妄想お悩み相談コーナー!【進路編】

登場人物

睦月文香:返答役。これ書いてる人間の主人格。かなり美化されてる。

田渕聡子:男性に厳しく数学が大嫌いだけど、総合的にはとても優秀な女子高生。特に英語が得意。


聡子「やぁ文香ちゃん」
文香「どうも」
聡子「相談、聞いてもらえるんだよね?」
文香「えぇ。どんな重い話でもどんとこい、ですよ」
聡子「うーん。じゃあもうはっきり本題から入っちゃうけど、私、将来のことで悩んでるんだよね」
文香「将来のこと」
聡子「うん。なんか、今まで漠然と『英語が得意だから、それが活かせる職に就こう』って考えてたんだけど、本当にそんな適当でいいのかなって考え始めたんだ」
文香「なるほど」
聡子「うん……」
文香「進路についての問題というよりも、自分自身の生きる上での態度に迷ってるわけですね?」
聡子「んー……両方かなぁ。そりゃあ、外交官とか翻訳家とか、そういうのになるならそれこそ留学とか考えるべきだし、というか、もしそういう高級な仕事を本当に目指すなら、幅広い教養を得たほうがいいわけだし、なんていうか、それだと適当に自分の進む道を決めている自分と矛盾しているんじゃないかとか、そんな風にごちゃごちゃ考えて、わけわかんなくなってる」
文香「あーなるほど。それは結構きついですね。でも逆に、今までなんでそういうことを考えてこなかったんですか?」
聡子「え? それはなんていうか、私が馬鹿だったからじゃない? なんか、ほんと最近まで、全然自分が将来どうなるべきだとか考えず、親とかが『聡子は英語喋るのすごい上手だし、純日本人でそういう人って滅多にいないから、どこに行っても重宝されるよ』とかっていうから、それを無邪気に信じ込んでたんじゃない? 知らんけど」
文香「何きっかけで、それが信じられなくなったんですか?」
聡子「んー。やっぱり年齢じゃないかな。実際に、もうそろそろ大学の進路決めなくちゃいけないし、本当に英語関係の職業に就くなら、それに役立つ経験を若いうちに積んどかなきゃいけない。でも実際に、今決めろと言われても、うまく決められない自分がいることに気づいたというか」
文香「でもそういう悩みを、ほとんど感じずに『そういうもんだから』って適当に決めちゃう人がほとんどだと思うんですが、聡子さんはそういう人と違って立ち止まって悩んでるわけじゃないですか。それは、何が違うからそうなったんでしょうか?」
聡子「知らないよそんなの……うーん。でもそれは、周りの友達の影響はあるかも。みんな真剣に悩んでるし、そもそも私みたいに『こうしよう』みたいな目途が全く立ってなかった子もいたから、そういう子にあてられてるのかも。あてられてるっていう言い方はあんまりよくないな。悩むことって、悪い事じゃないし」
文香「なるほど。そこで、自分の考えをはっきりさせなくちゃなぁと思ったわけですね」
聡子「まぁ、大体そんな感じ」
文香「その道が嫌っていうわけではないんですね?」
聡子「うん。勉強は嫌いじゃないし、やっぱり英語話すのは楽しいし。留学先も大体絞ってるし、現実的に何か問題があるわけではないんだ。でも、本当にこれでいいのかなってすごく不安になってる。何か……何かもったいないことをしてるんじゃないかって」
文香「自分の可能性が云々って話ですか?」
聡子「いや私なんて別に大した才能なんてないから、そんな大げさな話じゃないよ? でもこのまま、人に流されたみたいに、予定通りの道を歩んで、自分で納得できるのかなってこと」
文香「ふぅむ。ところで今のところ聡子さんは、自分のこれまでの人生に納得できてるんですか?」
聡子「分かんない。なんか、自分が恵まれてるのは分かるんだけど、これが一番いいのかって言われると、そうではない気がする。なんかもっとうまくやれたような気もするし……そもそも自分があんまり幸せじゃないと思ってる。別に病んでるとかじゃないけど」
文香「話し聞いてる限り、私も聡子さんは病んでるとか、そういう感じではないと思います」
聡子「うん」
文香「ふむぅ。そうだ。私、思うんですよ」
聡子「うん」
