見出し画像

書評 空白の日本史 本郷和人 日本史の講義では習わないが本当の話し。天皇に関する議論は楽しかった。

画像1

画像2

歴史には「空白」がある。
教科書では習わなかった真実の物語は楽しい。
しかし、愚痴や雑談も多い。主観的なのも気になる。
歴史に詳しくないと楽しめないかもしれない。
歴史好きにはたまらない本です。

歴史の資料には空白があると著者は言っている。
それは日記や古記録で補完されることもある。
儀式は重要視されていたので記録や日記を残していた。

鎌倉時代のことを知る上で大切な古記録の「吾妻鏡」
色んな種類があり「北条本」が有名だ。これは北条家から、黒田家にわたり徳川家にという経緯をたどったと私は大学で習ったが、本書では、本当は徳川家が各地に散らばっていた吾妻鏡を収集しまとめたとされている。家康が集めたのだから徳川本である。じゃ、何で「北条本」と呼ばれているのだろう。

1199年の頼朝の亡くなる部分は欠けているという。
上総介広常の死についても空白。
著者は、彼の死を頼朝の命令で梶原景時に暗殺されたと思っている。
それを別の資料や景時が処罰を受けていないことなどから推測。
このようにして歴史の「空間」。資料の欠損を補うこともあるという。

天皇家の話しは興味深い。それはタブーとされてきたものだからだ。1つだけ紹介する。

 古代から中世において、天皇家は神道よりも仏教とのかかわりが強かったが、今はそうではない。伊勢神宮と天皇家がずっと親密だったという話しは疑わしい。
 天皇が神道一辺倒になった理由。三種の神器が即位には必要。
 剣は壇ノ浦の戦いで水に沈んた゛のでは・・・。後醍醐天皇の時代、剣はすでになかった。
 何故か、南北朝時代には、三種の神器はセットあった。
 三種の神器を持つものが真の天皇の後継者であるという思想は、この南北時代の対立から勢力の弱い南朝方が作った理屈でした。
 明治政府が、この「本物の三種の神器を持つものが天皇である」という思想に拘ったのは、伊勢神宮を特別な存在にしようとした意図がある。つまり、天皇を中心とした中央集権体制をイメージしていたのだ。それに「神話」を繋げた。伝統のある古い国家であるという宣伝だった。
 しかし、昭和になると「我々日本の天皇は古い歴史を持っているから、だから、日本人は偉い」と思想を変換させた。これが皇国史観だ。

 主観的な話しも多い。例えば、こんなの・・。

「開かれた皇室」の話しの中で秋篠宮の娘の話しが出て大正天皇が皇太子であった時の婚約者が病気だったのが発覚し、内々に慰謝料を払って破談にしたとか・・・。悪意のある人間が皇室に近づくことは過去にあったとか・・・。言いたいことはわかるが、歴史の本の中でそんな話しはいらないと思った。

 とにかく、知らないことが多くて楽しかった。歴史の見かたが少し変わったかもしれない。

2020 7/25




この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?