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書評 百年と一日  柴崎友香  「時間の経過」をモチーフにした短編集。著者の20周年記念作品らしい。

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「時間の経過」をたどっている短編集です。
33作品のショートショートです。
1話5ページ弱。
柴崎さんにしては文章がシンプルで入りやすい。

「正」の文字を男系の名前に受け継ぐ銭湯の家の話しとかに
ふと、ある高貴な一族が浮かんだり
噴水にたむろしていた若者の話しに
自分を重ねたり
線路沿いの祖母の家にたむろする子供たちに
過疎問題を見てみたり
不動産バブル、戦争・・・
実に、色んな裏モチーフが見え隠れして
まるで宝箱みたいでした。

時間は残酷で、あれだけ「その場」にいたのに
感情をたくさん「共有」していたのに
新しい生活が、時間が経過すると
その場所や時代は、後ろに追いやられて忘れてしまう
今、そこにある「ソレ」にしか
私たちは興味が持てず、大切だったものの「価値」とかを簡単に放棄する
まだ、あの頃は良かったと振り返るならいいが・・・
たいていは、そんなこともなく
気がつくと人生を終了しているのかもと思ったりした。

何か、色々と考えさせられる本でしたが、同じような話しが続くので
正直に言うと、途中で少し集中が切れた。
だから後半読みが早くなり
200ページの本を3時間ちょいで読んでしまうという、もったいないことをしてしまった。
それが残念です。速読ではありません。


2020 9/12



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