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№117【2分で読める】日々の暮らしにクスっとエッセイ『冷凍庫の中にこれが・値札と値引きのテープをつけたまま』

それはある日の夕方のことだった。
「今日の夕飯何にしよう」
冷凍庫の引き出しを開けたら、気だるかった日常が一転した。
「うそーん! なんで冷凍庫の中にこれが入ってるの!」

それは使いかけて半分残った大根が、値札と値引きのテープをつけたまま、そしてあと7センチ残った人参までグルになって凍っていた。

一段上の野菜室と間違えて入れてしまったに違いない。
「ワタクシ? 犯人はワタクシなの?」
なんて言っている場合ではない。この凍った野菜を、ワタクシの意志とは全く関係なく、計算外のところで凍り付いているこの丸のままの大根を、家族にバレずどうやって処分するかが最大のミッション。捨てることなど許されない。

輪切りならともかく・・・程よい拍子切りだったらまだしも・・・。よりによってまるまま、そのまま。なんてこったい。

その時だった。
「お母さん、そろそろご飯作る時間? 僕手伝おうか?」
どきーん!
背後から小4の息子に声を掛けられた。
「今日の晩御飯なーに?」

さあ・・・なんだろうね。

お手伝いを丁重にお断りし、カッチカチに凍った大根をワタクシ、ただただ見つめた。

1時間後。
「いただきま~す。なんかいいにおい~。今日はおでんっぽい煮物?」
家族がなんの疑いもなく、大根をパクリ。それはそれはおいしそうに食していた。

完全スルーまであと1歩。だれにもバレてない・・・誰にも・・・。
ところがワタクシ、ふつうに食べておいしかったと言われるのに耐えられなくなり自白した。

「大根、うっかり凍らしたの。食感・・・どう?」
へぇ、と興味を持った家族。改めてもう一口。

「そう言われてみれば・・・切干し大根風だね。悪くない」
「ちょっぴり固い大根だとは思ったけど・・・美味しいよ?」

ひょーっ!
ワタクシのドキドキとモヤモヤ、さようなら~。
家族にはごくごくふつうのよくある、ある日の食卓だった。


なーんだ。
つまんないの。
ちぇっ。


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