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感想 六人の嘘つきな大学生  浅倉 秋成 就活の裏と表がリアルに描写されていた。

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舞台は就活。
就活でミステリーが成立するというのが本書の魅力。
就活の裏と表がリアルに描かれていた。

ある有名会社の最終面接に残った6人の学生。


ダウンロード - 2022-05-21T163604.864

キャラはかなり個性的だし、頭もいい。
というか、大学生というよりも30のおっさんみたいにキレキレ。仕事できるタイプ。ちょっと現実的ではないなと思いました。

この六人の中で、一人を選ぶ。
選ぶのは学生による投票。

嶌衣織が言ったセリフが印象に残った。
月を見上げながら・・・

月って表側しか見れないんですよ。裏側はどんな風になっているのでしょう。

6人は優秀で、人も良くて、みんな仲良し。全員、一緒に合格しようなと誓い合う。
しかし、最終面接の課題が変更になり、六人の中で誰が採用にふさわしいか決めることになり印象が変化する。

学生だけのディスカッション時間。
ここに劇薬が投入される。
各人に封筒が用意されている。それは会社が用意したものではない。
写真が、そこには袴田の過去のイジメ事件の記事が。彼が後輩をイジメて自殺とある。

30分ごとの投票。当然、袴田は投票ゼロ。

どうやら、全員分ある。誰かがわざと用意したらしい。
次は、リーダー格の九賀。
次は、八代・・・
次は・・・、衝撃的な過去が次々と暴露されていく。

犯人は、ミクシーやフェイスブックで彼らの過去を探っていた。
情報提供者には金を渡していた。

犯人は誰だということに、語り手である波多野がはめられて犯人にされてしまう。
そして、無傷の嶌が合格に。

これが前半、真犯人は別にいます。
後半は、波多野が死んだので、嶌が主人公。
10年近く時間は経過している。犯人探しを再び行います。
波多野が死に、彼の妹が嶌に連絡してきたのがきっかけ・・・。

嶌は犯人探しと並行し、面接担当にもなる。
その基準のいい加減さに呆れる。

短期間の面接で、その人の本質なんかわかるわけがないと気づく。
自分のことも、よくわからないのに他人のことが短期間でわかるなんてありえない。

受験者の学生は平気で嘘をつきます。
ボランティアのリーダーだった。バイトリーダーだった。サークルのリーダーです。
ほぼ全員が何らかのリーダーなんてありえない。

犯人が就活についておもしろいことを言っている。
就活とは・・・

嘘をついて、嘘をつかれて、大きなとりこぼしを繰り返すシステム

企業も自分たちの良いところだけアピールし、学生も一緒である。
嘘ばかりだった。

そんな不確かなもので人生が決まる。
そういうシステムに犯人は抗議をしたのだった。

当時の面接担当者が言う。

人材の見極めなど人にできるわけがない。それは神の所業だ。


完全に良い人も完全に悪い人もいない。
相手の本質を見抜くなんて短期間ではできない。

先生に生徒の本質は見抜けない。むしろ生徒同士のほうがわかる。
だから、受験者たちの投票により合格者を決めようとしたというのだ。

そして、この暴露大会みたいに醜悪なディスカッションが生じたのだ。
普通、こんなこと2時間も続けることはないと思う。
最初に、イジメ自殺の話しが出たところで、別室の面接官は止めると思う。
それだとミステリーにはなりませんが・・・。

就活なんで、あまり気分の良い話しではないのですが、後半は全員の印象を変化させるわざとらしい記述があり読後感を無理から良くしているが、それが僕にはわざとらしく思えるので、このミステリーはあまり高評価したくないのです。

2022 6 16
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