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脳卒中後の歩行能力に対する歩行補助具の効果

こんにちは!
理学療法士のyukiです!

今日は脳卒中者の歩行補助具に関する英文をまとめていきたいと思います!

先に投稿している記事で臨床的な観察点はまとめているため、こちらも合わせて確認頂けると理解が深まると思います!



では、早速本日紹介する論文です↓

この記事についてです。

雑誌:Archives of Physical Medicine and Rehabilitation, 2009
Impact Factor:3.098
参考文献リンク数:11件


この論文を読んで解決できる点としては、
・3つの種類の杖による歩行データの違い
・主観的な使用感や好みと歩行データとの関係性
・臨床において、杖の選択に対して根拠を持って対象者に提案できる


では、早速内容に入ります!

はじめに

 脳卒中者の歩行の特徴として、

歩行速度の著しい低下(1)
時間的・空間的パラメータの変化

がよく挙げられます。
例えば、脳卒中者においてケイデンスと歩幅は、ともに減少を示します(2)。また、しばしば非対称な歩行パターンを示し、時間的・空間的な変化がみられ、脳卒中者は身体活動量が少ないにも関わらず、神経障害がない方と比較して歩行時の酸素消費量が大幅に増加することがわかっています(3)。

 歩行補助具は基本的な障害を補うことで歩行能力を維持するために使用されます。脳卒中者の32~76%は少なくとも1つの補助具を使用していることが報告されています(4)

補助具の効果として、
安定性の向上(5,6)
対象者の安心感を高める
転倒の軽減を図れる

といった効果が示されています。

理学療法士は、これらの歩行補助具によって歩行の非対称性などの代償戦略が大きくならないか、あるいは対象者が正しい歩行パターンでの習得を妨げていないかなどが懸念される点です。

どの歩行補助具が最適化は文献的な結論は出ていない現状です!

これまで、脳卒中者の歩行補助具が使われたほとんどの研究は、バランスや麻痺側の体重免荷などが測定されています(5-9)。

平行棒内歩行だけでは機能的な歩行の獲得は難しいです。杖は歩行における時間的空間的な特性を損なうことなく、練習を行うことが出来ます。

これまで、質的な歩行パターンを求めるBobathアプローチでは、いかなる歩行補助具の使用も有害と考えられています(10)。四点杖の使用は一貫して推奨されておらず、体重支持が十分に行えない場合に限り提案されています。

理学療法士においては、疾患や障害だけでなく、対象者がどのような生活をしているかを考慮したアプローチを求められます。

しかし、対象者の歩行データと補助具に対する満足度や歩行補助具の選択について研究した内容はありません。

そこで、本研究の目的として

3種類の杖(画像)が、歩行能力に及ぼす影響を調べ各杖に対する対象者の満足度を評価した。

スクリーンショット 2021-05-15 11.30.12


対象と方法

対象者:脳卒中者25名(年齢:67.5±9.5歳、発症後41.84±26.08日)
除外基準:
1. 歩行補助具なしで5m以上の自立歩行が難しい方
2. 指示理解が困難な方
3.非麻痺側で杖を持てない方
4.整形外科的問題や神経学的な既往歴があり歩行パターンが非対称になる方

評価
1. NIHSS(神経学的障害評価)
2. FIM(ADL評価)
3. Fugl-Meyer Assessment(FMA)
4.PASS
5.6分間歩行テスト

研究手順
1) 各杖の高さの設定
ハンドグリップ付き杖と四点杖:肘を伸ばして尺骨突起の高さ
ノルディック杖:肘を100度に曲げた状態で持てる高さ

2) 時間的空間的歩行データの記録のため、7mの歩行システム(GaitRite)上を2回歩行。その後に6分間歩行を実施。
3) 歩行後に補助具に対する安全性、快適性、印象などを評価。

統計解析
・SPSSを使用
・正規性の検定後に下記の統計解析を実施。
線形回帰モデル:歩行速度、ケイデンス、歩幅の差、歩行距離、対象者の主観的評価
Spearman相関係数:対象者の臨床データ(姿勢制御、運動機能、機能的能力)と歩行補助具に対する主観的な評価


結果

表1に対象者データがまとめられています(一部編集して引用)。

スクリーンショット 2021-05-15 12.04.12

この結果から、対象者は軽度から中等度程度の運動機能障害を示していました。


歩行能力と歩行データについて


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