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感想 焔と雪京都探偵物語  伊吹 亜門 短編ミステリーなのですが、四話で新しい解釈を加えて自らの推理を卓袱台返ししているのが特徴。斬新です。ただ、ミステリーとしては今いち。


「真実が人を救うとは限らないじゃないか」

という露木のセリフが本書を象徴している。
真実が暴かれるたび、読み手はがっかりします。
読者には、あまり都合のよくない人物が犯人だったりするからです。

このミス15位、ミステリが読みたい10位作品ということと、Twitterなどで昨年少し話題になっていたので読みましたが、もっと高評価でも良かったように思えるほど面白かった。

良かった点は、時代設定と場所にあります。
舞台が大正時代の京都ということで、雰囲気が少し澱んでいて、そこがいい。

探偵のキャラもいい。
病弱な露木と屈強な鯉城のコンビです。
鯉城が探偵で元警官。露木は鯉城の子供の時からの友人。
調査は鯉城が。推理は露木という形を基本取っていて、昔の安楽椅子探偵みたいなスタイルなので、どうしてもテンポが良くない。それに謎解きのキレというのかミステリーとしては、さほど面白くなかったという印象を受けました。

僕が本書を評価するのは、第四話があったからです。

これまでの完結していた短編の推理を、ここで新しい推理を加えることで反転させます。
これは人によっては評価が違うと思います。完結している話しを、混ぜっ返して、違う結末に、推理に持っていくのだから気持ち悪いです。

たぶん、警察の取り調べも裁判も終わり世間的には結末が出ているのですが、そこで違ったこうだったとくるわけですし、露木のその推理は、単なる推理であり、現実には反映されないというのも怖い。

その根底にあるのは、露木と鯉城の関係性にある。そう、二人の関係性というのか、露木の一方通行なのですが恋愛の臭いが漂っていてBL風なのです。ようするに、露木は社会正義や仕事のために推理をしているのではなく、ただ単に鯉城の役に立ちたい。鯉城にとって必要な人間でいたいから推理をしているのです。だから、本当は事件のことなんか、どうだっていい。

このスタイルは、今までの探偵ものとは少し違う違和感があります。
そこを僕は楽しいと感じました。

2024 1 29
++++



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