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感想 存在のすべてを  塩田 武士 どこかで、こういう話し読んだことがある。誘拐の真相を知り少しグッとくる。

同時に二件の誘拐事件が発生。
その一件は、警察の不備により身代金の受け渡しが失敗
しかし、何故か、子供は無傷で三年後に戻る
愛情いっぱいに育てられた感じがあり絵まで上手になってた
その三年の間に何があったのかを探る物語

真相に関しては、少し感情を揺さぶられるものがあります
なかなかいい終わり方です。

ただ、ミステリー作品としては、それほど面白いほうでもなく
これは、ミステリーというよりも、人間愛の物語

ポイントは、絵が上手くなって戻ってきたところにある
その少年の祖父母は資産家だが、実母は親にかんどうされ、男関係もダメで、ネグレクトしていた。
そんな少年が、誘拐され三年間、画家の夫婦と暮らし
愛と絵の技術を教えられ、人間として復活していくのです

既視感を感じた。
著者には、『罪の声』(2016年)という作品があり、この過去を探る物語とちょっと雰囲気がかぶります。

空白の三年間に、少年を預かっていたのは画家だ。
騙されて犯人の兄に押し付けられていた。

この人が少年に絵を教えた先生であり父だった。

「実際に目にしているものを丁寧に拾っていく。透けて見える石とか太陽の光とか水面の揺らぎとか。そういうものを一つずつ描いていくと、いつの間にか水があるように見える」



「大事なのは存在」である。
これが本書のモチーフなのだ。

ネグレストされていた少年は、母の男が来ると外に出されていた
虐待もされていた。
やせ細り病気のようであった。

つまり、余計者。その存在は軽視され人として扱われていなかった

画家により育てられた三年、本当の子のように大切にされた
存在が認められる
それが人としての幸せなのだ。





2023 12 1



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