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書評 牛家 岩城 裕明  短編ホラー2作品、ともに、発想が面白い。

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第二十一回日本ホラー小説大賞佳作となった「牛家」に、書き下ろし作品「瓶人」を加え文庫化したのが本書。

「牛家」はケンタウロスの迷宮みたいだった。
ゴミ屋敷、掃除したのに翌日には元に戻り
ワニはいるわ、牛人間はいるわ。
一度入り込んだら抜け出せない。
別の空間とリンクしていて、とても不思議な感覚。
圧倒的な不可思議感でした。

「あの、これ、欲しいものとかあったら、もらってもいいんですか?」 ツネ君が訊く。 汚物まみれのものを手にしながらよくそんなこと言えるなと思う。 「やめとけ、迷うから」 ジンさんが掘りながら言う。 「どういうことですか?」 「ゴミ屋敷にはなんでもあるんだよ」 「いや」ツネ君は手袋についた液体を違うゴミになすり付ける。「なんでもはないですよね」 「あのな、俺たちはここにあるものすべてを確認することは出来ないだろ。つまりそれは、なんでもあるってことと同じなんだよ」ジンさんが背後にゴミを投げる。「だから、迷うな。迷ったら出られなくなるぞ」 このゴミ屋敷から出られなくなる。


「瓶人」はすぐれた作品です。

僕のお父さんは普通ではありません。どこが普通じゃないかというと、息をしていないところや、脈がないところ、体温がないところです。 お父さんはゾンビです。 お父さんは、僕が生まれてすぐのころに階段から落ちて死んだのですが、お母さんがよみがえらせました。正式には瓶人と言います。


この少年を10年以上にわたって献身的に育てる父のゾンビ
生きてる母は、財産を得ようと少年を殺そうとする。
どちらが化け物かわからなくなる。

父ゾンビの描き方がとても良かった。
思春期の照れとかも上手に表現されていたと思う。
にしても、父ソンビにゾンビ化されていた少女だが
ゾンビなのに受験合格したんだね。
そこには矛盾を感じた。
ゾンビに知性があるのかな。


2022 1 30
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