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太宰治「猿ヶ島」/収入の複線化で社畜を脱す

一昔前、「FIRE」なんて言葉が流行っていましたね。(まだ流行ってる??)
「FIRE」とは、株などの資産運用で得た不労所得で自由に暮らす、みたいな感じ。
要は会社から経済的に自立して自分の人生を手に入れようというムーブメントです。

ほとんどの社会人が、一度は「会社行きたくない」と思ったことがあるのではないでしょうか。
その思いが強いほど、「FIRE」は魅力的に見えますよね。

そんな社畜から脱走したいという「欲望」と共通することろがあるなあと感じた短編小説のご紹介です。

太宰治の「猿ヶ島」です。

猿ヶ島のあらすじ

*ネタバレが出てきますので、ご了承を。
読んだことがない人は、青空文庫で読んでみてください。
短編小説なので、すぐ読めますよ。

あらすじはこんな感じ。


はるばる海を超えて、とある島に辿り着いた「私」。

その島で出会った「彼」と、島での生活ついて話すうちに自分が動物園の「見せ物」であることに気がつく。

「私」と「彼」は、日本からイギリスの動物園に連れてこられた日本猿だった。

最終的に二匹の日本猿は動物園を逃げ出した。


お話としてもかなり面白い。叙述トリック?的な、登場人物が猿だったと。

社畜=会社の家畜≒動物園の動物??

そしてこの話の中で印象的だった言葉がこちら。

「私」が「彼」に「逃げる(動物園を脱走する)」と明かした際の「彼」の返答です。

「よせ、よせ。降りてこいよ。ここはいいところだよ。日が当たるし、水があるし、水の音が聞こえるし、それにだいいち、めしの心配がいらない。」

猿ヶ島 太宰治

動物園の動物たちは檻の中に留まり、自身の自由な時間を捧げることで、ある程度の生活が保障されている。

これを「社畜」に置き換えると、「会社=檻」ともとることができます。

その状態を良しとするかは各人の価値観次第ですが、少なくとも「社畜=会社の家畜≒動物園の動物」と見ることもできます。

動物園は収入の柱の一つにしよう

この「彼」の言葉を聞いて「私」は次のように反応します。

この誘惑は真実に似ている。あるいは真実かも知れぬ。私は心のなかで大きくよろめくものを覚えたのである。けれども、けれども血は、山で育った私の馬鹿な血は、やはり執拗に叫ぶのだ。

ー否!

猿ヶ島 太宰治

最低限の生活が保障される環境は、「私」の心を大きく揺さぶります。
それでも、最終的に逃走した。山で育った馬鹿な血は、執拗に「否」と叫んだ。

会社員も「給料」という形で、生活を会社に握られていると言っても過言ではないでしょう。

「生活の保障」と引き換えに、時間や住む場所、付き合う人など様々な自由を差し出しているといえます。

この構図に耐えられない人たちが、冒頭でお話しした「FIRE」を目指すのでしょう。

しかし、「FIREを目指したい」と思わなかったとしても、単一の組織にライフラインを依存している状況というのは、あまり好ましくないですね。

やはり資産形成をはじめ、収入の複線化はリスク分散のためにも重要だと感じさせられます。

少なくとも動物園(会社)は収入源の一つ、という位置付けに持っていくのが良いように思います。

天才!志村どうぶつ園のパン君を目指しましょう。(パン君自身にテレギャラが還元されていたかは不明。)

主体的なキャリアを描くことが王道かも

労働環境が劣悪でないという条件付きですが、会社に所属していたとしても主体的に仕事ができれば「社畜」から抜け出せた、と言えると思います。

収入の複線化より、こっちの方が社畜を抜け出す王道の手法かもしれませんね。

でも、上司との関係やら業務内容やらで、なかなか難しいですよね。。。
わかります。


明日はボーナス支給日です。
去年より少ないと聞いたので、あまり期待していません。
もらえるだけいいか。。。

私もパン君を目指します。

(2022/8/8の記事をリライト)

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