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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第71回「好事魔多し!大阪昼飲みの後日談」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

withコロナでようやく一人酒が再開した。が、まだまだ心置きなく飲めるようになるまでの道のりは遠い。ならば、体験談エッセイでも書くとするか。酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第71回「好事魔多し!大阪昼飲みの後日談」である。


はじめに

大阪での飲み歩きでは、いろいろな経験をしているなあ。朝から飲み歩いた挙句、ベロベロに酔っ払って醜態をさらしたこともあったし、角打ちで意気投合した人と愉快なひと時を過ごしたこともあった。

いつも楽しかったり、満足したりという飲み歩きばかりとは限らない。なかでも2009年3月の昼飲み・・・これは、大阪から戻ってきてからが大変だった。体調不良に陥り、病院に行く羽目になってしまったのだ。

いったい何が原因なのか。探ってみることにしよう。

寝屋川の温泉銭湯からの京橋「丸藤」へ

前日夜、初めて十三で飲み歩いた。本日は夕方帰途に着くまではフリーである。昼酒は外せないとして、それまでの間どうするか。確か昼酒スタートは京橋の予定だったなあ・・・ならば京阪電車で寝屋川まで行ってみよう。

目的は寝屋川にあるスーパー温泉銭湯「ねや寿の湯」(現在は湯快のゆ寝屋川店)だ。寝屋川を選んだ理由は、当時人気力士だった豪栄道のふるさとだから。なかなか泉質もよく気持ちいい温泉だった。

が、この日は3月としては冷え込んでおり、しかも銭湯から駅まで20分も歩いた。言わずと知れた「湯冷め」状態になっていたのだ。体が冷えてきたなら、早く温めないといけない。

それには酒しかない。

ということで京橋駅に戻り、初来訪となる立ち飲み「丸藤」の暖簾をくぐる。駅前にある店で、人気串カツ店「まつい」と隣同士。客入りはまついほどではないが。

まずはビールの小瓶をいただき、串カツ、レンコン、イワシを注文。後々考えると、湯冷めの体をさらにビールで冷やしてしまったわけだが・・・まあ、それはさておき、串カツは揚げ置きではなく、注文を聞いてから揚げてくれたのは嬉しかったな。

1軒目はパッと出るのが飲み歩きの流儀。次はいつもの京橋立ち飲みゾーンに繰り出そうかと思ったのだが、なんとなく気分が乗らない。どうやら今日は京橋ではなく、新世界か西成の気分らしいな。

萩ノ茶屋「花の山」~隣に立っていたヤバイ人

京橋から大阪環状線に乗って新今宮駅まで来た。ここから西成のあいりん・萩ノ茶屋ゾーンへと向かう。その前にコインロッカーにリュックを預けたいが、新今宮駅のロッカーは一杯。やむなく地下鉄の動物園前駅まで行って探す羽目になる。

この日は冷え込んでいる。そんな日に限って、歩いて移動する距離が増え、飲んでいる時間よりも移動の方が長かった。後々思うに、この疲労も体調を崩す原因になった。

リュックを預け、界隈をぶらついたものの、なぜか入る酒場が決まらない。萩ノ茶屋商店街に向かい、これまた初見の立ち飲み「花の山」にやっと潜り込む。おっちゃんたちで満席に近かったが、入り口近くが空いていたので陣取る。

店内にはテレビが3台置いてあり、それぞれ競馬、競輪、競艇と別々のギャンブル番組を流している。おっちゃんたちはそれを見ながら飲んでいた。さすがは萩ノ茶屋だ。ちなみに入り口が空いていたのはテレビが遠かったからだよ。

飲み物はチューハイ。あてにはガラスケース内のそら豆をいただく。隣には年配のおっちゃん。別に話しかけるわけでもなかったが、実はこの人こそ体調不良の最大の元凶だった。

飲みながら「ゴホ、ゴホ」と咳ばかりしているぞ。

コロナ禍の今の時期であれば、脱兎のごとく店を出たところであろう。ただ、その時は多少気にはなった程度。花の山は家族経営っぽい家庭的なまったりとした雰囲気で居心地がよかったから、ついつい焼きとりを追加してしまったくらいだ。

新世界「平野屋」~熱燗とやっこで人心地

このまま萩ノ茶屋商店街の酒場巡りといけばよかったが、どうにもこうにも本日は腰が定まらない。なんとなく酒場に入りそびれているうちに動物園前商店街を過ぎ、気が付いたら新世界のジャンジャン横丁にたどり着く。3軒目は立ち飲み「平野屋」へ。

ここでようやく日本酒の燗酒を注文。

さすがに歩いて体が冷えたことを実感したのだろうな。あてにはホタルイカ酢味噌和え。さらに目の前の大鍋に入っているやっこが美味そうだったので注文する。

店の大将は、客の動きをよく見ている。注文したやっこをすぐに出そうとはせず、私の酒の飲み方、ホタルイカの減り具合を確認してから、やっこを皿に盛る。カツオ節たっぷり、タレをかけ回したやっこ。これは美味いぞ。

平野屋も近隣の立ち飲み同様、圧倒的に一人客が多い。ふらりと店に入り、酒とあてを頼んで飲み食いし、サッと出ていく。この回転の早さこそが、立ち飲みのいいところ。そんじゃあ私もボチボチ出るとするか。

動物園前「上杉酒店」から帰途に着くが・・・

あっちこっちへウロウロと、どうにも腰が落ち着かない。再び萩ノ茶屋商店街まで歩き、「もん家」で4軒目のはしごをしてから、昼飲みラストにやって来たのは動物園前商店街にある角打ち「上杉酒店」。店構えが渋い。

これぞ正統派の酒屋の角打ちじゃないか。

女将さんに燗酒をお願いする。雨も降り出し、かなり寒さが身に染みてきたのだろう。あては小鉢に入ったジャコおろし。年配の一人客ばかりで、みんな黙々と飲んでいる。この雰囲気も渋い角打ちの醍醐味だ。

はしご酒でずいぶん飲んだはずだが、体の冷えと疲労で酔ったという感覚は薄い。そろそろ帰りの新幹線の時刻になる。切り上げるとしよう。

最後のトドメ。新幹線の自由席が満席だったので、乗降口近くに座り込むという暴挙。これじゃ体にいいわきゃないよ~。
で、翌日の体調不良に陥ったのでした’(涙)

〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2009年3月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。


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