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書評 お父さんはユーチューバー  浜口倫太郎  おバカキャラのペンションの親父がユーチューバーに。人気者になりたかった理由が最高。

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感動の・・・という作品がある。
本書は、その手の作品であり
意図的に泣かしにかかってくるので注意が必要です。

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ということで、「どこからでも、かかって来いやーーー」という気分で読んでみました。
なるほど、なるほど、確かにラストは怒濤の展開
眼がしらが・・・熱く。

本書の舞台は沖縄。

前を向くと、そこには青い海、エメラルドグリーンの海が広がっている。
宮古島の海だ。

宮古島の下品な元芸人というゲストハウスの主人が
ユーチューバーになるって話しだ。

沖縄の雰囲気がよく出ていました。
酒盛りのシーンとか、「なるほど・・・」と思いました。

ゲストハウス ゆいまーる と書かれている。「助け合い」を意味する沖縄の方言だ。


その言葉通り、このゲストハウスでは、皆が助け合って幸せに生きている。
まるで楽園のようである。

だが、下手なテレビよりも人気ユーチューバーは影響力があると聞くと
「俺もそれになる」とおっさんが言い出した。

娘の海香が反対する。
でも、他の人は・・・

人がやりたがっていることを他人が止める権利はないと思うけど

と何故か賛成し、おっさんはユーチューバーとなる。
おっさんは皆にチラシをまけと命令する
すべてがアナログなのだ

ユーチューブの宣伝にちらしは無意味と子供たちは言うが
バイトの元気さんはこんな返しをする。

意味がないと頭で分かっているけど、実際やってみるのが大事なんだよ。失敗しても、失敗することに意味があるのさ。自分の体で得た失敗ほど役だつものはないよ。やってみないとわからないってよく言うだろ。
失敗できることが、君たち子供の最大の特権なんだ。やっても無駄って言葉は、やってない人がいう言葉さ。

子供たちに教師のように接する元気さんのキャラがいい。

そんな親父ユーチューバーだが
10万回は再生回数があるとか夢想するも
実際は5回
この掴みはおもしろかった

しかし、その後の活動は「どっきり企画」とか「挑戦企画」とか
ありふれたもので、台風の時に傘をさすとか、火事になってゲストハウスが燃えるとか
イベントもしょぼい・・・
人気になる要素がないのに人気になる。
ディテールに甘さを感じる。
それに忙しくて本業をしないとか、娘の面倒を見ないとか浪費するとか最悪なのである。

ユーチューバーもお笑い芸人も、1つバズる
つまり注目されるようなネタがあれば火がつくのだそうだ。
それでどんどん過激になっていくおっさん
人気者になっていく

その後、ご都合主義で物語は展開していき、「この本はダメか・・・・」と思って読み進めていった。
とくに、ひかりんという人気ユーチューバー。
あの人物そっくりな眼鏡の人で、おっさんに逢いにきたり
ひかりん と元気くんが友達だったり
「ふざけんな」という自分勝手な展開が続く。

そんな ひかりんに

どうだ、いいもんだろ。波の音を聞きながら火を見つめるのって・・・。こうしていたら、普段の忙しい日々が忘れられるんだ。うちの泊り客はみんなこのの前でいろいろ話すんだ。

って言うシーンはいい。
ユーチューバーなんかより、私にはここの生活がいいと思う
なのに親父は必至に過激なことをする。
何が何でも人気者になろうとするのだ。
まるで、わざと不幸になろうとしているようなのだ。

おっさんの真似をして子供がケガをしたり
掲示板が荒れたり炎上していく

有名ってなんね?。もう十分に有名さぁ。お金もすごい稼いでいるし、これ以上有名になる意味なんてない。それになんで私が・・・出なきゃならないの

と娘の海香にまで反発される。

どうして、リスクを背負ってまで
おっさんはユーチューブで人気者になろうとするのか?
非難され、家が燃え、すべてが炎上してもやめないのは何故か?

ここには秘話があった。
おっさんには有名になって顔が全国区になる必要、理由があった。

このおっさんの希望
これが、この物語の核心。
感動ポイントである。

この物語のすべてと言っても過言ではない。
泣けるか?
もちろん、泣ける。
でも、おもしろいか?
そういう話しになると「まぁまぁかな・・・」となる作品だった。

それは号泣ポイントが終わった後も物語はくだぐだと続き
最後のどっきりがあるからなのだが・・・
そのいらないシーン・・・
ばっさりカットすれば、かなりいい作品に生まれ変わりのではなかろうか?。


2020 8/12


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