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【取材記事】「超シルクなSDGs石鹸」で気候変動にアプローチ。絶滅寸前の国産シルクを、再び世界で輝かせるために起こしたアクションとは

株式会社NEXT NEW WORLDは、“古いシステムをアップデートし、製品や原料の研究開発を通じて、未来へ資産を紡ぐこと。”をミッションとし、化粧品・アパレルブランド「WITH OR WITHOUT」にて、「超シルクなSDGs石鹸」の販売を行っています。
この製品にはシルクの素晴らしさを体感できるよう、天然成分がふんだんに配合されており、国産シルクを世界に販売するためのクロスボーダー戦略の第一弾として発売されました。また、現在では越境ECにて世界11の国と地域にて販売をスタートしています。

今回、代表取締役の高嶋様に、事業を始めたきっかけや、進めていく上での課題・今後の展望について聞きました。

プロフィール
 

株式会社NEXT NEW WORLD代表取締役 CEO 
高嶋 耕太郎(たかしま こうたろう) 様
 
2010年に「Amazon Japan」入社。2014年にメンズアパレル部門の部長に就任。その翌年からは、販売コンサルティング部長を務める。2016年に同社を退社し、「TOKYOBASE」に入社。商品・EC部長を務めた後、約半年後に取締役・事業本部長に就任する。2021年5月に同社を退社し、6月に「NEXT NEW WORLD」を立ち上げる。


株式会社bajji 代表取締役CEO
 小林慎和(こばやし のりたか)

ビジネス・ブレークスルー大学 教授大阪大学大学院卒。野村総合研究所で9年間経営コンサルタントとして従事、その間に海外進出支援を数多く経験。2011年グリー株式会社に入社。同社にて2年間、海外展開やM&Aを担当。海外拠点の立ち上げに関わり、シンガポールへの赴任も経験。その後、シンガポールにて起業。以来国内外で複数の企業を創業しイグジットも2回経験。株式会社bajjiを2019年に創業し現在に至る。Google play ベストオブ2020大賞受賞。著書に『人類2.0アフターコロナの生き方』など。


かっこいい父親であるために。コロナ過での大きな決断


小林:まずは、創業の経緯について教えていただけますか?

高嶋さん:去年の五月末まで、一部上場企業にて6年間取締役として働いていたのですが、気候変動を止めるようなアクションを自分自身で起こしたいと思ったのが、会社を立ち上げた一番のきっかけです。また、前の企業も、もちろん素晴らしい活動をしてはいたのですが、自分の子供に「お父さんは、どんな仕事をしているの?」と聞かれた際に、しっかりと答えられず、父親としてかっこ悪いなと思ったのも理由の一つです。

小林:素敵な理由ですね。私自身も子供と同じような会話をしたことがあり、かっこいい父親でありたいなと思う気持ちはよくわかります。

高嶋さん:その考え方は、自己満足になってしまうのかもしれないのですが、正しい自己満足は正義であると思っているので、それを貫けるようにしたいなと考えています。

小林:ちなみに、前の会社はどのような業界だったのでしょうか?

高嶋さん:ファッション業界です。その前は、Amazonで、コンサルティングの部長などを勤め、eコマースやプロダクト開発に関連した仕事を行っていました。

小林:そうなのですね。大きな会社に勤めていたということなのですが、起業についてはいつ頃から考え始めたのでしょうか?

高嶋さん:そうですね、2020年の夏頃だったので、退任する一年ほど前からですね。辞めるタイミングについては、仕事の引き継ぎ等もあったため一年後が適当ということで、退任が受理された形ですね。

小林:コロナ過で、今後どうなるのだろうという時期に、退任と起業を決意されたのですね。

高嶋さん:そうですね。市場が自分の起業を後押ししてくれていたというのは、少なからずあると思います。


アフリカ・幼少期の経験を経て、気候変動問題に取り組む


小林:お子さんとの会話や、かっこいい父親になりたいという思いから起業に至ったということなのですが、SDGsについては、どの分野に最初に興味を持ちましたか?

高嶋さん:20代前半の時に、世界一周をしたことがあり、南アフリカ等の貧困の国をめぐった経験があり、それが現在の物を作る責任という考え方につながっていると思います。道端を歩いていたときに、現地のおじさんが家に連れて行ってくれて、家族全員でおもてなしをしてくれた経験や、栄養不足で苦しんでいる子供たちに、お金を恵んでくれとお願いされた経験もありました。これらの経験から、世界は愛で出来ているなと感じるようになりました。その思いは、今でも変わりません。

また、母親が、障がい者に対する理解や、原発反対などに興味があり、現在のSDGsにつながる活動を幼少期に経験させてもらいました。そのため、環境問題に関する意識は常に自分の中にありました。特に、気候変動に問題意識をもっています。自分の家族や、友人、友人の家族が、気候変動が原因で問題に直面することもあり得るだろうし、人口増加やロシアの問題も含め、食料問題等も深刻になるのではないかと思います。タンパク質不足や、物を作る責任にフォーカスを当て、会社作りを行うことで自分自身の手でこれらの問題を解決していきたいと考えています。

CO2や廃棄物…。ファッション業界の問題点を目の当たりにして


小林:少し踏み込んだ質問になってしまうのですが、アパレル産業は自動車産業の次に多くのCO2を排出していて、廃棄物等も大きな問題になっていますよね。これらの問題については、ファッション業界にいた頃から考えていましたか?

