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上肢用ロボットと作業療法の併用により急性脳卒中者のADL改善

こんにちは!
理学療法士をしているyukiです。



では、論文はこちら↓


論文の詳細です。
掲載雑誌:Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseases, 2019
Impact Factor:1.787


はじめに

リハプログラムにおいて、脳卒中後の運動機能回復としてロボット機器での訓練が注目を集めている。
ロボットを用いた上肢リハビリテーションの効果を系統的レビューとメタ分析を実施しており、ロボット機器の可能性を評価している(Bertani R et al. 2017)

一般的に、上肢の運動機能障害は下肢よりも深刻になる傾向があるため(Carr JH et al. 2003)、上肢リハビリテーションにおけるロボット機器が数多く開発されている(Sivan M et al. 2014、Germanotta M et al. 2018、Cho KH et al. 2018)。

近年開発されたHAL単関節型(HAL-SJ)は、肘関節または膝関節に取り付けられ、関節運動をサポートする。

リハビリテーションプログラムで急性期脳卒中患者に
複数のタイプでHAL使用による改善効果を報告
(Fukuda H et al. 2016)


脳卒中患者の歩行機能のロボットリハについては多く研究されているが(Werner C et al. 2002、Mazzoleni S et al. 2017、Bang DH et al. 2016)、上肢への運動機能障害に及ぼす影響や日常生活動作にどのように影響するかは十分に研究がされていない。

上肢運動機能障害とADL機能の改善は、患者が日常生活を自立して生活するためには非常に重要である(Ju Y et al. 2018)。

慢性期脳卒中患者のロボットによるリハが、
従来のリハより肩と肘の関節機能を改善する
(Volpe BT et al. 2008)

上肢ロボットリハが、回復期の脳卒中患者の
上肢運動機能の回復に影響を及ぼした
(Miyasaka H et al. 2015)


しかし、これらの研究では、対照群を設けておらず、追加で受けたロボットリハによる単純なリハ時間の延長が結果に影響した可能性がある。

実際に、系統的レビューでも、脳卒中患者の上肢ロボットリハでは、近位上肢機能に改善を示すが、ADLは改善しなかったことが報告されている(Kwakkel G et al. 2008)。

本研究の目的

ランダム化されたA-B-A-B(B-A-B-A)デザインを使用して、
HAL-SJと従来リハ(作業療法)の組み合わせが
急性期脳卒中患者のADL機能を改善
するかを評価


対象と方法

対象者:30人の急性期脳卒中患者
対象者属性:
選択基準

1. 初回の脳卒中患者
2. Brunnstrom stage(Bus)でⅡ〜Ⅳ
3. 脳卒中発症後2週間以内の方

除外基準
1. 皮膚疾患のために表面電極を皮膚に取り付けることができない場合
2. 指示に従えなかった場合

研究デザイン:ランダム化A-B-A-B比較試験(ランダムにグループAまたはBに分けられた)
A期間の介入:5日間の併用療法(HAL-SJによるロボットリハと従来リハ)
B期間の介入:5日間の従来リハのみ

リハビリは各療法士(PT, OT, ST)を合計して3時間/日で行われ、本研究ではリハビリテーション全体の合計時間も同等に揃えた。


HAL-SJと従来リハについて
HAL-SJについて

・HAL-SJは肘関節に装着、患者は肘関節の屈曲および伸展運動を行った。
・生体電位信号を記録するため、上腕二頭筋と上腕三頭筋に電極をつけた。
・HAL-SJのパラメータは、アシスト量、アシストバランス(屈曲伸展のバランス)があり患者の症状に応じて療法士により設定された。
・A期間中、HAL-SJを使用して40分/日で介入を行い、肘関節の屈伸を最低200回以上は動かした。

従来リハについて(作業療法)
・受動的または能動的運動、課題指向型訓練、食事、着替え、トイレ、入浴などのADL訓練が含まれた。
・対象者のADL機能と各プログラムの時間配分は療法士により個別に設定された。

臨床評価
評価時期:発症後14、19、24、29、34日目に測定
評価項目:12段階片麻痺ステージ、Brs、Motricity Index(MI)、Modified Ashworth Scale(MAS)、感覚検査、ADL評価(FIM、BI)、motor activity log(MAL)にて動きの質(QOM)と使用量(AOU)が測定された。

統計解析
・SPSSバージョン22を使用
・マンホイットニー検定
・ウィルコクソン符号付き順位検定
・P< 0.05で統計学的有意と判断された。

結果

・基本的な特性(年齢、性別、脳卒中の種類、罹患側など)はグループ間で類似していた。

発症14日目での臨床的評価の違い

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