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読書日記 2023年8月

読んだ本の数:24
読んだページ数:8031

夏なので少したくさん読めました。
新作から三冊おすすめ本があります。
今回は、かなりレベルが高くどれも素晴らしいです。

おすすめ本五冊

 は ホラー作品。圧倒的な世界観でした。おすすめの一冊です。

無限の月 も設定の面白さが魅力。読み応えありでした。

心臓の王国 は ライトノベルのような破天荒な青春もの。独特の世界に魅了されました。

正欲(新潮文庫) は 多様性を問う純文学。かなり読みこだえあり。

正体 (光文社文庫) は とにかく強烈。




 

以下、読んだ本の簡単な感想。



無限の月感想
ゴリラ裁判が良かったので、この作品も読んでみた。アイデアは今まで見たことがないくらい斬新。ゴリラの時もそうだが、才能を感じる。ただし、この神設定を生かしきれていないようにも感じた。面白いのは面白いのだが、このアイデアならもっともっと数巻にわかるSFの名作が作れたような気がしてならない。人間の寝ている脳を有効活用するアプリの社長が、昔、実験で作っていたカチューシャ。脳に埋め込むのではない方法の機械を使ったところ中国の女性の人生を夢見るようになり、その人になりきる。その人は実在の人物で会いにいき彼女を助ける。
読了日:08月01日 著者:須藤 古都離

なまなりさん (角川ホラー文庫)感想
双子のやったことは犯罪だと思う。実話というがありえない。なまなりとは、鬼になる前、半分鬼みたいな感じなのでしょうか。恨みを抱いて呪詛しながら自殺した女の人の霊が双子と、その家族を呪うという話し。かなり怖い。位牌が縦に裂けるとか。
読了日:08月03日 著者:中山 市朗

キノの旅XVII the Beautiful World (電撃文庫)感想
平均点よりは上な気はするが、もうネタがないのかなとも思わなくはない。今回はたくさんの話しが入っていました。楽園の話しとか、料理の国とか面白かった。鉄道の国の国民たちの判断も素晴らしい。神のいない国のキノの解決策はそれっぽいのですが、過激な気がしないでもない。
読了日:08月05日 著者:時雨沢 恵一

平家物語 犬王の巻 (河出文庫)感想
解説の池澤さんによると、本作の魅力は短いセンテンスと語り口調で疾走感があることらしい。確かに、その通りだ。二人の男の友情の物語でもある。犬王が父親のせいで人身御供にされて異形の形で生まれたというのが物語のポイントになる。その彼が平家物語という核を時の権力者である足利義満に禁じられ、それを受け入れたことで最終的に今世まで名が残らなかったのは皮肉だ。逆に友魚のほうは、義満に平家物語犬王の巻を禁じられるが拒絶し生命を奪われる。この対比が面白い。どちらかというと原作本よりも映画にこの傾向が重視されているのがいい。
読了日:08月06日 著者:古川日出男

あめつちのうた (講談社文庫)感想
甲子園の土の管理整備している阪神園芸に入社した若者の成長の物語。弟が甲子園に出る有名スラッガーというのまではいいが、さすがに元甲子園の英雄が同僚とか、野球界に復帰とかありえなかった。真夏との三角関係はいいが、後半にやってくる父と子の確執。和解。この陳腐な話しにはうんざりした。もっと、お仕事の部分を重視した作品にしていたら、これは絶対に名作になった気がします。合格点だけど何か盛り上がらない。
読了日:08月07日 著者:朝倉 宏景

ボクたちはみんな大人になれなかった (新潮文庫)感想
ときどき、ぶち切れるような雑な繋ぎとか、結局、スーとは何なのかよくわからず、時系列も変な感じで混乱する。君は大丈夫だよ、面白いもの。と何者でもない彼を承認してくれたブスな彼女に執着する主人公。1999年に地球は滅亡しない。バブル期が舞台なのか。何か胡散臭い男が主人公で、中身のない軽い風みたいな小説だった。ななせというオカマは魅力的だったが、とにかく、純愛小説なのなら文通し付き合ったブスのフリーターの恋人がいるのにスーと浮気するとかダメなんじゃないかな。
読了日:08月08日 著者:燃え殻

これはただの夏感想
なんか切ない話しだな。ある夏の話し。それは死と誕生日と卒業の物語だ。知り合いの結婚式の後に知り合った女と朝まで過ごした。隣りに住む明菜という名の少女と知り合いになった。恩人のテレビマン大関が末期がんで入院。彼の恋と、子供を預かるという行為、もしくは子供が欲しかったという願望と、知人の死を描いた物語。短い物語の中にいっぱいの感情が積み込まれていた秀作。すごく切ない気分になつた。
読了日:08月09日 著者:燃え殻

