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【取材記事】生活困難者に食料支援を行うNPO法人「シェア・マインド」支援を持続可能にするため、スタートした新たな挑戦とは?

特定非営利活動法人シェア・マインドは、法人拠点のある府中市で食料支援をしているNPO法人です。2015年設立から7年、行政や地域の福祉団体と協力し、地域の方への食料支援を行っています。2022年7月、食料支援・食品ロス削減・就労支援を盛り込んだ、ワンバイワンのチャリティレトルト事業『スタンバイ』始動。レトルト事業を始めるきっかけや困難、食料支援活動や今後の目標などを、mySDG代表の小林がお伺いしました。

お話を伺った方

松本靖子(まつもと やすこ)様
特定非営利活動法人シェア・マインド代表理事
公益社団法人 東京社会福祉士会 低所得者支援委員会所属 1981年6月30日生まれ。東京都多摩市に生まれ、多摩市で育つ。 幼少時より、障害者や社会的マイノリティと、その家族が社会環境の中で受ける苦しみを間近で経験する。2015年、貧困によって全てを失った方を目の当たりにし、団体設立を決意。2015年11月、内閣府より認定を受けNPO法人シェア・マインド設立。
人が人としてあたりまえに守られるべき尊厳を、守り支える団体でありたいです。

インタビュアー

小林慎和(こばやし のりたか)
株式会社bajji 代表取締役CEO
 
ビジネス・ブレークスルー大学 教授 大阪大学大学院卒。
野村総合研究所で9年間経営コンサルタントとして従事、その間に海外進出支援を数多く経験。2011年グリー株式会社に入社。同社にて2年間、海外展開やM&Aを担当。海外拠点の立ち上げに関わり、シンガポールへの赴任も経験。その後、シンガポールにて起業。以来国内外で複数の企業を創業しイグジットも2回経験。株式会社bajjiを2019年に創業し現在に至る。
Google play ベストオブ2020大賞受賞。著書に『人類2.0アフターコロナの生き方』など。




■チャリティレトルト食品開発は、「法人の活動費確保の難しさ」と「生活困難者の多さ」を知って欲しかったため、取り組むことになった。


チャリティレトルト『スタンバイ』

小林:チャリティレトルト食品『スタンバイ』を立ち上げられた経緯をお伺いします。

松本さん:シェア・マインドは、食糧支援団体としてボランティア活動をしています。
食料支援活動には約束された収入源はありません。助成金や寄付金も受けて活動していますが、7年間の活動の中で、いつ、誰から活動への協力金をいただけるかは全く保証されていません。さらに助成金を受けると「ノルマ」ができてしまい、活動に制限が出てしまう状態でした。

とはいえ、食糧支援を行う中で、収入が入ってくる仕組みがないと、活動を続けられません。そこで、レトルト食品を作り、1パックが販売されると、全く同じ1パックのレトルト品が、生活困窮者の手に届く仕組みにしました。これがあれば、活動の収入源になり、安定した食料支援を行えると考えています。

小林:食糧支援は世界でですか? それとも日本ですか?

松本さん:日本です。今は法人がある市町村を中心に活動しています。地域住民に特化した支援です。逆に身近な方々を取り残したまま、遠方の方への支援を行うことは、私たちとしては方向性が違うような気がします。

小林:すばらしいですね。まずは身近な手の届くところから支援をすることは、とてもいいことだと思います。よくある話ですが「海外の支援をする前に、日本にも困っている人がたくさんいるじゃないか」ということもあるので、日本への支援を行っていることは素晴らしいです。

松本さん:海外の支援を行うフレーズでよく見かけるのは、「一人分のワクチンが30円の支援でできます」「この少ない金額で、多くの人を助けることができます」という「コスト」や「数」のイメージです。しかし、日本での支援になると「30円でできる」ことはない。寄付文化があまり根付いていないこともあると思うのですが、支援の説明をしていると、「日本で一人を助けるには沢山の金額が必要だ」と、強く印象に残ってしまうようです。国内の貧困問題のチャリティーがあまりない理由はそこも一つの要因なのだと思います。
しかし、苦しんでいる人がこんなにも多くいる中で、貧困問題解決のための資金調達のための仕組みがないのも大変問題です。多くの方に、貧困で困っている方が多くいることを知ってもらい、その課題解決に参加していただきたいという気持ちで、チャリティレトルト食品『スタンバイ』を始めました。

■「馬」のマークのついた、チャリティレトルト食品『スタンバイ』私たちがお約束すること

小林:『スタンバイ』のターゲットとしている地域や自治体はどこになりますか?

松本さん:法人の本拠地が東京都府中市になりますので、まずは府中市の自治体と連携を行いますが、購入してくださった方の地域に還元できる体制も準備しています。

小林:『スタンバイ』を1パック買うと、生活困難者に1パック届けられるということですが、お届けするルートはどのような形なのですか? 自治体に送ると、府中市が届けてくれるのでしょうか?

松本さん:府中市の自治体は食料支援を行っていません。自治体本体では食料支援をしていないので、民間のボランティア団体が自治体と連携し、ボランティア団体主体で食料支援をしています。
自治体と連携の取れているボランティア団体と協力するか、シェア・マインドが行政から連絡を受けて、お困りの方に食料を届けることもしているので、今の支援対象者にお届けすることができます。あとは子ども食堂の皆さんのご協力を通じてお渡しすることもできそうです。

小林:デリバリーコストはどういう形でまかなっているのですか?

