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感想 犯罪者上下  太田 愛 無差別殺人事件の生き残りが、犯人は違う人じゃないのかという疑問を抱いたところから始まるところに本作の発想の新しさがある。


今までに読んだミステリーと少し違う何かが、この作品にはあると感じました。
作者は、劇団の脚本、テレビの脚本の出身者らしい。
ウキペディアによると、テレビドラマ『相棒』1997年に『ウルトラマンティガ』などの作品も書いているらしい。

ウルトラシリーズでは、怪獣を中心に物語を発想し、執筆中は怪獣の気持ちを考えていた。そのため怪獣の名前が決まらないと筆を進めることが出来なかったという


本作は、少し通常のミステリー作家と比べると違う感じがした。
それは悪い意味ではなく新鮮という意味です。

無差別殺人事件が発生した。
犯人は薬中毒。すでに死んでいた。

しかし、一人生き残った青年は、ちよっとおかしいと刑事に話す
彼は誰かに生命を狙われはじめる。

その事件の最初の担当だつた刑事が、一人だけ彼の言葉を信じて独自の捜査をする
彼と刑事が合流し、隠れ家として提供された記者の家に隠れる。

この三人が合流してから話しは面白くなっていく。

何となく、本道のミステリーと違うと感じたのは

リアリティが重視されているからだと思う。
この殺人事件の背景には、ある事件があるのだが、それを隠ぺいしようとする大企業やらバックにいる権力者。
彼らが雇った狂暴な暗殺者などがいて

彼らは、この悪の前では無力なのだ。
刑事は左遷され
記者は仕事を失くし
被害者の生き残りは追われる立場になり
味方の会社役員は、暗殺者に殺害されそうになり重体。自殺未遂とされてしまう。

結末がすっきりしないのですが、それが逆にリアルです。
この世界、必ずしも正義が勝つとは限らない。


ソメイヨシノは、まとめて植えられる木ですからね。一本一本なんて誰も見やしない。そのかわり同じ花を一斉に咲かせて一斉に散る。日本人好みなんでしょう。


この言葉が印象に残った。

刑事の世界で浮いていた相馬は、正義の人なのに事件から外される。
修司に至っては、被害者なのに元不良ということで非難される。

人と違うと責められる。
多様性が叫ばれてはいるが、それは口だけなんです、この国では。

彼らは悪人から多額の金を奪う。
それを薬害被害者の代表に届ける。
彼女は拾得物として警察に届け、後に自分のものになったのですが、それを同じ病気の人たちの団体に寄付し、それで裁判しようとする。

すると、五億も貰って、その上、もっと金がいるのかよとみんなに非難される。
みんなでわけると、たいした額にならない。それで被害者の子供たちは一生生きていけるわけがないのに、強欲だと彼女は避難される。

嫉妬もあるのですが、何か空しいですね・
自分と違う人たちを受け入れられない。
そういう一般大衆の怨嗟の声が一番むかつきました。

こういうモチーフは テレビの相棒にもありそうです。


2024 4 8



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