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書評 銭ゲバ ジョージ秋山   金に執着しすぎると、金の奴隷に成り下がってしまうんだなと思った。

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漫画本なのだが、色々と考えさせられた。
主人公の男は、貧乏である。
母親を貧乏が理由で失っている。

財閥の社長に車でひかれかけて
そこの運転手となり、顔に傷がある次女を押し付けられる。
社長を殺し、初恋の義理の姉を犯し殺す

そして、会社と莫大な金を我がモノとし
孤独になっていく、妻にも自殺される

とにかく、安易に人を殺す。
金のために。もちろん、むかつく、邪魔
そういう理由でも殺す

「銭があればなんでも手にはいるズラ。
ひとの心も銭で動かしてみせるズラ。」

前半戦のキーワードはこれだろう。
本気で彼はそう考えていたし、この物語の登場人物の大半は金で買えるのだった。

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彼の母のセリフがインパクトが強い。
遅刻の罰金として5円を徴収しにきた教師にむかって

その5円が払えない人間もいるんです・・・って・・・

その母は病となり治療費がないために死んでしまう。

孤独な彼のところへ
初恋のお嬢さんが現れる。生きていて自分に似た息子を生んでいたのだ。
彼女は復讐のために現れたのだ。
復讐と言いつつもお嬢さんの態度はひどくない
むしろ、そこには何か主人公に変化のような安らぎが見えるのだが
即座に息子とお嬢さんを殺すという行為でもって
その穏やかさ、平凡な生活を否定する。

彼は自分の金を守るために、次々と人を殺しまくる
時には、失望したからという理由で殺す
人は道具くらいにしか思えず

金を支配し、金を欲する人間たちを奴隷として飼育しているつもりなのだが
本当のところは、その金を守るために理不尽を積み重ねているのだった。

貧乏人がいるから金持ちが得するんだよ
貧乏人が居なくなったら金持ちは困るんだよ

ってのがあるんだけど・・・
何か怖かった。

金持ちは貧乏人をものみたいに扱うのだけど
その金持ちも何かに奴隷のようにされていて
必死に悶え苦しんでいる

最後は、悪に飲み込まれるのを恐れて死ぬんだけど・・・遺書が悲しすぎ。

「この世で一番の権力者は銭ズラ。・・・銭が正義ズラ」

彼が自殺したのは、これを否定するためだったような気がする。

2021 3/20







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