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感想 とらすの子  芦花公園  人間版デスノートなのかな。構成がよく出来ているホラー作品でした。

ダウンロード - 2022-08-04T120433.083

構成が素晴らしい。
最初の記者はネタふりで、彼女が出会った白石という女刑事が、実は探偵役という形式になるところがいい。
二人の間に探偵役、物語リーダーのバトンタッチみたいなものがあり
その幕間に「まれひこ」の話しが入ってくるが
実は、こっちが本流だったりするのも面白い。

都内連続殺人事件が発生する。
その現象を突き詰めると、そこには「とらすの会」というのがあり
マレ様という女が中心人物だとわかる。

その女に、自分を不幸にした悪人の名前を伝えると
その人は惨たらしい方法で惨殺される。

デスノートの人間版だ。

記者がフェードアウトし、刑事が事件の真相
とらすの会に近づくのだが
そこからのひねりは、前フリの長さからするとちょっと物足りない。
もっとラストシーンは盛り上げられると思うんですよ。

とらすの会に集まる人間は、人生の落伍者ばかりだった。

ある女の子が会について述べている。

「ダメな人しかいない空間はすごく癒やされました」

その心地よさは、皆、自分より劣った存在だと思っている
その優越感にある。
それはたぶん、そこに参加している人たち、皆が感じているのだと思う。

実際、彼らは無能力者だ。
イジメの被害者であったり、親に虐待されていたり
そういう風になって人生がめちゃグチャになった人たちだ。
その不満をマレ様に報告し相手を殺してもらう
それが、とらすの会だった。

彼らは万能感を感じる。まるで自分が殺しているかのような錯覚をする。
次の標的を探すことになる。
こういう会に違和感を持ち参加したくないと思ったら
それは裏切り者と認定されて殺される
だから、ビクビクしながら生きる。この会から抜け出せない。
新しい標的、恨みの対象を見つけ出しマレ様に殺してもらうしかないのだ。

この恨みの増殖こそが
このマレ様
本当は、黒い女の姿をした悪魔の真意のような気がする。

2022 814
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