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書評 魂萌え ! 桐野夏生  年老いて一人になることの不安と葛藤が凝縮していた名作でした。


59歳未亡人
夫が急死
その夫に10年来の愛人が・・・

本書は、年老いることの不安や葛藤が描かれています。
愛人との対峙の場面が魅力的です
愛人は、最初は控えめですが
彼女には彼女の自意識があり
最後は逆ギレ気味になり
その対立が過激になればなるほど物語は面白くなる

そして、息子や娘たちのわがまま
金を奪い取ろうとする態度
現実では、もっと激しく一方的になると思います
この物語の二人の子供は冷淡ですが
最終的には母親の言い分を聞いているところが・・・

親友の四人。
何でも話せる仲間と思っていたら
急に今まで見えてなかった本当の姿が見えてきて
僕には、この友達たちの腸が腐っているのではと思えました。
表面的な気づかいの反面
おもしろネタとして興味津々な態度が怖いです
まるで芸能レポーターのようです。

好きなエピソードは息子たちに絶望し彼女が家出した時に出会った
風呂婆さんとその甥の話しです。
現実の辛さを表現しています
彼女は専業主婦として
今まで、そういうものを夫に押し付けていた
見ないで生きていたのでしょう

塚本という蕎麦打ちの会の老プレーボーイには驚きました
仲間の奥さんをものにしようとする
その節操の無さに驚きます
彼女をものにしたと思ったら
すぐに、その友達にまで手を出す
野生動物のオスのようです。

彼にラブホテルに連れていかれようとして、今までの生き方が変だと気づく。男に依存したり、子供に依存したり、それはおかしいと気づくきっかけになります。

年を取るほどに
希望よりも
絶望が日々増えてくる
でも、生きなくてはならない
体力や気力も衰えるのでしょう
それは若いころの1日とはきっと違う1日なのだろうなと思うのです。

彼女はたくさんの人から裏切られます。
それでも、したたかに生きていくしかない。
それが老いを活きるということなのでしょうか?。

魂を萌えさせて生きるのは難しい。でも、誰かに依存していては、魂は萌えない。だから、彼女は自分の魂を解放させないといけなかったのです。


2020 12/27



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