片付けるべきは、ほんとうに部屋?じつは自分の人生かも | 森博嗣『アンチ整理術』を読んで
部屋を片付けるのはあくまで手段であって、目的化してしまっては意味がない。むしろ、その目的を明確化することの方がよっぽど大事である。
この「アンチ整理術」では、森博嗣先生の実体験を織り交ぜながらひたすらにこの考えが述べられています。
ここ数年、アメリカでも大活躍されている片づけのプロフェッショナル・こんまりこと近藤麻理恵さんの影響もあってか、片づけや整理整頓に関することがメディアでよく取り上げられるようになった気がします。
片付けたいという思いには、必ず「現状を良くしたい」という目的が背後にあるはずです。
汚くてみっともない。人を呼んでも問題ないようにしたい。
モノに埋もれて作業スペースがなくなってしまった。スペースをつくりたい。
勉強しなくてはならないけど、なんだか机が汚くてやる気が出ない。まずは部屋を片付けて集中できる空間をつくろう。
こういった目的がある場合、達成するための手段として片付けは効果的でしょう。
ただ、片付けがあなたの目的に沿わない場合もあります。たとえば筆者の森博嗣さんは趣味で鉄道模型を作っています。本書にその作業部屋の写真が何枚か載っているのですがまぁ〜汚い!あらゆるモノがとっ散らかってます。
しかし森さんは最低限自分の作業スペースが残っている限り、片付けることはしないそうです。なぜか。それは片付けをすることで、創作に必要なものが手元から遠のいてしまい、作業の流れを逆に妨げてしまう要因にもなり得るからです。
たとえばネジや工具など、創作に必要な道具を片付けずにそのままにしておけば、必要なときにすぐ手に取ることができます。もし片付けて引き出しや棚に入れてしまえば、必要なときにいちいちそこから出すという行為を挟まなければなりません。
つまり、"創作作業を行う"という目的からすると片付けは必ずしも意味のある手段ではないということです。
ただ、もちろん初めに述べたように片付けが目的達成に効果がある場合もあります。だから片付けが意味がない、ということでは決してないのです。
本当に大切なことは、なんとなくメリットのありそうな手段をやみくもに選ぶのではなく、まず自分はどのようにありたいのか、何をしたいのかという目的・目標を明確にすることなのです。手段を選ぶのはそのあとのことです。
なんとなく仕事が上手くいかなかったり、会社に不満があったりすると、自己啓発本に載っているような「方法」に救いを求めがちです。
でもそれをやったからって、必ずしも良くなるとは限りません。もっと言うと本に載っているようなやり方が自分に合ってない可能性だってあるわけです。
まずはどこに自分が向かいたいかを自分の中で整理し、その上でやり方は自分自身で探してとにかく実行していくしかないのです。
なにかに悩んだり、焦ったり、将来に不安を覚えてよく本屋の自己啓発本を漁る私には、ギクッとさせられる内容でした。
手段や方法に依存せず、まずは自分自身と向き合おうと思います。
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