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奈良の大仏様はどう教えられてきたのか?(9)壮大な無駄?②ー歴史授業の進化史・古代編

もくじ
(1)はじめにーならの大仏さま
(2)天皇はいばってる?ー金沢嘉市氏の授業
(3)民衆を苦しめた?ー山下國幸氏の授業
(4)壮大な無駄?ー向山洋一氏の授業
(5)大仏よりも薬・病院?ー米山和男氏の授業
(6)オールジャパン・プロジェクトー安達弘の授業
(7)日本人と天皇と王女クラリス
(8)三島由紀夫と歴史教育

(4)壮大な無駄?ー向山洋一氏の授業②1時間目の授業記録

 前回は向山氏の授業を受けた児童が大仏建立は壮大な無駄だったという評価をしている感想文を書いているのを見てきた。

 では、なぜ児童はこのような評価に至ったのか、向山氏の授業を見てみたい。氏の授業を参観した学生が書いた記録が残っているので、この記録の指示と発問及び子どもの反応を部分的に抜粋して授業の展開を追ってみよう。(前掲書170~179ページ)

一時間目。
指示『貴族という言葉をきいて、何か頭に思い浮かぶことを一言ずつ言って下さい』
 子どもからは「えらい人」「もと役人の人」「お金持ちでえらい人」などが出る。
説明『その当時のことを書いた物語を配ります。二枚配ります』
ここで配布された物語は山下國幸氏の授業で使用されたものと同じである。このプリントを着席のまま句点で交代しながら順番に交代で音読していく。
指示『この文章を読んで、疑問に思ったこと、なるほどなと思ったことをノートに箇条書きに書きなさい』
子どもの意見を発表させる。
「聖武天皇は政治と民衆がうまくいかなくて大仏をつくった。武士は大仏をつくることに反対したかどうかが不思議です」(この後、先生はこの時代には武士はいないことを伝えた)  
「何百人もの人が死んだ」
「大仏をつくったあと、悪病は少なくなったのか疑問に思いました」
「資料に「大仏づくりのとき、何百人もの死人が出た」と書いてあったけれど、その死んだ人の妻や子どもに、お金を(国が又は聖武天皇は)はらったのか、それとも、ほおっておいたのか、疑問に思いました」
「貴族の人も、大仏づくりに加わったのか」                    「位の高い人は、何もしなかったのか。(位の)低い人ばかりが、命令されて仕事をしていたのか。(位の)高い人は、設計をしたのではないか」
「田畑で働く人は、一日まるごと大仏づくりをしたのか。それとも、半日だけしたのか」
「死んだ人の子どもがかわいそう。身元がわかるように、きちっとしたのか」
「(この資料には)いくつもの人の名前がでてくるけど、文章の中味とどんな関係があるのかわからない」
 この後、地図で奈良の場所と何年前の出来事かを確認し、さらに大仏殿の写真を黒板に貼る。
指示『机を班にしなさい。大仏殿を見た感想を書きなさい。感想は瞬間に思ったことです。何でもいいのです』
先生は班に大仏と大仏殿の写真を配布した。先生は『六個を超えたら見せに来なさい』と言って持ってきた十人程度の子どものノートを事前に見た。
指示『鉛筆を置きなさい。立っている人はすわりなさい。大仏、大仏殿を見た感想を言って下さい。今日まだ発表していない人』
「大仏殿は大きい」
「大仏殿の右におじぞうさんみたいのがある」
「大仏殿の扉が大きい」
「大仏殿は屋根が二つあるのに一階建て」
「ふつうの家のようだ」
「同じような色がある。当時は色が少なかったと思う」
「中に大仏様がどうやって入ったのか」
「おやしきみたい。殿様がいるみたい」
「大きい」
「大仏さまの右のほうにおじいちゃんがいる」
「でかい」
説明『それ以外はありませんか。みんなの意見の中に、火事にあわなかったのか、というのがありました。実はありました。源氏と平家の戦いの時、燃えました。もう一回、戦国時代の時、一回燃えました。二回燃えてしまっています。みんなの意見の中に、バカでかいというのがありました。みんなが住んでいるこの三階と比べてどうでしょうか。どちらが大きいでしょうか』

 お気づきだと思うが山下氏の授業の修正追試なので一時間目の展開はかなり似ている。この展開を見る限りは先の感想文を書いた子の壮大な無駄という評価に結びつく学習活動はあの山下実践で使用された物語以外には見当たらない。しかし、ここはこのままにして二時間目を見てみよう。

 だが残念ながら二時間目は記録がないので、授業者である向山氏の示している二つのポイントをもとに授業の概要を見てみることにする。なお、二時間目は山下実践の追試ではない。向山氏本人の考えたオリジナルの授業である。

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