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最期の瞬間、ありがとうが言えなくても

大切な人との最期の時間、ありがとうが言えなかった。
と後悔している人もいるかもしれません。
私の姉もありがとうと言えなかった。
それは、言えなかったのではなくありがとう以上に言いたかったことがあったからです。
正直なその時の気持ちを大切にしてください。


1,すれ違う気持ち

私は高校を卒業したら実家を離れ看護学校に通っていました。

ですので両親と一緒に過ごした時間は18年です。
という事は30年以上家族と離れて暮らしていることになります。

介護状態になる5年ぐらい前に母と暮らしたことがありましたが
生活リズムや習慣のズレがあり、お互いにギクシャクしてしまった事があります。
結局一緒に暮らすことがお互いのストレスになり同居を断念しました。


みなさんはどちらもお互いを思いやっているのに
なぜか気持ちがズレてしまう。
そんな経験ないですか?

親から自立し過ごした時間は一緒に暮らしていた時と比べ
人間関係や環境、耳にする情報などが違います。
そして子供も自分の家族をもち。。。少しずつ家族の形が変っていきます。
人の価値観というのは最初は親から学ぶ事が多いですが、学校に行き始め社会に出ると様々な知識や情報に触れ始めます。
色んな価値観に触れ、主体性が発揮され始めると自分の価値観も明確になっていきます。
家族なのに、親なのに理解できないと悩んでいらっしゃる方
理解する事を前提にするのではなく、まずはお互いの話を聞こうとする気持ち、理解しようと歩み寄る事が大事なのだと思います。

私も母を理解できないでいました。
母は自分が介護状態になったら子供が面倒をみてくれると思っていたのです。
それは昔なら当たり前でした。

母は介護保険の活用を嫌がりデイサービスなんて
行く前日まで抵抗していました。

施設入所も嫌々入所することになり、母としては不本意だったと思います。
もう少し家族の話し合いが必要だったなと感じています。

母の両親も父の両親も自宅で亡くなっています。
母はほぼそれに関わっています。
ですので親の介護は子の勤めと思っていたと思います。
ただ、子供の人生について邪魔するつもりはなく
自分の生活を優先してほしい気持ちは日々の言葉から察することが出来ました。

気持ちのズレは多少はあると思います。それは当たり前のこと。
価値観が違うからとお互いを否定するのではなく
お互いの気持ちを伝え合って、最良の方法を考えていく事をお勧めします。


2,旅立つ人への言葉

私の兄弟は5人ですが、母が介護状態にあるとき
姉は姑の介護をしていました。
中々母に会いに行く時間がとれず母も姉も寂しい思いをしていたと思います。

そして最初に触れたように、少しずつズレていく親と子の価値観、関係性も変化していました。
お互いに思いやっているのに小さな誤解を生んでしまい
心の距離が離れてしまう事もあります。
これは私の姉にも該当します。
他の兄弟は母の老いや死への過程を受け入れていたと思いますが姉は違っていました。

最期の時、兄弟全員で母を見守ります。ベットの側で座り込んで
頭や頬を撫でながら、手を握りながら
思い思いの言葉を母に伝えます。

母さんありがとう、沢山頑張ったね、お疲れ様・・・

姉だけは違いました。

早く元気になって・・・また・・・

この言葉を聞いて姉だけが時が止まっているようで
私はせつなくなりました。
母の現状を受け入れる事が出来なくて
姉だけが取り残されている感じがしました。

でも、直ぐに私の気持ちは変りました。
今の姉の精一杯の気持ち、姉と母の関係性を表しているからです。
姉の精一杯の母への愛情表現だったからです。

本当はもっと会いに来たかったんだよ。
もっと話をしたかったんだよ。
沢山連れて行きたいところもあったんだよ。
母さんごめんね。
私も母さんみたいに介護しているから・・・

母が旅立ち、通夜や葬儀の段取りをする中
姉だけは姑の元に帰っていきました。

母の側で一緒に寝たかっただろうなと思います。


3,ありがとうが言えなくても

母と本音で向き合ったこと、感謝を伝えてきたこと、家族で看取れたことは私の自信になり、何かをする時にいつも背中を押してくれています。

勘違いして欲しくないのは、必ずしも最期はありがとうではなくても
その人の口から出る言葉はその人の人生の続きを表す言葉だと思っています。

その言葉の意味を自分で紐解きながら生きていくのだと思います。人生の課題のようなものでしょうか。

だから感謝するだけが良いとは思いません。

自分の心から表される言葉が
偽りのない気持ちなら、それに向き合って行くことも
旅立つ人への思いやり、敬意の現れだと思います。


4,親のみとり意見交換会を開催します

家族のかたちはそれぞれ違います。
家族の課題もそれぞれあるでしょう。
今、介護で悩んでいる方
みとりについて葛藤している方
どんな風に親をみとってきたか
どんな事を悩んできたのか
そして向き合ってきたか
みんなと話して見ませんか?

一人はステージ4のがん告知を受けた母親の看取りを行った看護師
もう一人は植物状態で3年生きた叔父と突然余命1か月という告知を受け父親を看取った看護師
そして施設から自宅に引き取って看取りを行った私
一人で悩まないでお気軽にご参加ください。

親のみとり意見交換会
2022年11月3日(祝)
14:00~16:00
無料
ZOOMで行います。
近くなったら詳細をお知らせいたします。



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