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脳卒中後の下垂足に対する電気刺激装置と短下肢装具による歩行パフォーマンスの効果

こんにちは!
理学療法士をしているyukiです。
本日は、臨床においてよく観察される”脳卒中後の下垂足”について内容を深めていければと思います。

下垂足は脳卒中者の歩行において、重要な反応の1つと考えています。
というより、脳卒中者におけるICで立脚周期全ての反応を変えてしまうと個人的には考えています。つまり、下垂足で接地をすることで、麻痺側立脚期全体へ影響してくることになります!

そんな点から、今回の論文はこちら↓


論文の詳細です!
掲載雑誌:Neurorehabilitation and Neural Repair, 2013
Impact Factor:3.982
参考文献数:11本

では、内容に入っていきます。


はじめに


下垂足は、脳卒中、脊髄損傷、多発性硬化症などの中枢神経疾患によく見られる症状である。

従来の下垂足の治療には、足関節を底背屈0度に制限する短下肢装具が用いられてきた(Michael J et al. 2008)。

AFOにはいくつかの欠点があり、装具に対する拒絶に繋がる可能性がある(Ring H et al. 2009、Singh J et al. 2001、Taylor P et al. 1999)。

か推測に対する治療法として、総腓骨神経の機能的電気刺激(FES)を行い遊脚期において足関節の背屈を誘導する方法がある。

いくつかの電気刺激装置が開発されており、片麻痺患者のおける効果がいくつかの論文で発表されている(Burridge J et al. 1998、Robbins S et al. 2006、Kottink A et al. 2004)。

さらに、FES使用後は、装置をつけていない状態でも、
筋力増強
随意性の改善
関節可動域の改善
歩行速度の増加
などの生理的変化が生じる可能性がある。

これらの研究報告があるにも関わらず、電気刺激装置は処方されることが少ない。
その理由として、AFOと機能的電気刺激の比較研究がほとんど行われていないためである。

ランダム化比較試験にて、約6ヶ月後にFES群がAFO群に比べて
歩行速度が20%増加
したと報告(Kottink A et al. 2007)

この研究で使用されたFES装置は、外科的に埋め込まれた電気刺激装置であった。

これまでの研究では、電気刺激装置とAFOの使用によって得られる矯正・治療効果の大規模な比較研究は行われていない。

本研究の目的

電気刺激装置Walk Aideを使用した場合とAFOを使用した場合の結果
(歩行速度、エネルギー消費量、安全性、機能的可動性など)を
無作為化比較試験で比較をすること

著者らの予測では、
1. どちらの装置も、装着した方が装着していない状態よりも歩行能力が向上する(速度向上、エネルギー効率改善)
2. 歩行能力の経時的変化はAFOよりもWalkAideの方が大きい
3.装具の効果は装置間で有意差がない
4. AFOよりもWalkAideを好む対象者の方が多い

と仮説を立てた。


対象と方法

対象者:脳卒中後1年以内の片麻痺患者で下垂足を有する合計93名の方(平均年齢57±12.9歳、発症後6.4±3.6ヶ月)
対象者属性
1. 電気刺激装置やAFOの経験なし
2. 杖や歩行器などの補助具の有無に関わらず10m歩行が可能な方
3. 医学的に安定している方
4. 少なくとも6ヶ月間は薬の変更が予想されない方
5. 刺激を加えた状態での立脚時に足関節が安定する方
6. Functional Independence Measureスコアが4以上の方

研究デザイン:他施設共同での無作為化比較試験
本研究では、6週間の連続介入を行った後、6週後に機器を交換させる2つのフェーズから構成されていた。

対象者は、ランダムに3つのパターンに分けられた。
第1群. WalkAide(6週間)→ AFO(6週間)
第2群. AFO(6週間) → WalkAide(6週間)
第3群. AFOのみを使用(12週間)

対象者は介入前、3週後、6週後、9週後、12週後に試験を受けた。

介入方法
対象者はAFOが装着されるか、WalkAideが使用された。
装着後、対象者は自宅などで日常的に機械を使用した。
WalkAidについて
・内蔵された傾斜センサーにより電気刺激を加える装置であり、膝下の下腿に装着する。
・立脚後期に下腿が傾くことにより総腓骨神経への刺激が開始され、足関節の背屈を誘導し、遊脚期における足のクリアランスが容易となる。

主要評価項目
・8の字歩行速度
対象者は10mの8の字を最速かつ安全な速度で4分間歩行。この試験では直進性、旋回性、持久性が評価された

・Physiological Cost Index(PCI)
歩行時のエネルギー消費量の指標。
安静時心拍数と歩行時心拍数の差を平均歩行速度で割って算出した。

副次評価項目
・10m歩行速度


・Mobility Index
対象者は移動、起立、歩行、階段昇降など8つの動作を行う能力について評価された。
スコアは0(できない)から5(できる)の範囲で評価された。

・安全性評価(Perceived Safety Level)
10m歩行の際に、対象者が機器を装着した状態と装着していない状態を0(非常に安全)から10(全く安全ではない)までのスケールで評価

・機器使用感について
介入終了後に対象者に、どちらかの機器(AFOかWalkAide)を12週間使用できることを選択してもらった。
その選択理由を、7つの項目(安全性、利便性、信頼性、快適性、機能性、着脱のしやすさ、その他)から評価してもらった。

データ分析
時期により治療効果(それぞれの機器の)か複合的な効果(両方の機器の複合的な効果)かを算出した。

統計解析
・正規性の検定(Kolmogorov -Smirnov検定)
・Huynh-Feldt補正ANOVA
・多重比較に、Bonferroni補正の事後検定を実施。
・統計的な有意差は0.05とした。

結果

最終的な対象者は93名となった。
第1群(WalkAideからAFO):38名
第2群(AFOからWalkAide):31名
第3群(AFOのみ使用):24名

対象者属性、Mobility Index、歩行時の安定感は、介入前で全てのグループで有意差はなかった。

歩行能力

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