松本さん:売上の中からになります。しかし最近の物価高と流通コストを考えると、500円のレトルト商品が困っている人に届く仕組みは、大きくはできないと思っています。『スタンバイ』以外にもレトルト食品などを開発・販売し、その売り上げも運転資金にしたいと思っています。

私たちがお約束することは、パッケージに馬のマークのついた、チャリティレトルト食品『スタンバイ』をご購入いただいた場合、「購入いただいたものと同じものが、生活にお困りの方に届きます」ということです。

小林:馬のマークには意味があるのですか?

松本さん:2年くらい前に、童話の挿絵に馬の絵がありまして、とても気に入ってしまいました。その挿絵作家さんに、『スタンバイ』のラベルに使いたいとお伝えしたら、オリジナルで描いていただけました。その時は、動物に深いこだわりはなかったのですが、馬の力強いイメージに惹かれました。背中に荷物を積み、力強く走るイメージが食料支援で食べ物を届けるという事業の象徴に合っていると思い、馬のマークになりました。

■開発段階の困難を乗り越え、まずは3つの味からスタート。テーマは「難しくないレシピ」それには理由がある。


チャリティレトルト『スタンバイ』

小林:レトルトは色んな味があるのですか?

松本さん:あります。まず、身近なお店で余りがちな食材から色々試してみました。ただ、1パック500円を支払っていただけるおいしさになっているかというところが課題の部分で、納得のいく味に仕上がっているのは現状3タイプですね。

実はレトルトの開発は遅れてしまったんです。その理由の一つが、コロナ禍で機材の納期が延期になったことで、試作の機会をなかなか作れず、そのため、私たちで作った試作品の再現性を逃してしまうことが多々ありました。
しかし、なんとか出来た3つの味は、もうすぐ販売ができそうです。

小林:それぞれどんな味なのですか?

松本さん:「魚が入ったトマト味のスープ」「鶏肉と青野菜のペーストで作った韓国風おかゆ、サムゲタン」「おから入りドライカレー」です。
皆さんに試食の際に感想をいただくときにはおいしいと言っていただけるか、ドキドキします。

小林:レトルトを作るには専門性が求められると思うのですが、松本さんは調理の知識などお持ちなのですか?

松本さん:私自身は全く知識があるどころか、お料理は不得意な分野です(笑)。
お料理が好きな方や、地域の飲食店のシェフに協力を得て、上がった候補の中から、まず簡単なレシピのものを選んで順に試作に入りました。

小林:ご協力いただけるシェフの方が何人もいらしたんですね。

松本さん:そうですね。しかし私としては、一般の学生や子どもたちにもこのレトルトのレシピ作りに参加してほしい気持ちがあります。シェフが作る専門的で複雑な味も大変魅力的ですし、一般の方が作るシンプルなおいしさにも魅力を感じています。

『スタンバイ』事業には、多くの方に参加いただきたいので、複雑なレシピにはしていません。それには意図がありまして、ゆくゆくは、『スタンバイ』で、生活に困っている方を雇用して調理をしていただけるようにしたいと思っています。調理経験がなくても再現しやすい美味しいレシピであれば、実現させる障害を少なくできますからね。

■生活困難な方に「食料」支援だけではなく「自立」も支援したい。そのために、皆が料理を体験出来る「厨房」を作りたい。

小林:今後の目標を教えて下さい。

松本さん:今後の目標は、収入源を確保して『スタンバイ』の販売と、食料支援が持続可能になることです。さらに、職員として関わった人が生計を立てられる事業に育てたいです。お困りの家庭に食料を届けるのと同時に、生活にお困りの方も、そうでない方も、どんな人にも厨房に来ていただき、お子様には食育もかねて、一緒に料理をし、自炊ができるようになって欲しいと思っています。

私は自炊ができるかどうかが困窮時の自立度に直結すると思っています。自炊ができないと、全て外食になるので、栄養バランスが崩れる上、お金もかかります。子どもたちの食育のためにも、調理場に来て「余剰食品」や「規格外野菜」を組み合わせて料理をする体験をして欲しいんです。
今ある材料でおいしい食事を作る方法を知ることができれば万が一経済的に苦しくなってしまった時に、自立ができるポイントになります。自炊ができない人は本当に困難から抜け出すことが難しいんです。

私は子どもにも大人にも、自炊ができるようになっていただきたい。そのための厨房を皆で作っていきたいと思っています。

小林:シェア・マインドのオフィスは厨房になっているんですか?

松本さん:オフィスとは違う場所で調理スペースのご協力を頂いており、そちらが主な厨房になります。加えてオフィスにも小さな厨房を準備しています。オフィスに厨房があると、子どもたちにも食育が行いやすいので。
食料支援の事業は本当に大変で、ここまでたどり着くのに大変苦労をしました。多くの方にご協力頂いて有難いと実感する一方、ボランティア活動であるが故の大きな挫折も多く経験しました。今は厨房の目途がついた時点でして、ホッとして、疲れがどっと出てしまっていますね。
体制を整え、工夫をこらしながら事業を形にしていきたいです。

小林:一般販売はECサイトからですか?

松本さん:嬉しいことにご要望も頂いておりますので、ECサイトを作る予定です。厨房施設でも販売できると思います。厨房での販売では、まず地域の方にお手に取って頂けたらと。企業様向けに箱売りもしています。

小林:いいですね。企業が社員の福利厚生のために買うというのも良いと思いますね。販売先が企業で、企業は『スタンバイ』を買うだけで、「社会貢献」となりそうですね。
他にアピールしたいことはありますか?

松本さん:社会貢献やSDGsという話題が盛んな時代になりました。『スタンバイ』は、それらの要素を盛り込んだ事業です。『スタンバイ』を購入したい企業様1箱40パック入り、2万円と送料でご用意します。
また、寄付金も受け付けていますので是非お願いいたします!

小林:本日は貴重なお話ありがとうございました。


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チャリティレトルト『スタンバイ』

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