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「です・ます調」一人称小説への初挑戦(初めての文体は短編やSSで試しながら)

初めて使う文体で、いきなり長編小説を書くのは危険です。

その文体が、自分にとって書きづらい「苦手な文体」だった場合、筆が止まって、それ以上書けなくなるリスクがあるからです。

なので自分の場合、新しい文体にチャレンジする際には、短編SS、長編の中の「1つの場面だけ切り取ったもの」などで「試し書き」のようなことをします。

です・ます調」の一人称に初チャレンジした時もそうでした。

一般的な「小説」ではあまり見ない気がする「です・ます調」一人称ですが(←三人称なら児童文学などでよく見ますが…)、不思議と小説投稿サイトではよく見かけます。

紙の書籍に慣れ親しんだ自分には、正直、初めは「違和感」があったのですが…

投稿サイトで見慣れていくうちに、逆に興味が湧いてきました。

「自分がこのスタイルで小説を書いてみたら、どんな物語が出来上がるんだろう?」と。

このスタイルに挑むにあたって、ひとつ不安だったのは「『です・ます調』で激しい感情を表現できるだろうか?」ということでした。

「です・ます」という語尾からも分かる通り、「です・ます調」は言葉遣いが「丁寧」です。

「だ・である調」に比べ、物腰が柔らかく、穏やかなイメージのあるスタイルなのです。

そんな「です・ます調」で、強い感情を表すことができるのだろうか――たとえ激情を描こうとしても、言葉遣いのイメージによって自然と「おとなしく」なってしまい、心を激しく揺さぶるような「激しさ」や「エモさ」が削がれてしまうのではないか――そんな心配がありました。

特に、熱い恋情や、それに伴う“そこはかとないエロス”を、「です・ます調」の柔らかさで表現しきれるのだろうか、と。

ですか、書いてみないことには何も始まりません。

こうして初めて書いた「です・ます調」一人称が、「英雄群像ファンタジカ」シリーズ第2作(Type-A)「元魔王な兄と勇者な妹」の中の1話「元賢者な母」でした。

(↑直接描写や詳細描写は無いものの、初夜要素ありのためR15にしてあります。15歳未満の方はご注意を。)

全5話+プロローグ1話のオムニバス小説のうち、プロローグは「(だ・である調)三人称」、1つだけ「です・ます調(一人称)」で、他4つは「だ・である調(一人称)」になっています。

書くにあたって1つ工夫したのが「表面上は『です・ます調』で物腰柔らかだが、内面はしたたかで打算的な女性」の一人称にしたことです。

ラクガキブログの方でも「見た目が聖女な女賢者」としてラフスケッチを載せていますが…

「うわべも中身も淑やかでおとなしい」のではなく、うわべと中身でわざと「ギャップ」を作ったのです。

外見と内面が一致してしまうのでは、「です・ます調」の本来のイメージ通り、「物腰柔らかで淑やかな主人公」を描けば良いだけのこと――あまり「意外性」や「おもしろみ」がありません。

それよりも「です・ます調」にそぐわない内面の「ギャップ」を生み出すことで、「です・ます調の『可能性』」をより広げられるのではないか――そう考えてのことでした。

そうして実際に書いてみて…筆が止まるどころか、楽し過ぎて書く手が止まりませんでした。

楽しんで書けた一番の理由は、「表面上は淑やかで清楚」でありながら「内面はしたたかな策略家」であり、その実、根っこの部分は「初恋の相手を一途に想う、ただの恋する女性」という「裏の裏の裏」まで設定したせいかと思われます。

「初挑戦」の「試験的作品」でも、複雑で凝ったものにしてしまうのは、自分の悪いクセなのですが…

「こだわり」があると、「挑戦的な試み」でも気負わず楽しめますので、個人的にはオススメです。



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