映画『ドラえもん のび太の地球交響楽』がやっぱり泣けた
※途中、物語に触れている部分があります
3月1日より、映画『ドラえもん のび太の地球交響楽』が公開されている。
ドラえもんの映画を観るのは十数年ぶり。実をいうと、泣きたくないから、という理由で避けていた。だが、今回は藤子・F・不二雄先生の生誕90周年記念作品ということもあり、観に行くことに。
結論からいうと、号泣してしまった。大人が泣いてしまうのは納得の内容だったのだが、子どもが泣くかと言われれば必ずしもそうではない気がする(どちらかといえばワクワクしそう)。子どもたちはこの映画をどういった気持ちで観ていたのか、ぜひ聞いてみたい。
では、大人の私はなぜ泣けたのか。その理由を本稿では書き綴っていきたい。
『ドラえもん のび太の地球交響楽』とは
音楽の時間に向けて、リコーダーの練習をするのび太。しかしまったく上達せず、ドラえもんの道具によって音楽の時間を消滅させてしまうほどには嫌になっていた(おっちょこちょいにより、一時すべての音楽を消してしまう)。
そんなのび太の前に現れたのが、歌がとびきりうまい不思議な少女・ミッカだった。彼女は、のび太たちを音楽の達人“ヴィルトゥオーゾ”と勘違い。紆余曲折あって、のび太たちは“ファーレ(音楽)の殿堂”の復活を手助けすることになるーーというのがはじまりだ。
『ドラえもん』は映画になると、普段いる街や日常を飛び出して壮観な景色を見せてくれる。今回は音楽がテーマということも相まって、音から、映像から、色彩から、その壮大な世界観が表現されていた。音楽が『ドラえもん』のさらなる魅力を引き出していた、といっていいだろう。
『ドラえもん』とはのび太の成長物語だった
本映画でも、のび太はできないやつとして描かれる。今回は「リコーダーが下手くそ」という形でだ。自らもできないと言い、練習さえ諦めることも。周りの仲間たちはなんと声をかけるのかというと、しずかちゃんは励ましてくれるものの、ジャイアンはスネ夫は「下手くそ!」、ドラえもんは「練習しなよ」と。いつもの彼らだな……と思いながらも、のび太にはふてくされた気持ちが募っていくのである。
そんなとき、のび太はどうするのか。ただ、練習するのである。ときに仲間の力を借りながら、無理だと思いながら、一歩一歩積み重ねていく。お約束的に、どうやったってのび太がヒーローで終わるのだが、彼のこの“やめないこと”“やり続ける”ことは大変難しく、苦しいこと。それは、大人になってから理解できる辛さだからこそ、私にはとても響いたのだ。
楽しむことに勝ることはない
物語が進み、すべてのファーレを消してしまう“ノイズ”と闘うことになったのび太たち。そんななか、ドラえもんの身体がノイズにおかされてしまう。のび太たちは音楽を奏でることでドラえもんを助けようとするが、何度やっても回復しない。ただ音楽があれば救われるわけではない、という妙なリアルさを突きつけられたシーンだ。
ここで大事だったのは、のび太たちの感情。「ドラえもんを助けたい」という気持ちはそろっていても、肝心の音楽の方に気持ちが寄り添われていなかったのである。音楽は、なぜ人を感動させるのか。それは美しい音色や綺麗な曲、というのももちろんあるが、演者が演奏を楽しむ心が人を感動させるのである。その証拠に、「すごく楽しかった!」とのび太たちが口を揃えて言った演奏で、ドラえもんは無事元に戻った。美しいよりも、綺麗よりも、楽しさに勝るものなんてなにもないのである。
ちなみにこのシーンは、のび太とドラえもんのパートナーシップも印象的だ。こののび太の言葉は、今思い出しても泣ける……。
必要ないものなんてない
最初から物語の2/3くらいまで、下手なリコーダーを吹き続けてきたのび太。「ピョーヒョロロロロ」と、逆にどうやったら出せるんだよ、と思うこの音が、物語で重要な役割を果たすのである。
登場人物を成長させ、下手なままで終わらせないというのはよくある。でも、この映画『ドラえもん』にとっては、のび太のお世辞でも上手いとはいえないリコーダーでさえ、非常に大切なものだったのだ。その、下手なものも実は必要だったんだ、という事実があることに、私はいたく感激してしまった。完璧でない部分もひっくるめて全てを大切にするからこそ、『ドラえもん』はこんなにも長く国民に愛されている。そう考えると、感動せずにはいられなかった。
最後に、一番好きだったシーンを書いて終わりたい。ミッカがいう音楽の達人“ヴィルトゥオーゾ”とは、絵本に描かれた人たちのことで、彼女はのび太たちがその“ヴィルトゥオーゾ”なのだと思っている。それを知ったのび太が、絵本を閉じていった一言。
ここでももちろん泣いた。この頃のび太はまだリコーダーが下手くそなのに、なんて優しくて、なんて責任感のあるやつなんだろうと。こんなところを見たら、日常の泣きベソややらかしくらい何度でも見逃せるわ、そう思ってしまったくらいだ。
ドラえもん のび太の地球交響楽
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