2分で読める子育てエッセイ№660『いろんなものもグルングルン』

ある日、家族と遊びに行った観光地でソフトクリームを注文した。

すると、調理場でオマケのクッキーがボトリと落ちるハプニングをシッカリと見てしまった。

まだ受け取り前だったので、お店のお姉さん、慌てて新しいクッキーをぶっ刺しなおした。

もう嫌な予感は、準備万端。

思った通り、受け取った瞬間からソフトクリームが溶け始めた。

「今日は暑いし、風が強いし、仕方ないね～」

とダンナが言うと、家族全員、なるべく風に背を向けてベンチに座り、異常な速度で溶けるソフトクリームと戦いながら、食べる食べる食べる。

しばらくすると、比較的うまく食べきった小6の娘がこう言った。

「手がべたつくの。どこかで手を洗いたいな」

「ぼくも～」
という小3の息子は口の周りに、恒例の抹茶ソフトの髭もつけている。
今日は、男爵風のいい男。ついでに髭も流したい。

「困ったな。この辺に手が洗えるところはなさそう」

ところが、思わぬことが起こった。

知らない若い女性が、こう声をかけてくれた。

「よかったらどうぞ～」

え？
よく見ると子育ての必須アイテム「おしりふき」

女性の隣には、ベビーカーにのった赤ちゃん。
どうやら、赤ちゃんのためのものを貸してくれたらしい。

うそーん。
いいんですか～？

このおしりふきがどんなに嬉しかったことか。

トイレにはトイレットペーパー、
電話中にはメモ用紙、
そして、ベタベタな手にはおしりふきという名のウエットティッシュが、要る～。無いと焦る～。

きゅーん。
ワタクシ、今日イチ、心が温かくなった。

「ありがとうございま～す！」

親切がすごくうれしくて、ウキウキしていたら、ダンナがこう言った。

「あなたも、おしりふきを持ち歩いていた時に、周りの知らない人にどうぞ～ってあげていたよね？」

え？
覚えてない。

「その時のおしりふきが巡り巡って返ってきた、ってことなのかな」

ダンナの言葉に、ふと思い出した、あのことわざ。

「何とかは天下の回りもの」

もしかしたら、お金以外のいろんなものもグルングルン、回っているかもしれないね～。

その時さらにハッ！とした。

もしかしたら、自分勝手なお節介やお茶目だと思っている意地悪も返ってくる？　ありえる～。

だって、おしりふきもキッチリ返ってきたよ？

今後はそこそこにしておこうと思った。