、趙弁護士は勉強家かつ理論家で、リサーチを怠るような人ではありません。そんな趙弁護士でも知らなかった(?)「論点回付」について、Googleで検索してみると、東奥日報の用語解説ページがヒットするくらいで、まともな解説が見当たりません。そこで