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#622 読書記録「どうしてこうなっちゃったか」

2024.8.9.
夏休みに入ってから、読書が加速中!
…いや、年に数冊読むくらいの私的な加速であって、大した量ではない。


今日の読書記録は、以前一緒の学校で働いていた音楽のY先生(私の知り合いには「音楽のY先生」が2人いるけれど…Y先生かYY先生かと区別すると、Y先生の方)から教えてもらった1冊。今、これを読んでるんだーと。そんな話をしたのは恐らく1年以上前で、私の気になる本リストにずっと入っていたものである。

「どうしてこうなっちゃったか/藤倉大」である。

藤倉大さんプロフィール
大阪に生まれ、 15歳で渡英。エドウィン・ロックスバラ、ダリル・ランズウィック、ジョージ・ベンジャミンに師事し、作曲を学んだ。これまでポーランドのセロツ キ国際作曲コンクール(当時最年少で優勝)、ロイヤル・フィルハーモニック作曲賞、オーストリアの国際ウィーン作曲賞、ドイツのパウル・ヒンデ ミット賞、2009年の第57回尾高賞および第19回芥川作曲賞、2010年の中島健蔵音楽賞、エクソンモービル賞をはじめ、数々の著名な作曲賞 を受賞している。現在英国在住。

まあつまり、現代音楽作曲家で、現在47歳。本が出版された時点では44歳という藤倉大さんの、「早すぎる自伝」だそうで。

私はこの方を存じ上げなかったのだが、作曲家として様々な賞を受賞されたり、情熱大陸に取り上げられたり、映画「蜜蜂と遠雷」で音楽を担当したりと、現代音楽作曲家としては相当有名な方らしい。


この自伝が…本当に面白かった。

海外のコンクール名や、地名や、演奏家の名前など、カタカナがたくさん出てくるので、私の頭に入ってきにくい言葉のオンパレード。
にもかかわらず、早く次に、と読み進めてしまう。

なぜかと考えてみると…

◆超波乱万丈な人生

小さい頃から音楽に触れているが、ピアノで「楽譜通りに弾け!」などと言われるのが嫌だった藤倉さん。あるとき、「そうか、自分で弾きたいような曲を作ってしまえばいいんだ!なんで今まで気付かなかったんだろう!」と思いつき、それから曲をどんどん作り始めたそうだ。それが…8歳。わーお。

15歳でイギリスへ。高校、大学、大学院、それぞれの学校の話(なんか学校で謎に権力をもった話とか…)や、出会った恩師の話、スピード結婚、その頃作っていた音楽、コンクール、貧乏生活…などなど。

その才能と濃い個性で、多くの人が経験できないようななんじゃそりゃ話がたくさん書かれていた。
こんなに才能あふれる人なのに、途中までかなり「お金がない」という話が頻繁に出てくるのも驚きだ。作曲家で食べていくって、大変なんだなあ。

◆負けん気が強すぎる

文章は藤倉さんの一人称で書かれているが、心の声が書かれているので、その負けん気の強い性格が読んでいて面白い。

コンクールで評価されるかは別として、自分が作った曲はいいものであるというのは確信しているとか。何か気に喰わないことを言われたりされたりすると…大抵の場合、報復に出るとか。嫌味を書いた手紙を送りつけたりする話が出ていて、思わず笑ってしまった。

◆聞いてみたくなる

のだめしかり、音楽を題材にしたマンガや文章ってすごいなと。聞こえないのにどうやって表現するんだ…と思ってしまうのだが、聞こえない方法で表現しているからこそ、どんなものなのか聞きたくなってしまう。

それぞれの時代に作られたものがどんな曲なのか、気になってくる。まず、現代音楽ってどんなものなのか。現代アートとかコンテンポラリーダンスとかって、見ていて頭にはてなが浮かんでしまうものが多いので、きっと現代音楽もそんな部類なのではとまず想像しながら読み進めた。

時期によって作風が違うとか、興味のある楽器が違うとか、実験的なことをしてみるとか、いろんな工夫が描かれていて、それも聞いてみたくなる一因だった。

特に、コンサートホール内に楽器を散りばめて演奏するという曲!全部の楽器が舞台上にあるのが普通なのに、お客さんを取り囲むようにして楽器を配置する曲も出てきて、興味深かった。

作った曲。
情熱大陸の藤倉大さんの回。
小説「蜜蜂と遠雷」とその映画。

この本を読めば読むほど、聞きたいものや見たいものが出てくるのだった。

◆文章が面白い

この方、高校生以降ずっとイギリスにいるのに、文章の中にちょいちょい日本の芸能関係やテレビのネタが出てきて、笑ってしまった。これは、藤倉さんが書いたものそのままなのか、それとも編集さんの力か。

私が気付いた元ネタは、
・AKB48の前田敦子さんの名言「私のことは嫌いでも、AKBのことは嫌いにならないでください」
・テレビ番組名「YOUは何しに日本へ」
の2つだったが、他にも私が気付いていないそんな小ネタが潜んでいるかもしれない。



とまあ、面白い要素がいろいろあり(そして図書館に返却しなければならない締め切りもあり)、笑いながらどんどん読めてしまう本だった。

驚いたり、感心したり、笑ったり。
いろんな感情をくれて、自分の世界をちょっと広げてくれる、藤倉大さんの「どうしてこうなっちゃったか」、おすすめです!



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