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書評 読んだふりしたけどぶっちゃけよく分からんあの名作小説を面白く読む方法  三宅香帆    本を読む楽しみを倍化させる。三宅式の読書術が示されていた。総論より各論の方が楽しい。

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本書の目的は、小説を面白く読むための方法を示すことだ。
大雑把に説明するとmetaphor。つまり、比喩に注目する。
この話しは何を言おうとしているかを読み取ることが大切だと述べている。

第一部は、小説の読み方をレクチャーしているのだが、それよりも第二部の各論。
実際に名作を例にとり、どの部分に着目し読むと楽しいかの具体例が良かった。

芥川と川端のところが、とくに秀逸で読みながら何度も「その通り」と呟いていた。それほどに納得する内容だった。

実際に、使えそうな技術としては「カラマーゾフの兄弟」の攻略法だろうか。
あれは登場人物がややこしいし、頭が混乱するのですが・・・
作者は「あらすじを先に読んでおけばよい」と説明している。
確かに、初読の場合、それが良い方法と思われる。

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翻訳ものというと、翻訳者によって作品の雰囲気はガラッと変わる。
XXなんかの翻訳本を読むと、洋物が嫌いになりかねない。
作者は翻訳本の攻略法として「何冊か読み比べて好みにあったものを・・・」と言っている。

三島の「金閣寺」については、元祖・内向的オタク小説と言っている。
犯人が女性との性行為において、彼女を金閣寺とだぶらせていく思考過程を例にとる説明はおもしろかった。焼いて金閣寺を自分だけのモノにしたかったのだろう。
この作品の読み方は「タイトルに問いかける」だった。

本書に書かれていた胸に刺さる言葉を最後に列挙しようと思う。

あなたの今の人生で大切なテーマと、小説の中のテーマが、ぴたりと一致した時、それはかけがえのない読書体験となる。
翻訳は小説の読み味を変えてしまう。
小説じゃないと伝わらない思想が作家の中にある・・・
本当に「文学的」って何なんだろう?。真剣に考えてみると、私は「細部まで細かく描写すること」だと思っている。
文学的な読み方とは、「細かさを楽しむこと」にある・・・

「察する」という能力は、小説を読む上で、必須項目と言っていいくらい大切な能力だからだ。どの国の小説を読むときでも変わらない。「察する」能力なしに、小説なんて読めるかっ、と私は思う。だって小説は、ぜんぶを書かないんだよ。

「えっ、ほんとに同じ小説を読んだ?」ってくらい感想が違うこともある。だから面白い。小説を読むことは。結局、みんな、小説を通して、自分の物語を読んでいる。必ず正しい読解なんて存在しない。そこにあるのは、自分にとっていちばん面白い読解、だけだ。

短歌を読む時は、「解凍」の時間が必要なのだ。

古典作品は、ただ自分で読むだけで終わらせるよりも、プロの演奏家による解釈を読んだ方が数倍楽しい。


おすすめ本です。20作の名作をぶったぎっています。

2020 10/22







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