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感想 母性 湊 かなえ一冊の本を読んで、こんなに疲れたのは久しぶりだ。母娘の関係性の不可思議がここにはある。

母と娘という関係が、いかに複雑なのかをモチーフにした本作は、湊さんらしい作品だと言えます。
読後感は、かなり悪い部類であり、疲れました。くたくたです。
映画化されていて、本作は湊さんの代表作の一つとして高評価なのですが・・・。

この娘と母親の描き方が上手すぎて、逆に感情を揺さぶられてきつかった。

母親にべったりの女性がいます。彼女は結婚し娘を産みます。
母親が、夫が夜勤中、家に泊まっていき娘の世話も手伝ってくれます。
愛情たっぷりの母親で理想的です。

この母子の死別の原因が、娘に・・・。
火事になり、娘か母のどちらかを助けるという場面になり、母は娘を助けさせるため、彼女の目の前で自殺をするのです。

ここで生き残った母子の関係性が複雑になります。
夫の実家に居候することになった家族。

母親に愛されたいと熱望する娘。
娘に対して複雑な感情を抱いている母親。

この物語は、そんな二人の関係性が細かい描写と出来事によって描かれているのです。

娘の心情を表す言葉がここです。

わたしは母に喜んでもらいたかった。こちらを向いて欲しかった。わたしが何かをしてあげたことで母が喜び、ありがとう、と頭を撫でて欲しかった。手を握ってほしかった。



母親を言い表している言葉はこれになります。


「子どもを産んだ女が全員、母親になれるわけではありません。母性なんて、女ならだれにでも備わっているものじゃないし、備わっていなくても、子どもは産めるんです。子どもが生まれてからしばらくして、母性が芽生える人もいるはずです。逆に、母性を持ち合せているにもかかわらず、誰かの娘でいたい、庇護される立場でありたい、と強く願うことにより、無意識のうちに内なる母性を排除してしまう女性もいるんです」


ここからわかるのは、母が母になりきれていない。
まだ、自分の母の存在を求めている。
でも、娘はそんな母親の愛を熱望している。

愛して、私だけを見て、愛してよという娘の感情が紙面で暴れている、
そんな印象を持ちました。



2024 5 27
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