「自信と実力」で吉祥寺の名店と同じ場所、同じ素材で勝負をかけた。
吉祥寺には言わずと知れた名店がある。
それは「いせや」という焼き鳥屋だ。
吉祥寺を少しでも知る者ならこの名を聞くだけで「はいはいあそこね」と頷く同時に、店外まで漂う煙の香りと、焼き鳥片手にビールが進む情景が浮かび上がることだろう。
もちろん、愛されている年月も伊達じゃ無い。
流動的に日々変化を遂げる中、いせやの歴史は80年。
・・・80年!?!(自分で打ちながら驚いた)
入れ替わりの激しい吉祥寺でこの記録は神業、名店と言われるのにも激しく頷ける実績だ…。
「うは~~~~やっぱりここは凄いな・・・!!!!!」
そして、今日はシルバーウィーク。
吉祥寺全体の賑わいはひとわまり、ふたまわりも高く、案の定、いせやには長蛇の列ができていた。
いせやは待っている時間も実に幸せだ。
香ばしいたれの香りがふわふわと鼻もとへ舞い込んでくる待ち時間を至福の時と言わずなんと言えよう。
意識していないとマスク内によだれを流しかねないのが恐ろしい…!!!!!!!!
だが、列は長ければ長いほど、途中脱落していく者も多くなる。
せっかく美味いもの(いせやの焼き鳥)を食べに来たのにも関わらず食べられないとわかった時は驚くほど人は絶望する。
なぜならば、
その物への期待値が高いほど、忽然と空いた欲求の穴を埋められる代替え(同レベルに美味いもの)は存在しないと感じるからだと私は思う。
しかし、いせやに来てあまりの人の多さで食べられない時は、どうか悲しまないでほしい!!!!
待ち望んだいせやの焼き鳥が食べられないと、肩を落としてしまわないでほしい!!!!!
今一度足を止め、後ろを振り返ろう。
その瞬間あなたはこの記事で書かれていたことを思い出すことだろう。
視線の先にあるその店も、いせやに負けない名店なのだ。
―
井の頭公園口にあるいせやから、その店は大股で7歩。
そう、後ろにある店が今日おすすめしたい私の秘蔵の地。
超が付くほどの名店の背後に店を構えるなんて、相当の覚悟と度胸が無い限りできやしない。
しかもどちらも鶏肉料理という同ジャンルでのガチンコ勝負。
おだやかな井の頭公園前でこんな火花を散らした戦いが繰り広げられているとは誰も想像つかない(笑)
大衆居酒屋のような雰囲気を醸し出すいせやと比べ、この店は落ち着いた和モダンテイスト。もくもくと煙を浴びることも無く、おしゃれな雰囲気がデートにもぴったりだ。
注文した生ビールを飲みながら、外を眺めていると、あれやこれやと人が舞い込んでくる。このうち何人の客がいせやから流れ着いたのかと思うと考え深い。
「おまたせしました、卵閉じ定食です。」
お盆にはずっしりした重さが嬉しい丼ぶり、お味噌汁、お新香、サラダに煮浸しの小鉢。
成人男性でも満足できる量がでてくるため、お腹は空かせていくことをおすすめする(笑)
「「「「「うわぁぁぁぁああああ・・・・!!!!」」」」
蓋を開けるとぷるんぷるんに揺れる卵が証明でキラリと光り、まるで黄金の海が広がった。
材料は卵と鶏肉といたってシンプル。
ゴクリと生唾を鳴らし、自分の手のひらの湿度がじんわり移る木のスプーンでぐわっとすくい上げ、
じぃっ…と獲物を狩るような眼差しでみつめたら、それをまるっと飲み込んだ。
!!
「う・・・・~~~っっっっっっまぁ…。」
うまい。これは、うまい。
いせやで焼き鳥を食べられなかったことなんて、このひとすくいで全てを忘れる力がある。
絶妙な火加減で口当たりは抜群、「食べる」というよりも、「飲む」に近い感覚で食が進む。
卵とじを飲み込んではお新香を含んでみたり、その後はお味噌汁を含んでみたりと、ベーシックなそれはどんなおかずともクリーンヒット。
モグッモグッ……
「ぁあ、良きっ……//////////」
店を出る客を横目で見ると、誰一人として不完全燃焼な顔を色をして出ていくものはいなかった。
いせやを前にして、お零れで客層を掴んでいても、実力がなければリピートは見込めない。
しかし、1984年のオープンから今もこうしてここに在り続けているその事実が、需要がある紛れもない証拠だ。
個人的にはどちらの方が勝ってるだとか、勝敗がつけれるものではないと思う。
お互い同じ立地、同じ素材だとしても、掲げるコンセプトは全く違う。ないものをそれぞれ埋め合わせ、引き立てる。
そうやって、お互いを刺激し合える関係性だからこそ、この店は一発やとして終わることなく今もプライドを守り続けられているのだろう。
名店と渡り合える店の実力にも目を向けて、これからは視野を広くしていきたい。
だって、今回みたいに驚くべき発見があるにちがいないでしょ?
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