優しい死神の飼い方 (光文社文庫)感想
死神が犬の姿でホスピスに現れた。四人の死病におかされた人たちを地縛霊にならないように心を救済するのが目的。未練を断ち切るのを助けるのが仕事だ。とにかく優しい物語でした。その四人がある事件と関係してて、最後に宝石探しになったり、それを狙った強盗と戦ったりして後半はかなり盛り上がりました。
読了日:08月10日 著者:知念 実希人

黒猫の小夜曲 (光文社文庫)感想
死神が黒猫になって・・・、地縛霊を成仏させるパターン。最初の製薬会社の会長の遺言の謎、次の刑事の捜査、エイズで恋人から離別する研究者、すてべが繋がっていき、悪人と戦うパターンは一緒でした。ミステリー色が強い話しなので楽しめました。
読了日:08月11日 著者:知念 実希人

キノの旅XVIII the Beautiful World (電撃文庫)感想
好きなシリーズなのですが明らかにネタぎれ。主食の国という話しはチョコレートが主食の国。ありえないかな。それはそこそこ楽しめた。お金の国はコレクターの国、希少価値のある紙幣や硬貨はたしかに高額で売り買いできるのに・・・という。
読了日:08月12日 著者:時雨沢 恵一

暗黒童話 (集英社文庫)感想
著者はじめての長編というのもあるのか粗削りだが新鮮さがあり面白い。目の見えない少女のため、目玉を奪い取りプレゼントするカラス。それを目にはめると、その奪った目の人の記憶が夢になって現れるという童話が序章になり、ある記憶のない少女が目を移植したことで、その人の記憶がチラッチラッと再現されるという、彼を殺害したのは誰だみたいな展開。最初に出てきた童話の作者が犯人、彼が地下室に隠していたのは・・・。けっこう面白いです。
読了日:08月13日 著者:乙一

キノの旅XIX the Beautiful World (電撃文庫)感想
久しぶりに感動系「助けに来た国」。この話しのラストがいい。切れ味がいいのは「秀才の国」。人をも物のように考えているところが怖いですね。不良品は破棄処分って、それは殺害するということだね。「秀才の国」の対比になっている「天才の国」も面白かった。こっちは人を尊重しているね。他の作品も面白く、前回に比べるとかなり質はいい。
読了日:08月14日 著者:時雨沢 恵一

民王 (角川文庫)感想
総理大臣とバカ息子が入れ替わるというコメディ。まったくもって池井戸さんらしくない、なのに、楽しい。その魅力の中心は爽快感にある。まるで池井戸さんの政治の理想を、麻生さんを想起させる武藤総理に憑依させたみたいな感じなのだ。バカ息子は、漢字を間違える。親友の官房長官が女性問題を起こす。めちゃんぐちゃなんだけど、官房長官をこのバカ息子を庇う。そのシーンは鳥肌ものだ。予算委員会でえんえんと不倫の話しをする野党やメディアへの痛烈な批判が見てとれる。この武藤総理こそ、本当の政治家の姿なのかもしれない。
読了日:08月15日 著者:池井戸 潤

麦本三歩の好きなもの 第二集 (幻冬舎文庫 す 20-2)感想
独特の世界観、嫌いじゃないのですが、さすがにあきた。二番煎じ感がどうしても出てしまう。恋人っぽい人が出てきたり、騒がしい友達はいい人だし、怖い先輩は結婚退職してしまう。好きなのは少女と折り紙をしたパートかな。双子の弟との関係性がいい感じだった。この世界は、もういいかな。
読了日:08月16日 著者:住野 よる

リセット(新装版) (双葉文庫)感想
タイムリープものということで、友達のおすすめの作家さん垣谷さんの作品をチャレンジした。ちょいきついが面白い。読みやすいというのがある。しかし、47歳のおばさん三人が高校生になり人生をやり直す、それも仲間の不幸をやんわりと望んでいるというのはイライラする。結局、成功したはずの二周目も満足できなくて元にリセットし新しいスタートを切るというもの。姑問題、男尊女卑、夫の無関心、子育ての大切さ。そうなるのかと思いつつ、げんなりしてくる。
読了日:08月17日 著者:垣谷 美雨

神話の密室 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫)感想
短編二作品。最初の飲んでないのに泥酔する男の謎は医療ミステリーとして秀逸。試合のリング上で死んだ挑戦者。勝利の後に死んだ。妻は殺人だと言う。これは小鳥遊が謎解きする回です。少し強引な感じもしないではないが切れ味抜群。
読了日:08月18日 著者:知念 実希人

