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効率化しても満たされない理由と没頭することの大切さ

ろんなことが手軽に便利にできるようになって、「効率化=善」のような雰囲気があります。でも効率化は、私たちの人生の満足感には、必ずしも良い影響を与えるものではないように感じます。

ここでは、その理由について考えてみたいと思います。

まず、物事が効率化される前の状態について見てみましょう。

自分が興味があることや、好きなことに没頭すると達成感が得られることはもちろんですが、時間がかかって面倒だと思うことでも、時間をかけて(没頭して)やり切った場合、それは達成感につながります。(1つの物事を完結させたという達成感)

例えば、面倒なことが効率化された場合を考えます。あまり時間をかけてやりたくないことが効率化されることは、ありがたいことです。

問題は、空いた時間の使い方です。

人間はどうやら、ヒマや退屈というものに対する耐性があまりないようです。
特に、さまざまなコンテンツが溢れる現代において、何もせずに過ごす(ヒマや退屈を持て余す)ということは、あまり良くないことのように感じられます。(本当は、全くそんなことはないのですが)

ここで、やりたいことが明確にある人は、空き時間をそのことに没頭して使います。一方で、やりたいことが特にない人はヒマや退屈を持て余し、各種メディアから溢れ出してくるコンテンツをザッピングしながら、食指が動いたものに手を出します。ただそれらのことが、本当にやりたいことなのかというと微妙です。もし、メディアからそういう情報が与えられなければ、やろうとも思っていなかったことなのかもしれません。つまり、メディアに触発されてやっているだけ、ということもあり得ます。

いろいろ手を出してみるけれど、1つ1つが手軽な分、やり終えた時の達成感もそれほど感じられません。時間はまだ残っているので、他の手軽な物事で埋めていきます。

以前に比べると、限られた時間の中でできることは増えました。けれど、その一方で選択肢も桁違いに増えています。「選択肢が増える」ことは良いことのように思いますが、実はそれも私たちの人生の満足感には、必ずしも良い影響を与えるものではないと思います。

選択肢が多すぎると、そしてそれが見えすぎると、母数が多い分、いろいろやっているのに全然やれていない感じ(満たされない感じ)が募ります。そして、1つのことに没頭して時間を使うことが、まるで損であるかのように思えてきます。

こんな状況の中で達成感や満足感を得られる唯一のことは、「限られた時間の中でいかに多くのことを処理したか」ということになります。1つ1つのことにじっくり向き合うことで得られる達成感や満足感ではなく、「数を多くこなした」という達成感や満足感。

数をこなして喜ぶのは、サービス提供者。つまり、サービス提供者にとって嬉しい状況になっている(サービス提供者側がそうなるようにしている)とも言えます。

1つ1つのことにじっくり向き合った場合の達成感や満足感は、「誰が、何に、どのように、どれくらいの時間をかけて向き合ったか」によって、人それぞれに異なります。体験の質が人それぞれ異なるということです。

一方で、「数を多くこなす」ことで得られる達成感や満足感は、「みんながいろんな物事を広く浅く体験しているという状態に落ち着く」という意味で、体験の質が似てきます。

そのような状態になる、ということは一旦脇に置いておいたとしても、私たちは「数を多くこなす」ために、そしてまた、ある程度達成感や満足感を得るために、「いかにお手軽で満足できるものを見つけるか」というタイムパフォーマンス重視の考え方になってきます。

これまでの内容を踏まえて、1つの物事に没頭する場合と、複数の選択肢が与えられて手を出す場合とで、達成感や満足感にどのような違いが出るのか、見てみましょう。

ではいったい、達成感や満足感を得るには(日々を充実した気持ちで過ごすには)どうすれば良いのでしょうか?

大切なことは、空いた時間を、手軽に手に入るような物事で埋めてしまうのではなく、自分が本当に興味があること、やりたいと思っていることに没頭すること(十分な時間を費やすこと)です。他の選択肢に目を奪われて、時間をかけることを惜しまないということです。

「本当にやりたいことが見つからないから困ってるんじゃないか」という方もいると思います。確かに、「本当にやりたいこと」なんて、そうそう見つかるものではないのかもしれません。TVなどで美味しそうなものが出てきて、食べてみたい!と思ったから食べる…それだって、「本当にやりたいからやっている」とも言えます。ただ、そういったことを次々やり続けたとしても、あまり心は満たされないような気がします。

「1日のうちでできることは、本来そんなに多くない」
その意識を持って、膨大な選択肢にあれこれ目を奪われるのではなく、(きっかけはどうであれ)やりたいと思った1つのことに、時間をかけることにしてみる。その他のことに気を散らさない、わざわざ急がない。そういった意識が大切になってくるのではないかと思います。


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