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それは恋慕でもなく 友情でもなく
疚しい欲でも 愛とかでもなく
ただ私は君が好きだ
私は君が好きだ

ただそれだけの心持ちに
どうにも付ける名前がないようなのだ

君は唐突に夢に現れ
しばし楽しく時を過ごし
すっと立ち去っていく
それがあたり前かのように
来週か、もしくは再来週か
大方どこかで会うだろう
というように

思えば
私と君は実際そんな関係だった

何かよく趣味の話をして
ひとしきり盛り上がって
随分酔っ払って
時折ちょっとした
秘密すら分け合って
それは友情と呼ぶに差し支えない程だ

つまりは君とは
少なくとも
その頃のほかの友人達と同じ位には
友人というものになれた筈なのに
なぜか奇妙な隙間がいつも有った

それは私が作っていたのか
彼が作っていたのか

君の周りには私の友人達
私の周りには君の友人達
思い出せば思い出す程
私たちは友人になれた筈なのだ
私たちも友人であれた筈なのだ

だがその奇妙な隙間は
ついに踏み越えられなかったのだ

その界隈では良くある事で
笑い話で済みそうな事だが
彼には一度
大失態から助けてもらった

その時君の
腕の力が思いの外強かった
一瞬の躊躇も見せなかった

それから随分の年月を経て
半分忘れかけてる程だというのに
どうにも私の潜在意識というのに
踏み越えられなかった隙間と
君が助けてくれた記憶とが
深く刻まれているようで

その潜在意識の刻み跡を
年に2、3度位の周期で
無意識の針が掠る時

私は君が好きだ
私は君が好きだ

ただそれだけの
名前の付かない心持ちが
夢の中で再生される

それは恋慕でもなく 友情でもなく
疚しい欲でも 愛とかでもなく
ただ私は君が好きだ

今更それを言葉にしても
なにかが違って聞こえるのだ

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