もぬけの考察感想
この部屋は呪われていると思う。出社拒否の女、友達の鳥を虐待する人、ナンパ男、画家。みんないなくなる。都市の片隅のマンションの一室、408号室に入れ替わる住人たち。前の住人あてに届く郵便物と、部屋に残る不穏な痕跡……。 その経緯を示した話し。まさしくもぬけの殻という感じなのだが、この作者の文章は全般的に読みにくく、改行が少なくリズムが悪い、私小説とか狙いがあるのならわかるのだが・・・。今いち楽しめない。
読了日:08月19日 著者:村雲 菜月

心臓の王国感想
うーちゃんを処刑したくなる。そんな小説だと説明するとラノベかと思われるが違うのだがそんな風でもある。とにかく楽しい引き込まれる気がつくと一気読み。500ページだけど8時間で読めた。それだけ面白い。アストラル神威と名乗る美少年と出会った。にしうりうれたろうこと、鬼島剛太郎。『せいしゅん』するために越して来た留学生だった。このストーカー体質の変人が巻き起こす喜劇、そして、彼の秘密。かなり面白い。濃厚な青春を目撃してください。
読了日:08月20日 著者:竹宮 ゆゆこ

感想
読後感を述べるとハーフマラソンを完走したような疲れ。とんでもない世界に触れてしまったという高揚した気分。人間の身体の部位を扱うことで、共感てきな振動を読者に共有させたのだと感じた。これはホラーなのか、それともファンタジーなのか、寓話なのか、混とんとした渦に巻き込まれたような感覚。実に汚である。その汚らしい世界に気がつくと夢中になっていた。食書という短編が、本書を象徴しており、それは本を食べるという行為によって、その中身をリアルに体験できるという語感フル活用な作品なのだが、それに全作品が似ている世界なのです
読了日:08月22日 著者:小田 雅久仁

霜月記感想
親子三代町奉行の家系。この三人がいい。祖父は優秀な町奉行、その後を継いだ父は凡庸、それでも10年務めたが、突然隠居届を出し家出、主人公である息子18歳に奉行を譲る。町奉行悪戦苦闘日記と思いきや、父の失踪の謎、その背景にあるものの謎を解き明かすミステリーでもあった。祖父の相棒は筆頭与力、主人公の孫の相棒は親友。この四人でもって謎に迫る。悪役も個性的、女性陣のキャラも良くできていた。アクションシーンもあり楽しめる。かなり読み応えあり。楽しかった。
読了日:08月24日 著者:砂原 浩太朗

頭がよくなる思考術感想
読みやすくわかりやすい。ここに書いてあることは、色んな自己啓発本に書かれている内容とさほど変われないが、短い言葉でシンプルに表現されているので手元に置いていたいと思う本です。雑念を相手にするなというような仏教思想を核にしたアドバイスはとても身に沁みました。僕はノイズに左右されるタイプなので目から鱗が落ちる感じで腑に落ちました。
読了日:08月26日 著者:白取 春彦

正体 (光文社文庫 そ 4-1)感想
鏑木を殺して欲しくないと思った。それにしても良く出来ている。彼は死刑囚、そして、無実を主張している。彼は脱走した。逃走先での出来事がここには示されている。彼は何のために逃げているのか、彼は何をしようとしているのか。印象に残ったのは、WEBライターをしていた時に女性と同棲していた話しと、最後の介護施設の話しだ。どの話しも優れていて読者を魅了する内容になっていた。この世界には冤罪が存在し、それは人を殺す。死刑という意味だけでなく、その人の尊厳までも奪う。だから、あのラストは辛い。とてもいい作品でした。
読了日:08月27日 著者:染井為人

正欲 (新潮文庫 あ 78-3)感想
多様性という言葉の意味を考えさせられた。人は色んな価値観や趣味を持っていて、それを許容することがより良い社会を作るために必要だと思われている。しかし、本書はそういう言葉を多用する人間を否定する。何もわかっていないと目の前でシャッターが閉められる。ここに価値観の徹底的に違うという前提の三人が出てくる。水にしか性欲を感じないのだ。子供の水遊びの画像を所持していて逮捕されるという結末になる。それは彼らを認めない。否定するということなのか、それとも、そういう人間は排除しなさいということなのか。果たして多様性とは何
読了日:08月29日 著者:朝井 リョウ

粘膜人間 (角川ホラー文庫)感想
これを読んで思ったのは、日本ホラー小説大賞のレベルがいかに高かったかとということでした。なくなったのは残念です。復活して欲しい。確かに、第二章の拷問はありえないくらい汚なくて最悪でしたが、この暴力的な小学生の弟を河童に依頼し殺害すると言う設定は楽しく、とにかくストーリー展開が奇抜でインパクトがあり楽しかった。河童がやたらとHでグっちゃねというKEYワードを連呼するのも性格設定の細かさで、それがこの壮大な汚物語の骨格のような気がします。
読了日:08月31日 著者:飴村 行

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