「地下室」に宿る「卑屈な心」――井筒俊彦『ロシア的人間』
「全世界の目が向けられている。全世界が耳をそばだてている。ロシアは一体何をやり出すだろう、一体何を言い出すだろう、と。その一挙手一投足が、その一言半句が、たちまち世界の隅々にまで波動して行って、到る処で痙攣を惹き起す。今やロシアは世界中の真只中に怪物のような姿をのっそりと現して来た。為体の知れないこの怪物のまわりに無数の人々が、蝟集して騒ぎ立て狂躁している有様は、まるでスタヴローギンをめぐる「悪霊」の世界がそのまま現実となって出現したようだ。この怪物の姿を仰ぎ見ただけで、ただ