見出し画像

脳卒中者の日常生活動作に対する下肢ロボット訓練の効果

こんにちは!
理学療法士のyukiです。

本日の内容は、近年注目されている、ロボット訓練に関する内容です!

ロボット訓練は今後のリハビリテーションにおいても主流になってくると思います。

今回の内容では、下肢機能に対してロボットスーツHALを用いて、ADLレベルの変化を傾向スコアを用いて評価しています!


では、論文はこちら↓

この記事についてです!

掲載雑誌:Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseases, 2020
Impact Factor:1.787


はじめに

脳卒中の発症は不健康な日常生活が関連しており(Sarikaya H et al. 2015、Boehme AK et al. 2017)、脳卒中治療の重要性は高まっている。

近年、血管内治療などの新しい治療が開発され、大幅に機能回復の改善を認めていますが、脳卒中患者の多くは、血管内治療の実施に厳格な基準があるため機能障害を残すことも少なくない状態である(Aghaebrahim A et al. 2017、Rabinstein AA et al. 2019)。

脳卒中によって引き起こされる残存障害は、長期的な治療の最も一般的な理由となっている。

日常生活動作は、脳卒中後の患者の生活に強く影響をします。従って、脳卒中患者は、ADL能力を改善するために様々なリハビリテーション治療を受ける(Imura T et al. 2018)。

以前の臨床研究により、リハビリテーション治療が脳卒中後の運動機能またはADL能力を改善することを示唆している(Imura T et al. 2018, 2013、Nudo RJ et al. 2001、Kwakkel G et al. 1999、1997)

近年、歩行リハビリテーションを支援するロボット機器が開発されている(Werner C et al. 2002)。

Hybrid Assistive Limb(以下、HAL)は、生体電位信号を検出して患者の四肢を自発的に動かすことを支援する(Wall A et al. 2015、Iwamoto Y et al. 2019)。

HAL治療と作業療法を組み合わせた介入が
急性期脳卒中患者の日常生活における
ADL能力と片麻痺上肢の使用に影響を与えることを示唆した
(Iwamoto Y et al. 2019)


その他の研究でもHALを使用したお歩行訓練で脊髄損傷患者の歩行能力を改善できることを報告している(Yilmaz E et al. 2019、Takahashi K et al. 2018)。

より詳細な研究をすることが必要であるが、ランダム化比較試験の実施は困難であることがあり、代わりに傾向スコア分析法により大規模な観察的研究を行うことが出来る(Momosaki R et al. 2015)。

本研究の目的

傾向スコア分析を使用して、HALトレーニングが
脳卒中患者のADL能力にどのような影響を与えるか、を評価した。


対象と方法

対象者:
・2016年4月〜2017年3月に入院した従来リハを受けた患者(CRP群)
・2017年4月〜2019年6月に入院したHALリハを受けた患者(HRP群)
対象者属性:
選択基準

1. ブルンストロームで下肢Ⅱ〜Ⅳ
2. 歩行が自立していないもの

除外基準
1. 皮膚疾患のため表面電極をつけられなかったもの
2. 指示に従えないもの
3. 療法士による標準的なリハを提供できないもの

リハビリプログラム
通常リハ訓練

・PT、OT、STによる医療保険制度のもとで脳卒中患者に対して個別に行われたリハビリテーション(最大3時間/日)
・内容:座る、立つ、歩行、階段昇降、ADL訓練、言語訓練、嚥下訓練、認知訓練、家族指導
・患者の状態に応じて長下肢装具、短下肢装具を使用して歩行訓練が行われた。

HAL介入群
・両下肢タイプを使用(大腿直筋、大殿筋、外側広筋、大腿二頭筋から生体電位信号を記録)
・HALの設定:感度レベル、アシスト強度、バランス調整(屈筋、伸筋のバランス)が含まれた。各設定は療法士によって患者の動きや電位信号を確認しながら個別に調整された。
・介入内容:40分/日実施された。ADLにおける歩行能力改善のため、長下肢装具または短下肢装具による歩行も実施された。

評価
ブルンストロームステージ
修正ランキンスケール(mRS)
機能的自立度評価法(FIM)

統計解析
・ロジスティック回帰モデルを使用
・t検定
・マンホイットニー検定(ウィルコクソン符号順位検定)
・カイ2乗検定
・有意水準は0.05とした。


結果

71人が通常群、183人がHAL介入群となった。

両グループにおける基本的な特性

・年齢、性別、脳卒中の種類、入院時のmRSなどは、それぞれのグループで類似していた。
・HRP患者がCRP患者よりも有意に若い結果となった。
・入院時のmRS、性別、脳卒中の種類に有意差がなかった。
・傾向スコア分析は、108人の脳卒中患者に対して実行され、36ペアがマッチングされた。
・一致した対象者に、入院時の年齢、性別、脳卒中の種類、mRSに有意差はなかった。



グループ間の臨床評価の比較結果

ここから先は

3,466字
月に3~4本程度の記事投稿を目標に運営しています。 図解による記事、投稿記事が蓄積することで価値を提供出来ればと思います。

若手セラピスト向け(初学者)に脳卒中や脊髄損傷などの中枢神経領域に関する英文、書籍から臨床的私見を加えてまとめたマガジンです。 内容は個人…

noteをご覧頂きありがとうございます!皆様方にご支援頂きながらnoteを活用出来ていることを嬉しく思います。僕のnoteが少しでも皆様のお役に立てると幸いです。noteによる売り上げは、より有意義な情報発信に繋がるように活用させて頂きます😊