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感想 向日性植物 李 屏瑤  台湾のベストセラー恋愛小説。レズビアンの恋を描いた作品。

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少し切ない物語だった。
前半の出会いと恋愛の発展のところは、とても初々しくて切実で
とても好ましい感じがあったのですが
高校時代が終わり、大学に入ると雲行きが怪しくなる。

本書の魅力は表現力というのか詩的表現だと思う。

冒頭、こんなはじまり方をする。

心の中に、とある夏の午後を入れよう。

高校生の頃の彼女とのはじめての出会いのシーンだ。
彼女は高校一年生。
そして、彼女の想い人はひとつ上。
女子校である。

本書は、台湾のLGBTQの文学です。
先輩の名は小游。
あだなは、学姐。

その小游には、学校の人気者の小莫という元恋人がいた。
要するに三角関係の話しです。

この小説の魅力の一つは、詩的な言葉のセンスです。

視線は熱を持っている。

女子校の恋愛らしい言葉だと思う。
好意の視線は熱を帯びていて、それを感じずにはおれないのです。

主人公の女性は高校一年生。
恋愛対象は女性である。

その戸惑いを表した言葉がこれだ。

誰かを好きになるというのは、その人に傷つけられるかもしれない場所に自分自身を無防備にさらすことで・・・

恋愛とはどういう感情?

いつでも彼女に会いたいなって感じで、でも、彼女が本当にその場にいるとすぐに緊張するし、めちゃくちゃ緊張するし、なんていい香りなんだろうって思う。彼女と一緒にいると知能指数が半減したって感じ、一緒にバスを待ちたいし、一緒に帰り道を歩きたい。家に帰ったら帰ったで彼女と話したくなるし、本当に電話してりするとくだらないことばかりしゃべってる。いつでもどこでも彼女に会いたいって感じだよ

恋愛の初期の楽しさがここにはある。
前半はだいたいこんな感じでとても新鮮でみずみずしい。

彼女は大好きな学姐に質問する。
女が好きなのかと?。すると、彼女はこう答える。

世界中から反対されても、なりふりかまっていられないくらい好き


その言葉が自分に向かってきていることに彼女は気づきドキッとする。
彼女も学姐が好きだった。

大学生になると、恋は三角関係になっていく。
学姐である小游と元恋人の小莫が一緒に暮らし始める
たぶん小游は彼女が好きなんだけど、モテモテの元恋人の小莫には勝てないと諦めて、主人公の彼女は距離をとってしまう。

こんな言葉がある。
自分の恋人だったはずの小游が手の届かない存在になったと思った時に言った言葉だ。
とても詩的だと思う。

手に入ったものに無頓着なのに、失ったものがいつまでも記憶に残るというのは、人間の性だ。

他の人とつきあってもみるが、小游への思いが消えない。
た゛から苦しい。

新恋人と自分。そして小游と小莫の四人でデートをする。
その時に悟った言葉も面白い

恋愛は文法ではない。比較級とか最上級なんてのは存在しない。唯一無二で絶対的で徹底的で圧倒的な独り占めがあるのみなのだ。

小莫が死んだ。
必然的に、彼女と小游は結ばれる。
たぶん、最初から最後まで
ふたりは互いに愛し合っていたのだと思う。

彼女は勇気を出して告白する。
その言葉がいい。

インターフォンを鳴らした時、出てくれる人がいるのはとても幸せなことなんです

一緒に住みたいということである。
何か、この言葉が二人にはしっくりくる。

本書には、ところどころで切ない場面が登場する。
レズビアンを理由に差別されたり
恋人が死んだというのに、一番近くにいられなかったり
レズビアンなのに男と結婚したり

そのことを第三者に知られることは
やはりリスクがあり
台湾のようにLGBTの進歩国でもそういう風なのが見てとれた。

最後に本のタイトル「向日性植物」についてですが
植物の茎や葉などが日光の刺激を受けて、そちらの方へむく性質とあります。

本書の恋愛も何かそんな感じだったなぁと感じました。
目の前の出来事しか見えてなくて、全体像というのか冷静に本質を見ていない。
た゛から感情を読み違えたりしたのかなと思いました。


2022 8 25
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