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書評 曲亭の家 西條奈加  西條奈加 さんの直木賞第一作目は曲亭馬琴の嫁を描いた力作です。

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曲亭とは、曲亭馬琴のことです。
里見八犬伝の作者です。
江戸時代後期の大作家。
その家に嫁いだ娘の話しです。

馬琴の息子はエリートで藩医でした。
ただ、子供の頃から病がちで早世します。
とにかく家は、しきりやの気難しい馬琴先生が中心にまわっていて
義母はお嬢様でのん気な人で役に立ちません
夫をなくした嫁としては厳しい立場になります
苦労は凄まじいものでした。

そして、同心になった息子の早死
幼い娘を姉の家に養女に出され
お手伝いさんは、みんな辞めてしまう

84になった馬琴は現役で
しかし、目が見えない
そこで嫁の彼女が口述筆記をまかせられた

つまり、里見八犬伝の最後に立ち会った女性です。
もちろん、苦労の連続
しかし、あの気難しい馬琴が認めている。
だから、先生の死後
わかりやすい言葉で里見八犬伝を書き直した本の執筆を老年になるまで続けられたという
そういう話しです。

ただの苦労話しではなく。
生きがいを追い求める彼女の姿には共感できるものがあり
晩年の馬琴に認められるところは
とても心地よくあります。
いい作品です。人が良く描けていて魅力的です。

2021 5月14日



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