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№124【2分で読める】日々の暮らしにクスっとエッセイ『サプライズを添えて』

ワタクシが昭和の小学校低学年のだった頃の話。
ある年の誕生日の数日前、母からどストレートにこう訊かれた。
「お誕生日になにか欲しいものはある?」
自分の欲しい[ちょっと高いもの]を買ってもらえるのは、お正月と誕生日だけ。ワタクシ、なににしようかとワクワクし始めた。

ワタクシの子どもの頃はテレビゲームなどなく、女の子の欲しがる定番のものといえばお人形さんやぬいぐるみ。でもワタクシ、お人形遊びが苦手中の苦手。
「こんにちは! 私○○ちゃん。一緒に遊ぼうよ」
そんなやり取りのなにがおもしろいのか、さっぱり分からない子だった。

「なににしよう・・・なにがいいかな」
迷いに迷っているワタクシをみて、母はさらにこう訊いた。
「だったら、お誕生日に食べたい物はなにかある? 餃子とハンバーグがスキだよね?」
そのときワタクシ、ピーンと閃いた。
「プリンがいい。こん~なおおきいプリンが食べた~い!」
そう言って自分お腹のあたりに腕で大きな大きなマルを作って見せた。
それをみた母、笑いながらこう言った。
「うーん。そんなには大きいのはムリだけど、できるだけ大きいのを作ってみるね」
まだケーキが贅沢だと思っていた時代。年に数回のケーキを食べるチャンスを逃したのはモッタイナイなかったかなと、ちょっぴり後悔した。


誕生日当日、ワタクシの同い年のいとことその家族もお祝いに来てくれた。
「おめでとう! これプレゼント。双子の女の子のお人形なんだ~。一緒に遊ぼうよ」
ひょーっ! よりによってワタクシが苦手なお人形? うわ~。
でも一生懸命選んだという、いとことワタクシの伯母の笑顔をみると、ワタクシ精いっぱい喜んだ(フリ)。さらにそのお人形の1人が、ワタクシと同じ名前だと知り、邪険にできなくなった。

「お誕生日おめでとう!」
大人はビール子供はジュースを片手に、集まってくれたみんなが歌を歌ってお祝してくれた。ワタクシの好物が並ぶ食卓、取りあいながら食べた母の手作り餃子。いつもより、10倍、いや100倍美味しかった。

その後、お待ちかねのプリンが登場。ドッチボール半分ぐらいの大きさのプリンの上にさらにもう一つプリン。なんと二段のプリンがぷるんぷるんと揺れながらテーブルに乗せられた。
「わ~! こんなの見たことない!」
大きいうえに、まさかの二段。母はおいしいだけでなく、サプライズまで添えてくれた。

それから数十年、今でも思い出の誕生日ケーキと言えば母の手作りの二段プリン。ホンのちょっぴり大きく、メッチャおいしかったと記憶が美化されているには違いないけれど、間違いなくワタクシの中では断トツ優勝。

あるとき「もう一回作って」と母にリクエストしたら
「人が作ってくれるから美味しいんだよ。お母さんもそのおいしいプリンを食べさせて」
と逆リクエストされた。

ええっ! なんだか思っていた展開と違う。
ちぇっ。



※コンテスト用に思い出を書いてみました。
いつもよりちょっぴり長い作品にお付き合いいただきありがとうございます(^▽^)/

サポートありがとうございます!  迷わずお菓子を大人買いしますよ?怒りません? ありがとうございま~~~す  ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