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書評 デビクロくんの恋と魔法 中村 航  デビルとサンタクロースでデビクロ。彼の書くデビクロ通信が魅力的。

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中村さんというと「リレキショ」で文藝新人賞を取っており
その後も純文学で活躍していたのですが・・・

2002年 - 『リレキショ』で第39回文藝賞受賞
2003年 - 『夏休み』で第129回芥川賞候補
2003年 - 『ぐるぐるまわるすべり台』で第130回芥川賞候補。
2004年 - 『ぐるぐるまわるすべり台』で第26回野間文芸新人賞受賞

気がつくとエンタメ小説を書いていた。
トリガール がとくに好きです。

本書では、王道の青春ラブストリーを描いていて
主人公の山本は、地味な書店員の傍らで
絵本作家を目指している。

そんな彼と、彼の出会った韓国人の女の子との恋ばな・・・と思いきや
本当に大切だったのは、近くでいつも彼を支えていた女の子だという
そういう話しでした。

山本の性格を表現する言葉を抜き出すと・・・

モトメナケレバ、ウシナワナイ

自分に自信がない消極的な人です。

素の山本は味気ない平凡な人なのですが、
彼の書くデビクロの言葉は辛辣であり、背景には闇があり魅力的だ。

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こういうデビクロ通信というのを書いてて
勝手に他人のポストに入れている。

彼を支えている女の子がいる。
杏奈という工場の娘だ。

彼女の言葉がいい。
彼はハンカチを貸してくれた韓国人の女性にプレゼントをすることになった。
でも、山本は何を送っていいのか自信がない。

「・・・それで喜んでくれるのかな?」
「喜ぶって信じて、プレゼントを選んだり、渡したりするんだよ」

+と-のような正反対の性格なんだけど
この二人のやり取りがとても魅力的だ。

彼女は彼に恋をしているのに。
彼のために恋する女の素性を調べてあげるのだ。

この後、韓国人の女性と彼はいい関係になるが・・・
彼女には好きな男がいて、彼は、彼女とその相手を結び付けようとする。

結局、杏奈と同じようなことをするんだ。
杏奈と山本は性格は反対なんだけど、芯の部分の優しさという点ではすごく似ている。
最後は、強引に二人をくっつけるのだが、この展開だと仕方がない。

女の子にフラれて、幼馴染に走る。
ちょっと違和感がないでもないが、楽しかったので良しとしよう。

とにかくデビクロ通信が魅力的でした。
昔の中村さんのイメージで読むとびっくりすると思います。
ラノベに近い恋愛小説でした。


2020 8/23



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