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【経営者・人事向け】心理学的経営を読んでみて 前編

この記事では、大沢武志著の「心理学的経営」という本のまとめと経営者ではなく人事目線で読んだ感想を記載します。

結論からいうと、この本は経営者は勿論、社内での人材活用・適材適所を担う人事担当者にこそぜひ読んでもらいたい内容でした。まずは、各章ごとに簡単な要約をお見せし、そのあと各章毎に感じた事(記事中グレー部分)を記載していきます。
(長くなったので前後編に分割しました。この記事は前編となります。)

【1章:モチベーションコントロール】

かつての経営組織論はいわゆる性悪説に近いものがベースとなっており、ルールや規約を設定する事で人材活用をすすめてきた。その一方で心理学的経営の観点では、人は自分のやりたい仕事であれば自発的に業務に携わる事ができるといういわば性善説に近い考えを用いる。
後者の考えに不可欠なものとして”モチベーション”があり、それは動機づけ要因衛生的要因(ハーズバーグの2大要因論)でコントロールし得るかもしれない。報酬設計や労働環境などは衛生的要因、仕事の裁量や何を学び得られるかといったものは動機づけ要因として考えられる。
また、目標設計についてもこの章では触れており、低い目標よりは高い目標の方がパフォーマンスが出る一方で、あまりに高すぎる目標では諦めによってパフォーマンスの低下を引き起こす事が指摘されている。

この章で書かれているモチベーションについては非常に共感できる部分が多かった。特に人事という立場にいると、どう評価するか、何が環境としてモチベーションを下げているのか、という部分に注目しがちであるが、実はそこを改善するだけでは解決しない事もままあるからだ。そういう経験を思い出しながらこの章を読むと非常に沢山の気づきを与えてくれた。動機づけ要因についてより詳細を知りたいと思った人は、ぜひこの本を読んで欲しい。
ただ、動機づけ要因と衛生的要因を分割して考察しているが故の違和感を感じた。というのも、たとえば自分の達成した成果がどれだけ評価されているかという動機づけ要因を定量的に評価するものが報酬だと感じている人間がいた場合に、衛生要因(このケースであれば報酬)を絡めて考える必要があるのではと感じた。

【2章:小集団について】

この章では、ホーソン実験から生産性に関わる要因について述べており、筆者は最も大きく寄与するものは労働環境ではなく、人間関係であると述べている。(特に非公式な)人間関係においてはその繋がり(凝集性)が強ければ強いほどその集団に属する人間の緊張度は低下し、生産性や集団規範意識は高まる。その集団の中で培われた思考が、カルチャー・風土として会社に根ざす事が多い。
これらの内容から筆者はさらに、グループでの体験が与える影響についても記述している。一般に個性の一部といわれる対人コミュニケーションについてこのグループ体験の中で見出す事ができるという。グループでの変化の仮定(グループプロセス)には、組織経営的に大きな気付きを与えるものが多く含まれている。

この章は、私のような周囲の目が気になるタイプにとっては非常に理解しやすい内容だったと思う。特に対人集団と言われる、対面で話をするレベルのコミュニティにおけるいわゆる”これが普通”という習慣は多くの場合、社則に適していないモノが多いが、多くの人がその習慣に従っている。一律に規則を設定する事の落とし穴に気づかせてくれる内容に感じた。

余談だが、転職をした友人と話していてよく出てくる意見として”新卒は特別”というものがあるが(これは能力の話ではなく、結束力や絆といったものに近いかもしれない。)、これは新人研修という長時間のグループトレーニングによってグループプロセスを経た故であるという事が言語化された。
長い間、同一コミュニティで人間関係を密にさせるような新人研修では、自分でさえ気づけなかった対人スキルについて気づかせてくれるだけでなく、それを超えたからこその強い繋がりを生んでいるのだと思った。
(今は新型感染症もあるので、不可能だが自分が研修やトレーニングを用意する立場になった時に、この気付きは胸中に秘めておきたい。)

【3章:組織の活性化】

この章では組織活性化の本質的課題は”自己革新”であると筆者は記述している。活性化した組織安定した組織が対局にあると考えた場合に、活性化とはつまり無秩序化であると捉える事ができる。あえて組織にとっての揺らぎ(採用・異動・新プロジェクト発足等)を起こす事で、組織をあえてカオスな状態に持っていく。そうすると、その無秩序を乗り越えるべく組織を構成する個人は変化へ対応する為に適応能を発揮する。故に筆者は自己革新こそが組織活性化の本質的課題であると述べている。

これを聞くと”とりあえず組織を変化させよう”と思うかもしれないが、筆者はクリティカルポイントを超えた場合の破綻についても触れており、非常に共感できる部分が多かった。一方で、個人によって適応能力は大小異なる為、変化を起こす前からチームが、ひいてはそのチームを構成する人間がどの程度の適応能力を有しているかを把握しておく事が人事の務めでもあるように思った。また、筆者が章中でイベントの有用性についても同様の理論で触れていたが、イベントを運営するメンバーが例年同じでは意味がないので、この辺りは気をつけたいと思った。

【4章:リーダーシップと管理能力】

【5章:適性と人事】

【6章:個性化を求めて】

4-6章に関しては後編に記載します。

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