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倍速試聴の「タイパ重視世代」に読んでもらうための小説スタイルは、小説レベル向上にも役立つ。

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時間の無い現代人は、とにかく「大事なポイントだけ」を取り、余分な時間をカットしようとする傾向にあります。

さらに、現代人には「長文」を忌避する人も増えています。

そんな「現代ならでは」の事情が、読書離れ活字離れ)にさらに拍車をかけているということは、ないでしょうか?

タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する現代人に小説の「読者」になってもらうためには、どうしたら良いのでしょう?

小説の「スタイル」から見つめ直してみる必要はないのでしょうか?

これまでにも自分は「読まれにくいジャンルは、まずSS短編で書いてみる」など、様々な工夫をしてきましたが…↓

長編ファンタジー小説でも、新しいスタイルの「実験」をしているものがあります。

とにかく無駄なくサクサク展開を進めてみる。

タイパ重視の人間は「要約」を好みます。

たっぷり間を取ったり、時間をかけて雰囲気を演出するよりも、「ストーリーの要点だけがササッと分かる」ことを求めます。

なので、とりあえず「単純」に考えてみました

だったら、とにかくストーリーの「無駄」を省き、サクサク展開を進めてみたらどうだろう…と。

Amaz〇nのレビューでも「なかなかストーリーが進まない」という批判コメントはよく見かけます。

ならば、とにかくスピーディーに話が進んで、読書時間が短くて済むストーリーをギュッと凝縮した小説」を書いてみたらどうだろう…と。

そんな「とにかくスピーディー展開、サクサク話が進む」を目標に書き始めた小説が、現在アルファポリスさんで連載している『囚われの姫は嫌なので、ちょっと暴走させてもらいます!~自作RPG転生~』でした。

(タイトルが長いので、以下『姫暴走(略)』と略させていただきます。)

■コメディは無駄を「はしょる」のに向いている

個人的な見解ですが「無駄をとことん省いたサクサク展開の小説」には、シリアスよりもコメディが向いている気がします。

シリアス小説にはある程度「雰囲気」や「重厚さ」が求められます。

その「雰囲気」や「重厚さ」を出すために、ある程度の「描写」は欠かせないのです。

一方「コメディ」は、描写を事細かにするよりも、ストーリーや文章の「テンポ」の方が重要です。

むしろ、下手に描写に文字数を割いて「ストーリーが間延び」してしまうと、勢いが削がれて「笑えるものも笑えなくなる」恐れがあります。

さらに言えばコメディは「本来なら長々と描写すべきところ」をわざと「はしょる」ことで笑いに繋げることができます。

そういうコメディのテクニックとして、上手く「はしょり」を取り入れていけば、ごく自然に文章ボリュームを削ることができるのです。

■削れそうな描写や説明は、とにかく削ってみる

『姫暴走(略)』では、とにかく文章ボリュームを抑えることを目標にしています。

特に小説初心者が嫌いがちな「地の文」を削るため、セリフで説明がつくところはセリフだけで終わらせてしまっています。

描写はとにかく「簡潔」に、「必要最低限」を目指していますが…

ここで難しいのが「削るべき部分は削っても、小説の『おもしろさ』は削らないようにする」ことです。

あまりにも何もかも削り過ぎては、「小説」ではなく、ただの「あらすじ」…あるいは「ダイジェスト」になってしまいます。

小説を「小説」として成立させるためには、「あらすじ」や「ダイジェスト」には無い「何か」が必要なのです。

そこで自分は「削りに削って凝縮させた『必要最低限』の文章に『おもしろみ』を味付けする」という方法を試しています。

これも「コメディ」だからこそ使える方法なのですが…

「笑い」というものは、単に話の「筋」がおもしろいだけでなく、その「語り方」「言い回し」も重要になってきます。

漫才や落語などを見ていただければ分かると思いますが…

独特の「間」や「テンポ」が、おもしろさをより引き立てる…そんなことって、ありますよね?

あるいは「わざとズレた言い回し」「あえて間違った言葉の使い方」が笑いを生むことってありますよね?