高嶋さん:そうですね、問題意識はもっていました。前の会社では、利益の面についてはお客様、従業員、株主さんへの貢献をしていきたいという目的意識はあったのですが、気候変動に対してのファッションの考え方や、よりSDGsを取り入れた活動ができたと思います。若い会社だったので、一番早く活動に取り組み、SDGsの先駆者となって日本のファッション業界を引率していかなければいけなかったとも思います。会社の意識を私自身が変えることができなかったのは残念ですが、逆に、自分自身がやって行かなければいけないという気持ちになりました。

しかし、前の会社は、他社よりも残在庫量が圧倒的に少なかったです。全て日本製で良いものをバリューのある価格で販売していたため、消費者は長期的に使用することができ、その面では、気候変動を止めることに少しだけ貢献できたかなとは考えています。原材料から開発を行い、CO2の排出量が少ないサプライチェーンの構築ができなかったという点については、自分自身の力不足だったと感じています。

起業から1年。後悔はしていないが大変な面も


小林:社名がNEXT NEW WORLDということで。

高嶋さん:キラキラネームですよね。新しい世界を作っていくという意味が、伝わりやすいと思います。””未来に誇れる選択を。NEXT NEW WORLD”の なので、啓蒙活動もそうですが、消費者の意識を変えていき、また、自分たちのプロジェクトを通して、買う意義を持つものを買ってもらうことで、地球が救われる可能性が大きくなるんじゃないかなと思います。

小林:会社を立ち上げてから約一年経ちますが、成果や課題はありましたか?

高嶋さん:本当に泣きそうになりますね。こんなに起業が大変なのかと。若いうちからいろいろなことを任せてもらい、いいポジションに就き、年収も良かった人生だったので、起業がこんなに大変だとは思いませんでした。でも、逆に、こんなに楽しいものなのか、いい経験をしているなとも思えるので、全く後悔はしていません。でも、やはり、自分の力不足はとても感じていて、いろんな方の協力があって自分自身が生きているのだなと再認識するきっかけとなりました。よりいっそう、ビジネスとしてのSDGsや気候変動へのアプローチを頑張って大きくしていかなければいけないなとは思っています。

小林:スタートアップなので、キャッシュフローマネージメントは課題としてあると思うのですが、それ以外の部分で困っていることはありますか?

高嶋さん:人材ですかね。この時代、リモートワークで働くのはいいと思うのですが、自分と同じ行動量、意識、方向性、熱量、業務の質などを持った人材を捕まえ切れていないというのは問題視しています。全て業務委託でPDCは回してはいるのですが、リモートワークの良いところと悪いところが出てきているとは感じています。


桑の葉から蚕まで自身で手がけるこだわり


小林:デザインがとても素敵だなと感じたのですが、デザイナーさんにお願いしているのですか?

高嶋さん:そうです!知り合いのデザイナーさんにお願いしています。世界的に有名なブランドも手掛けている方で、今後も彼と様々なプロダクトを開発していく予定です。SDGsの商品は、コストが高くなりがちなので、このコストを吸収するためにもラグジュアリー化が必須になってきます。デザインや、ブランディングの仕方がラグジュアリー化に関わってくるので、デザインのプロモーションには今後もしっかり取り組んで行くつもりです。僕たちは、群馬県桐生市の産地ラグジュアリー化をしていて、農地を持つことでシルクの原料開発を行い、サプライチェーンを一本化することによって、高い原料を食品、美容、アパレルで使用することができています。

小林:シルクは、ご自身の会社で生産されているのですか?

高嶋さん:そうです!先月も桑の葉2000本プロジェクトを行い、蚕にあげる桑の木を植え終えることができました。最近は、繭を作る予算について計画しています。自分たちで、原料を作ることは、会社の根幹の一つにもなっています。

小林:素晴らしいですね!桑の葉から蚕まで育てるのは凄いですね。ご経験はあったんですか?

高嶋さん:もちろんないです!桐生市の皆さんのご協力のもと、教科書を読みながら、仲間を集めてやっています。日本のシルク産業はもともと戦前は200万件あって世界一の輸出大国だったのですが、現在は絶滅寸前になっています。そこに対しても、サスティナブルという意味では問題視しています。シルクは、動物性タンパク質である糸、食べられることができる蚕、化粧品への使用など幅広く活用することができるので、今後の研究開発も面白そうだなとは思っていました。これらの背景があり、シルク石鹸を立ち上げました。

メイドインジャパンのシルクを再び世界へ

小林:先週取材をさせて頂いた企業さんも、シルクフードを作られていて、ベトナムのシルクを使用しているとおっしゃっていました。私も一度、ラオスの蚕農場に行ったことがあったのですが、現地の雇用につながったり、シルク繊維は高く売れるので、良い面が多いですよね。

高嶋さん:シンガポールに住んでいるのですが、日本で作ったシルク製品を東南アジアの富裕層に向けてアプローチしていくのがモデルになっています。現在は、シルクを日本からシンガポールに輸入させる活動や、マンションの上での育成をモデルとして動かしています。
将来的には、シルク産業を行うことでアフリカでの雇用を生んだり、タンパク質不足で亡くなる人を減らすためにも、アフリカ国内でのサプライチェーンを確立させていきたいです。

小林:御社の活動について、アピールしたい点はありますか?

高嶋さん:日本で作ったシルクが、海外でも通用するという点ですね。東南アジアでは、メイドインジャパンへの信頼があるので、日本製のシルク製品の富裕層への販売を、大きく広げていきたいです。

小林:今後は、どのようなことに取り組む予定ですか?

高嶋さん:そうですね、次は昆虫食に取り組みたいです。シンガポールでは昆虫食の輸入がまだ、認められていないのですが、自分たちで作ったシルクフードの輸入を行って行きたいです。

小林:本日は、どうもありがとうございました。

WITH OR WITHOUT Website: https://withorwithout.co/

mySDG掲載原稿 


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