文香「多分ですね『英語関係の仕事』っていう目標自体が、とてもぼんやりしていること自体が、ちょっと問題かもしれないなぁって思うんです。目標は具体的な方が、迷いなく進みやすいですし」
聡子「それはそうだと思う。でも一通りは調べたよ? 英会話教師から、入国審査官とかキャビアアテンダントとか、その辺まで。外資系の企業に入るのだって悪くないし、純粋に選択肢が多いのは悪い事じゃないと思う。というか、高校生の段階では全然情報が足りないし、もっといろんな人の話を聞いてから決めたほうがいいかなぁって思ってるんだ。でも、英語関係のスキルを伸ばすなら、やっぱり留学経験はあった方がいいし、それ関連の勉強も意識してやった方がいいと思ってる。でもそういう方針自体が、なんか変っていうか、違和感を感じるっていうか」
文香「ふぅむ。多分、その保留自体に問題があるのではないかって、私は思うんです。だって聡子さんって、高校生とは思えないくらい大人びてますし、長期的な視点を持っているわけじゃないですか? 客観的に見て、そう思います。自分の将来のことも真剣に考えてますし、自分の立場をよく理解してる。そんな人が『私はまだ子供だから、自分が将来就く職業について考えるのは保留しておく』って言っているのは、なんだかヘンな感じがします。『転職したいけど、何に転職したいかは分からない』って言っている人に近いものを感じます」
聡子「転職……いやでも私、働いたこととかないし、働くってどんな感じか全然想像できない。うちの学校バイト禁止だし、そもそもバイトと社員って働き方そもそも違うでしょ」
文香「まぁ勤務形態とか責任の大きさとかは違うと思いますが……まぁそれはおいといて、そもそも私の考えでは働くというのは、それほど大げさなものではないと思いますよ。毎日の業務を自分の力量の範囲でこなしていくことの繰り返しなわけですし」
聡子「まぁそれはそうか」
文香「それに、『自分はどのように働きたいか』というビジョンは、働く前からしっかり固めておいた方がいいのではないかと私は思います。だから、転職するときのように、職業のことを考えてみるのはどうでしょう」
聡子「んー……転職、かぁ。それは考えたことなかったな」
文香「やっぱり働き方って無数にありますし、このご時世ある程度自分で選べるものでもあります。でも『何になりたいか』って考えるのは、ちょっと聡子さんにしては子供っぽいなぁって。転職するときみたいに『自分は何になれるか』をベースにした方が考えやすいんじゃないかって。『どのように働きたいか』をベースにした方がいいというか」
聡子「まぁそれなら確かに、色んな職業を調べたうえで、比較できるよね。比較して、どれがいいかって考えてみることができる。確かにそれは有効かも」
文香「それに『こんな働き方は嫌だ』『こういう風に働けたら嬉しい』というような希望を明確にしておくと、楽だと思います」
聡子「引きこもりのくせにめっちゃ現実的に考えるんだね」
文香「まぁ、それが取り柄なので」
聡子「まぁでも、確かにそう考えたほうがスッキリするなぁ。実際に自分が働いてる姿を何種類か考えてみてどちらがいいか比べて見るのは、割といいかも」
文香「そう思います」
聡子「にしても、やっぱり文香ちゃんってめっちゃ賢いよね」
文香「えへへへへ。それほどでも」
聡子「笑い方がキモイ。いやでも、ありがとう。ちょっとスッキリした。確かに、具体的に自分がどのように働きたいか考えておくのはすごく意味があると思う。現実と違ったとしても、やっぱり何も考えずにやるよりかは、いろいろと考えてからの方がきっといいよね」
文香「そう思います。ひとつの悩みに囚われたときは、できるだけ具体的に考える。同時に、絶対的にではなく、相対的に考える。白か黒かではなくて、どちらの方がよさそうか、と考える。私はそういう風に考えて生きてます」
聡子「勉強になったよ。ありがとう。また何かあったら相談させてもらうね?」
文香「えぇ。いつでも!」

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