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来週は4連休!祝日って何を祝うの?【ニッチすぎる法律解説】

Go Toトラベルキャンペーンが話題になっています。結局、7月16日には、「東京発着旅行は対象外へ」という報道。かなり迷走している印象です。

政府がこのタイミングで「Go To」を中止にしたくないのは、7月23日からの4連休をにらんでのことではないかと思います。

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「Go To」の是非はともかく、新型コロナ拡大といった社会情勢もいったん脇において、祝日ってわくわくしますよね。

っていうか、「スポーツの日」って何?体育の日じゃないの?今回は、そんな祝日、休日について、法律がどんなふうに決めているかを解説したいと思います。

祝日法

祝日については、「国民の祝日に関する法律」(通称「祝日法」)が定めています。祝日法は3か条からなるシンプルな法律で、その1条は、祝日の趣旨について、

自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。

としています。この規定は、昭和23年に初めて祝日法ができた時から変わっていません。

前身である大正元年勅令「休日ニ関スル件」は、「左ノ祭日及祝日ヲ休日トス」としていました。

さらにその前身である明治6年太政官布告は、「年中祭日祝日等ノ休暇日左ノ通候条此旨布告候事」(一年間の祝日等の休暇日を次のとおり定めておきましたんで、よろしく!みたいな意味)としていました。

祝日の内容も、国家神道の行事に紐づけられたもので、こんな感じでした。

図6

これらと対比すると、現行祝日法は、国が上から押し付けていたものからシフトし、国民みんなで決め、みんなで楽しむもの、というように祝日を位置付けていることが分かります。

こんなところにも戦後民主化が表れているのですね。「自由と平和を求めてやまない日本国民」という大げさな主語も、歴史を見ると納得できます。祝日は「休みと遊びを求めてやまない怠け者」のためのものではないのです。反省します。

どんな祝日があるの?

現行祝日法が定めている祝日は、次の16個です(祝日法2条)。

図2

昭和23年に祝日法が定められた時点では、祝日は9個。この間約70年で、7つの祝日が追加されています。

日付が決まっていないもの

建国記念の日については、祝日法では日付が決まっておらず、「政令で定める日」となっています。これを受けた「建国記念の日となる日を定める政令」は、

国民の祝日に関する法律第二条に規定する建国記念の日は、二月十一日とする。

としています。

建国記念の日は、昭和23年制定当時の祝日法にはありませんでした。「休日ニ関スル件」は「紀元節」として2月11日(神武天皇の即位日とされる日)を祝日にしていたのですが、戦後廃止されていたのです。

「紀元節の復活」について国会で長らく議論された後、昭和41年になって建国記念の日が定められることになりました。しかし、日付までは国会で議論の一致をみなかったので、政令に委ねられることになったようです。

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ちなみに、「建国記念の日となる日を定める政令」は、昭和41年以来、50年以上にわたり一度も改正されていません。いずれは、神武天皇の即位日に代わるような、国民みんなが「この日に国ができた」といえるような日付が出てくるかもしれませんね。

また、春分の日の「春分日」、秋分の日の「秋分日」という決め方で、具体的な日付は決まっていません。国立天文台が官報に掲載する「暦要項」で発表され、これにより年ごとに日付が確定します。今年は3/20と9/22ですね。暦要項は、毎年2/1に翌年分が掲載されるそうです。


スポーツの日

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スポーツの日は、平成30年の法改正で旧「体育の日」から改称されています。この改正法は「平成32年」(令和2年)から施行されているので、今年が最初のスポーツの日ということになります。

スポーツの日の日付ですが、祝日法の上では、「10月の第2月曜日」が維持されています。

ただ、「平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法」32条で、次のようになっています。

平成三十二年の国民の祝日(国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)第一条に規定する国民の祝日をいう。)に関する同法の規定の適用については、同法第二条海の日の項中「七月の第三月曜日」とあるのは「七月二十三日」と、同条山の日の項中「八月十一日」とあるのは「八月十日」と、同条スポーツの日の項中「十月の第二月曜日」とあるのは「七月二十四日」とする。

したがって、令和2年(「平成32年」)は、この年に限り、
・7月23日が海の日
・7月24日がスポーツの日
・8月10日が山の日
となっているのです(どうてもいいけど、元号を変換するのが面倒くさいです)。

ちなみに、この法律は「平成三十二年」(令和2年)の祝日の特例を定めているので、令和3年にオリパラが開催されるとしても、そのままでは適用できません。

来年の開会式の日程等が決まれば、改めて法整備が行われるのではないかと予測します。無事開催できれば、また大型連休になるかも?

祝日って何を祝うの?

祝日法は、それぞれの祝日について意味、すなわち、何を祝ったり感謝したり記念したりするのか、を定めています。

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春分の日が「自然をたたえ、生物をいつくしむ」のに対し、秋分の日は「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」といのは、ややアンバランスな気がします。いわゆる「お彼岸」のイメージは秋分の日の方ですかね。

海の日の「海洋国日本」って聞きなれないなあ、と思ってGoogle検索してみると、「日本探偵業協会」の下記ページがトップにヒット。なぜ探偵の方が海洋国を語るのかよくわかりませんでした(別にいいけど)。

祝日は休日とする

祝日法3条1項は、

「国民の祝日」は、休日とする。

としています。

また、3条2項ではいわゆる振替休日が定められ、3項では祝日に挟まれた平日を休日とすることが定められています。

2 「国民の祝日」が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とする。
3 その前日及び翌日が「国民の祝日」である日(「国民の祝日」でない日に限る。)は、休日とする。

この「休日」という概念が、いろんなところに効いてきます。たとえば、裁判所については「裁判所の休日に関する法律」があり、その1条において、

次の各号に掲げる日は、裁判所の休日とし、裁判所の執務は、原則として行わないものとする。
一  日曜日及び土曜日
二  国民の祝日に関する法律 ・・・に規定する休日
三  十二月二十九日から翌年の一月三日までの日(前号に掲げる日を除く。)

となっています。国会や行政機関にも同様の法律があります。

また、民法142条は、

期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律・・・に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。

としますし、民事訴訟法95条3項は、

期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律 ・・・に規定する休日、1月2日、1月3日又は12月29日から12月31日までの日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する。

としています。「期間の末日」というのは、おおざっぱにいうと「期限」あるいは「締め切り」のことです。

控訴(第一審判決の送達を受けた日の翌日から14日)のように、期間制限がある手続については、その期間の末日が「休日」であれば、その翌日に期限が延ばされる、となっています。

弁護士実務では、この延長に助けられることもあります。とはいえ、何事も余裕をもって行いたいものですね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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