惨事ストレスを学ぶ
こんにちは。mywayのμ(ミュー)です。
消防本部に人事交流で市役所から異動となった私ですが、ある日こんな言葉を目にします。
『惨事ストレス』
主に消防や自衛隊、警察など、人々が逃げる現場に命を懸けて立ち向かっていく方たちが日常的に晒されやすく、精神的なストレスをものすごく受け、フラッシュバックや自責感、不安感などといった特徴的なストレス反応が出やすくなります。(具体的な例を出すことで、具合が悪くなってしまう方がいるといけないので控えますが、一般の方も自分の命に危険を感じる出来事に遭遇すると惨事ストレスの反応が出ることがあります。)
研修で聞いたことがあるくらいの方はいましたが、弱音を吐いてはいけないという風土が根強い職場ということもあって、組織としての対策は取られていませんでした。
前課で福祉に携わり、精神疾患をお持ちの方たちとも接する機会があった私は、
「知ったからには見て見ぬふりをしてはいけない!!」と想いがこみあげてきました。この頃、私の脳裏にはよくジャンヌダルクが旗を掲げている絵が浮かんでいました。
しかし悲しいかな私の話はなかなか聞いてもらえないので、まずは休日に自費で研修に参加することにしました。
自衛隊心理幹部の方たちと東京消防庁の方が立ち上げた組織でしたが、いくつもの著書をお持ちの下園壮太先生に毎回直々に教えていただく機会があったことは、とても幸運だったのだと思います。
今でも惨事ストレスを抱えたクライアントさんにお会いした時に、動じることなく対応し、対処法をお伝えするカウンセリングができるのは、間違いなくこの時の経験があるからこそ。
実際にあったエピソードを交えた講義や実践練習をとおして、惨事ストレスやうつ症状に対しての基礎知識とカウンセリング方法を学んでいくわけなのですが、ここで私の不思議パワーがさく裂します。
研修会場に向かう途中、住宅街で迷子になりタクシーを探していると、目の前から「SOS」を掲げたタクシーがやってきたのです。
周りには私しかいません。
携帯電話で警察に連絡しているところを犯人に見られたら運転手さんの命が危ない。私の心臓の鼓動は激しくなり、ポケットの中の携帯を握りしめる手が汗ばんできます。
タクシーがあの角を曲がったらすぐに電話をしよう。そう決めて、車のナンバーと色を一生懸命覚えました。
パニックになりながら、角を曲がった瞬間110番通報。
「事件ですか事故ですか?」
「事件です。」
「どうしましたか?」
「目の前からきたタクシーがSOSを出していました。」
「法人ですか個人ですか?」
「法人?個人???え?????」
頭が真っ白になり、覚えていたナンバーもすっ飛び、有益な情報を何も伝えることができませんでした。
慣れない土地で迷子だと伝えると、状況確認も兼ねパトカーがやってきて、パニックになっている私を研修会場まで乗せて行ってくれました。
私のせいで運転手さんを救うことができなかった。何かあったらどうしよう。自責感でいっぱい、頭真っ白、動悸が止まらない、通りゆく救急車のサイレンの音を聞くたびに強い不安がよぎります。
研修内容が全く頭に入ってきません。そんな私に氣づいたのか先生が私を当てました。正直に今あった出来事で研修どころではないこと、まさに惨事ストレスの反応を体験している最中であることを伝えました。
すると、カウンセリング実践練習が始まりました。
私は絶好のクライアント役になるわけです。笑
まだ勉強中の方々とはいえ、タイムリーにみなさんのカウンセリングを受けることができたのはとても有難く、自分一人のせいではないと思えるようになり少し楽になりました。
惨事ストレスの反応が出ているときは、自責感が必要以上に強く出るため、事実ではないことでも自分を過大に責めてしまいやすくなります。
なので惨事ストレスのカウンセリングでは、事実確認が非常に大切なポイントとなります。事実なくしての共感は相手に受け取ってもらえないのです。
今回は、研修後にそういった事件がなかったか警察に連絡してみる、翌朝の新聞で確認する。という、パニック中の私ひとりでは思いつかなかった事実に基づく対処法を教えていただき、翌朝にはすっかり自力で落ち着くことができました。
しかし、もし事件が起きていたら、どうなっていたかわからないです。
おそらく先生に依頼し、正式なカウンセリングを受けていたと思います。
体験をさせて腑に落とさせる。
私はよくこういったことが起こるのですが、不思議で非常に有難いです。