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#2 理想の上司

今日(7/26)、バイトの面接に行った。人生二度目の面接。
人生最初のバイト面接は大学生になってすぐの四月に行ったが、コロナの影響で勤務予定先が休業になったことで、不採用になった。今回は別の店に面接をお願いした。

だが、今回も不採用になってしまった。理由は簡単だ。私が出した希望シフトの時間が短すぎたのである。週2日、1日5時間しか働けないのではシフト調整のしようがなく、「この条件で雇ってくれる店はないと思ったほうがいい」と指摘された。だがオンライン授業で課題も多く、まだ実際の大学生活のリズムを知らない私にはこの時間が限界だ。仕方なく、それ以上交渉することなく諦めた。


そして面接担当の社員さんは、「おせっかいではあるけど」と前置きした上で、私のだめなところを指摘してくれた。社員さん曰く、面接をお願いする問い合わせの電話の私の口調が、とても威圧的だったらしい。「こちらとしてはちょっと引いてしまった」とまで言われ、さすがに私もショックを受けた。心に緊張感と失望感が張り詰めて逃げ出したくなるところだったが、社員さんは話を続けた。「いろいろと切羽詰まってるんですか?」「課題多くて大変なんですか?」と私のことを気遣ってくれたあとで、


「ではせっかくなので、面接の練習をしましょうか」との提案。


シフト希望が適切ならば聞かれるはずだった質問が、次々に投げかけられる。体調の面で問題はないですか。自分の長所と短所は何ですか。趣味・特技は何ですか。(書店のお仕事なので)好きな音楽や本、映画はありますか。自分の一番好きなものについて2分語ってみてください。5年後、10年後は何をしていたいですか。…など。(私が一番答えに詰まったのは「500円玉が27枚でいくらですか」だった笑)


それらを通して、社員さんは「受け答えはちゃんとできていて良いと思うから、どこ行っても大丈夫ですよ。あとは(シフトの)時間だけですね。大学に慣れるまでは大変でしょうけど、落ち着いたら始めるのが良いと思います」と言ってくれた。
私が一番嬉しかったのは、将来の職業についての質問だった。今まで、自分の将来就きたい職業やそれを目指したきっかけに自信が持てず、具体的に人に話したことがなかった。正直不安しかなかったが、「エピソードがちゃんとあるから、立派な理由になっていると思う」と言われた。初めて自分の将来についての考えを第三者に話し、わかってもらえたことは、自信とまではいかなくとも一種の希望になった。


でも、というか、だからこそ、すごく悔しい気持ちになった。こんなに従業員(候補)のことを思いやり、若い人を教育しようとしてくれる人の元で働きたかった。「書店で働く上で大切なことは何ですか?」と私が伺うと、「我慢」と答えたあとで、「この時給でここまで仕事させるのかと思うようなこともある。だからこそ働いている学生には、時給以上の、身になる経験を積んでほしい。それを意識して一緒に働いて教えている」と社員さんは言った。その言葉に素直に感動した。やっぱりこの店で働きたかったと思った。すごくもったいないことをしたと思う。

3か月ほど1人暮らしが続き、大学にも行けずじまいの前学期。誰かに自分の悪いところを指摘されない日々に慣れてしまい、それに向き合うのが怖くなってしまった自分がいた。面接を通して、社会はそんなに甘くないんだよと教えられたような気がする。

でも何だか清々しい気分の自分もいる。きっと、社員さんがまっすぐ私に向き合ってくれて、私の良いところも悪いところも全部伝えてくれたからだ。良いよ良いよとだけ褒められても、人間は向上心を失う。でも「お前は本当にだめなやつだ」と言われ続けると、頑張る気力が吸い取られる。良いところも悪いところも人に伝えられる大人は素敵だと知った。これで私は明日もまためげずに頑張れる。たった数時間だったけれど、理想の上司に出会えたことは今日の収穫だ。良い日だった。


いつの日か彼のような大人に、彼のような上司になりたい。そのためにはまだまだ修行が必要なようだ。

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