感想 ビューティフルからビューティフルへ 日比野 コレコ 文藝新人賞史上最低の受賞作品と言ってた人がいたが、僕は面白いと思いましたよ。
文藝新人賞受賞作品。
受賞当初、やたらと評判が悪かったのですが、その理由の一つはわけわかんないという意見でした。
確かに、わけわかんないです。
しかし、僕は嫌いじゃない。
この中二病をこじらしたようなヘンテコさが楽しかった。
物語は、成績はいいが親が新興宗教にはまっててネグレクトされていた ナナと彼に恋する 静
友達の腰ぎんちゃくの ビルE の三人の物語
共通するのは、ことばあ という 金曜の夜に塾をしている婆さん
下品な性描写や、独特の価値観、かなり個性的な味付けがなされている作品でした。
展開が急で、雑な感じがしました。
雑に感じた原因は、三人のパートが同じ文体でほぼ同じ温度で書かれていて
それは違うだろと思った点です。
モチーフも伝わらず。
選考委員の角田光代さんのコメントが面白い
普通、三つのパートは一つずつ、その人に合わせて描くのですが、それをしてない。角田さんは好意的に批評しているが、僕には新人によくありがちな技量のなさとか、そういうことを知らなかっただけに思えました。
しかし、やたらと面白い。
文化祭の出し物の幟の話しを例にとると
令和桃太郎
これを悪戯する。
桃を消して膣にする。
令和膣太郎
これ笑っていいのか、ちょっと悩んでしまう感じですが
平気で下ネタを大量投下してきます。
作者は、おっさんと思いきや、2003年生まれの女の子なのです。
言語感覚が独特で、それが本書の魅力です。
ナナという新興宗教に親がはまっている女の子の場合
こんな描写がある。
ようするに、イジメをしているという告白です。
ここには、ナナという少女の孤独がよく表現されている。
それが作者の独特の比喩によって生々しさを出しているのです。
静は、愛に生きる少女です。
ダイという少年に恋をしている。
どれだけ好きかを表した表現、比喩、これ独特でした。
絶対に不可避の死の状況でも少しでも生きて彼と一緒にいたい
これ究極の愛です。
次は、ナナです。幸せそうなクラスの友達に対して抱く感情。
この表現もなかなか光っていました。
ナナの絶望が伝わってきます。
ことばあ の塾の宿題 自分の人生を年表にしてという話しも面白い。
彼女の決めていることも面白い。
親の被害の深刻さの描写も良い
彼女にはリアルな感情がない
ナナ 静 ビルE の三人を描いた物語なのですが
描写の温度が、実はまったく違うのがわかります。
目についた表現は、ほとんどナナの場面のものでした。
文字配分は、ほぼ平等なのだけど、これはナナの物語なのかもしれません。
2023 5 18
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