あの感じを、何とか小説で表現できないかと試行錯誤しているのです。

こういった「あえてくだけた文章」を使うと、文章力が低いと誤解されて評価が下がるリスクもあるわけですが…

(他人様の作品のレビューなど読んでいると時々感じるのですが…「お笑い」ならではの「あえて」のズレや間違いを、「本当に言葉の使い方を間違っている」と誤解する読者の方って、たぶん実際に存在するのではないでしょうか。あるいは「お笑い」であっても「乱れた言葉遣いは許せない」という方もいらっしゃるかも分かりません。)

元々こういう「新しいモノに挑戦するのが好き過ぎる」性格だと、「最初から高い評価が得られる」ことの方が少ないので、そこは今さらべつに良いかな…と。

■ストーリーの「骨格」がより重要になってくる→小説レベル向上に打って付け

余分な描写をカットし、必要最低限の文章に絞る……こう書くと「じゃあ、普通の小説より簡単じゃないか」と思われる方もいらっしゃるかも知れません。

しかし、これは決して「簡単」なことではないのです。

なぜなら、描写に頼れない分、よりストーリーの「質」が浮き彫りになってしまうからです。

ストーリーが「骨組み」なら、描写は「肉」や「外皮」です。

目に映る部分が美しければ、たとえ中の「骨」の形が歪だったとしても気づかず誤魔化されてしまう人間は多いのではないでしょうか?

しかし、肉や皮をとことん削いで「骨組み」だけを見せるとなれば、誤魔化しはききません

より、ストーリー展開に気を配らねばならないのです。

自分も、このスタイルの小説を描き始めて、初めて気づいたことなのですが…

ひょっとすると「描写をとことん削ぎ落したサクサク展開の物語」は「ストーリー」や「展開」の質を向上させる「習作」に適しているのかも知れません。

ちなみに自分がその「ストーリーの骨格」で大事にしているのは、起承転結伏線回収です。

やはり、ストーリーにメリハリがあり、クライマックスでどどーんと盛り上がるのは大事だと思いますし…

物語の中に散りばめておいた「伏線」がきっちり「回収」されて活きてくると、物語の「完成度」が上がる気がするのです。

「サクサク展開の物語」は、そういった「起承転結」や「伏線回収」の「習作」としては、打って付けなのかも知れません。

■はしょり過ぎても、さすがに良くない。

『姫暴走(略)』第1部は、まだ勝手が分からなかったこともあり「とにかく削る」「とにかくはしょる」で書いていました。

この物語は「テンプレなRPG世界をちょっとデタラメにした世界」が舞台ですので「これはテンプレだから説明が要らないだろう」という部分は、とことん説明を省きました。

…結果、12ページ目にしてヒロインが魔王を倒し、14ページで第1部が終わりました。

(だいたい1ページにつき2000字台ペース。)

第1部を書き終わった後「さすがにこれは、物語がコンパクトになり過ぎでは…?」と反省しまして…

第2部は24ページ、第3部は32ページと、徐々にボリュームを増やしてみています。

(現在執筆中の第5部は、逆にボリュームを増やし過ぎたかと、少し反省中。「ちょうど良い」のバランスが、なかなかに難しいです…。)

第1部を書き終わった後の「一人反省会」で思ったのが「これでは、読者が作品の『世界観』に馴染む・楽しむだけの尺が足りないのでは?」ということでした。

ストーリーはとりあえず「起承転結」していますし、コメディ要素も入れてはいますが…

世界観の魅力を伝えるだけの尺は取れていないのではないか…と。

上の方で「削り過ぎても、ただの『あらすじ』『ダイジェスト』になるだけ」と書きましたが…

やはり、あまりにサクサク話を展開し過ぎても「せっかち」な感じが出てしまって、物語を楽しむだけの「心のゆとり」が読者に生まれないのではないかと…。

おそらく、タイパ重視世代と言っても「どれくらいの尺がちょうど良いのか」は人それぞれだと思います。

なので、実際にどのくらいのテンポ・ボリュームで小説を書いたら良いのかは、常に迷い、悩んでいるのですが…

「ストレス無くサクサク読めて、しかもちゃんと魅力的」な小説が書けるよう、これからも試行錯誤していくつもりです。

(…とは言え、小説投稿サイトにはマッチング機能が無いため、タイパ重視小説を書いたからと言って、タイパ重視の読者に見つけてもらえるわけではないという、かなり厄介な問題点はあるのですが…😅)





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