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感想 きつねのはなし 森見 登美彦 これ、本当に森見さんの作品?。不気味な雰囲気の怪談短編集でした。



森見節という言葉がある。
森見さん独特の口調や雰囲気のことです。
本作には、それがなかった。だから、本当に森見さんの作品なのと疑いたくなるのだが、最後まで読み終えると、やはり森見さんだった。

ジャンルで分類すると怪談になります。
短編が四つ。

それらの作品に共通し出て来るのは古道具屋
そして、胴の長いケモノ

古い道具につく幽霊や妖怪の話しはよくあります
「付喪神(つくもがみ)」と呼ばれるもので、長い年月を経た道具や自然物などに宿るものを指します。
「長い時間や経験の積み重ね(99年)」や「多種多様な物(99種類)」という意味が込められているなど諸説もあります。

ツクモはツグモモ(次百)の約で,百に満たず九十九の意見とあります。


そして、胴の長いケモノ
たぶん、きつねでしょう。

京都には伏見稲荷などの稲荷信仰がかつて盛んでした。

これを読んでて感じたのは、京都の裏路を夜中に一人で歩いているような雰囲気です。
かなり不気味です。


表題作 きつねのはなし は

古道具屋でバイトをしていた大学生が、天城という不気味な客に出会う話し
天城は彼に取引を求めてくる
それは些細なものから始まります

電気ヒーター
それが、だんだんすすんでいき
恋人の写真
きつねの面と・・・

その度に、彼は大切なものを失っていく。

この謎の人物の不可思議さ
不気味さ
そして、最後まで謎ときもないままの放置プレー

強烈です。

こいつ悪魔じゃないのか?
そんなことを感じました。


最後の 水神 という話しも怖かった。

祖父の通夜に夜の11時
古道具屋が祖父の家宝を持ってくるという

「はい、水だとうかがっております」


この女店主のセリフがゾッとします。


死ぬ前に一人で大宴会をしていた祖父
謎の家宝
死ぬ直前まで水ばかり飲んでいたという祖父

かなり雰囲気ありました。

きつねの嫁入りのはなしを思い出しました

日が照っているのに、急に雨がぱらつく。

つまり、水です。
通夜の夜、池の水が少ないのに気づき
鯉を疎水に運んでいき
全身生臭く

これ、化かされているのではないのですか?
何が現実で何が虚構かはわかんない

そして、この祖父は樋口と言います。
もう、お判りですね。

樋口じゃん。

森見作品じゃん。

たぬき じゃなく きつね 。

まさしく森見作品。
どこまでが現実で、どこまでが虚構なのか
その線がわかんない

それが森見作品の面白みです。







2023 1 5
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