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書評 法廷遊戯 五十嵐律人 メフィスト賞受賞のリーガルミステリー。そのラストに驚愕した。

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メフィスト賞受賞作品です。
リーガルミステリーの傑作。
そのラストが凄い。

普通の文学賞と、この賞は少し違っていて
普通の賞は、雑誌があって、そこで募集した数千の応募者の中から選考委員の作家の先生たちが
1作品か2作品選びます。
でも、このメフィスト賞って随時募集で、どういう経緯で選ばれているのかもよくわかんない。
だから、ときどき、とんでもない作品が出てきます。
逆もあるけど・・・。

本書は当たりです。たぶん、枠を外れた。そういうものなんでしょう。
小説の異端児みたいなもの。それが私のイメージです。

ミステリーなので詳しくは語れませんが・・・
これは読む価値のある作品です。

ロースクール時代の友達に、呼び出されて大学に行ってみると
幼馴染で同級生の美鈴が血まみれに、目の前で親友が死んでいた。
彼は、弁護士なので、その弁護をすることになる。

この学校では、無辜ゲームというものが流行っていて
これは模擬裁判のようなものだった。
無辜とは、罪がないという意味。


正しい手続きを学ぶためのロースクールで、私的制裁を擁護するようなゲームを・・・

やっていたのである。やり始めたのが被害者の馨だ。

同害報復が原則。
これは、こういう罪を犯した。それに対して同等の罪が与えられるという考え方だ。
目には目を歯には歯を という考え方に似ていた。

この思想が、本書のメインモチーフなのだろう。
罪を犯した者には、それと同等の罰が与えられるというものだ。

ロースクール時代の、この模擬裁判の話しが面白い。
1つの話しの中に、いくつものミステリーが内在している。
その謎ときもいい。

最終的には、リーガルミステリーなので法廷ですべてが明らかになるのだが・・・
問題なのは、どうして彼は死ななければならなかったのかという理由だ。
その死によって、何がなされたのかが大切になる。
そして、彼らは過去の罪とどう向き合っていくのか?。

「主文、被告人は、無罪ー」
この裏には、いくつもの物語があり、そこには主人公たちの過去と彼らの犯した犯罪やら冤罪やらが絡んでくる。


弁護士で主人公のセイギの性格を表す一文を紹介する。
これは、痴漢詐欺をしようとしていた女の子へのアドバイスだ。

生きるために罪を犯すなとはいわない。でも、自分が逃げるために無辜の人間に罪を被せるのは、最後の一線を越えている

過去に、自分たちのせいで一人の犯罪者を冤罪で生み出していたのだ。
だから、冤罪を絶対に起こしてはならないと考えている。

私は、自分の将来を諦めたくない。その為なら、手を汚したって構わない。


これが被告人となった美鈴の言葉だ。

セイギと美鈴は同じ施設にいた。大学に行く金が必要で、二人で痴漢詐欺をしていたのだ。
そして、冤罪事件が発生した。

この過去の事件に対する向き合い方が
現在の事件にもシンクロしてくる。

この考え方が、ラストの決断と関わってくるのだ。
その時、私たちは考えさせられる。
罪とは何なんだろ?。
法とは何なんだろ?。

2020 8/17





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