研究)「潜在看護師の復職支援」5.潜在看護師の問題と対策 現状の問題点と国の対策

5.潜在看護師の問題と対策
​5-1.現状の問題点

本論文では「看護師資格を持っているが、結婚や出産を機に医療現場を離れ、今現在看護師として働いていない者」を潜在看護師と定義する。
厚生労働省の調査(21)によると、今現在、日本には潜在看護師が約71~75万人いると言われている。
(潜在層のため、この数値は推計である。)

先の調査によると、潜在看護師が復職しない理由として挙げられているものは、「急いで仕事に就く必要がない」、「本人の健康問題」、「家事・育児」、「家族の健康問題・介護」、「看護業務から離れていたことによる不安」である。


また、日本医師会が潜在看護師に行った調査(22)によると、潜在看護師は女性が96.3%とほとんどを占めており、
82.6%には配偶者がいるということが明らかになった。
また、子どもがいる人は77.5%で、そのうち12歳以下の子どもがいる人は73.5%であった。
一方、要介護者がいる人は9.9%であった。(表12)


この結果から、潜在看護師は幼い子どもを育てている人の割合が高く、
介護を理由に潜在看護師でいる人の割合は低いことが分かる。


また、同調査による再就業に関する意識を聞いた設問によると、再就業したいという人は27.1%、
条件しだいで再就業したいという人は43.0%、再就業したくないという人は14.6%と、
条件さえ合えば70.1%の人が再就業する意識を持っていることが明らかになっている。


再就業の際の希望(表13)に関しては、施設としては診療所を希望する人が87.5%と、
病院の70.8%を上回った(複数回答)。
また、診療所希望者のうち、病床については無床を希望する人が70.7%、
病院希望者の希望病床数は199床以下が54.3%であった。
希望の雇用形態は短時間勤務が65.5%であり、希望の勤務形態は日勤のみが85.7%と圧倒的だった。
これは、子育て中の看護師が多いことから、子育てと仕事の両立をする上で必要となる条件であると言える。

( 表12:潜在看護師の基本情報 ※医師会の調査を元に著者が作成)

(表13:潜在看護師が再就業する際の希望 ※医師会の調査を元に著者が作成)

(21)厚生労働省(2011)看護職員就業状況等実態調査.

(22)日本医師会(2008):潜在看護職員再就業支援 モデル事業報告書.

5-2.国による対策

厚生労働省は、「医療法等の一部を改正する法律案」(23)の中で、
今後は「離職中の者も含めた、個々の看護師免許保持者の状況の正確な把握とともに、
離職防止の徹底等の取り組みが不可欠」であるとしている。

その具体的な取り組みとして、「日本に55~75万人(推計のため、報告書によって数値が異なる。)も存在すると言われている
「潜在看護師の復職支援強化」と、「勤務形態の改善を通じた、定着・離職防止」を掲げている。  


また、2014年には、「看護師等人材確保法改正」(2014年2月12日の閣議にて提出)の動きがあり、
ナースセンター機能を強化することが決定し、早くとも、2015年以降に、
国を挙げて看護師資格を持つ人の把握を始める。(図10)

これは、今現在、潜在看護師の実態が全く把握できないことを受け、
より効果的に潜在看護師の復職を後押しするために、離職者把握の徹底を行うことを目的としている。

看護師等免許を持っている者は、一定の情報をナースセンターの登録データベースに届け出ておき、
離職の際はその情報も届け出るという仕組みを構築することで、ナースセンターは、
適切なタイミングで情報を提供したり、復職研修等必要な支援を実施したりすることが可能になる。

この取り組みにより、総合的な復職支援(情報提供、研修)を行い、潜在化を予防するという狙いがある。
この取り組みが動き出せば、離職中の看護師へのアプローチが容易になり、潜在化する看護師の減少が期待される。

(図10:ナースセンター機能強化イメージ)


本日はここまでです。次回は、日本看護協会の対策などについてお伝えします!お楽しみに!

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