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感想 先祖探偵  新川帆立 「あなたのご先祖様を調査いたします」って、こんな探偵見たことない。

探偵には色んな種類の探偵がいるが、「先祖探し」に特化している探偵なんて何か発想が斬新だった。
短編集。すべて良い。

最初の幽霊戸籍の話しはミステリーとしても優秀。
日本最高齢の曽祖父の居場所を教えてと、わざわざ九州の役所の人間が訪ねてくる。
なぜか、ひ孫の依頼人の戸籍謄本を要求するのだ。
「あなたのご先祖様を調査いたします」が売りの先祖探偵に依頼する。

しかし、何か妙・・・。
その謎と、今さら、その曾祖父がって話しの謎が最後に繋がる。
そのどんでん返しは最高に面白い。

「先祖の霊のたたりかもしれないので、調べて」って話しはオカルト的
イタコみたいな人に、その子供に取り付いた霊を・・・
その真意がいい。
ラストには、座敷わらしまで登場するよ。

夏休みの宿題に先祖のことを調べたいという中学生の依頼
この話しは、とても良かった。
少女の思いがわかった瞬間。
そこで感情が反転し
切ない彼女の思いが伝わってくる。

無戸籍の人の依頼者の依頼は
ミステリーとしても秀逸

そして、最後の探偵の両親の話し
これも無国籍の問題があった。

この短編集では2作品が無戸籍が話題になっていて
明らかに、それが裏モチーフだと思える。

探偵は、昔、母親に捨てられた棄民だった。
最後のほうで、その母親が彼女を捨てた理由が明かされる。

母親は、ブラジルの移民で無国籍だったのだ。
だから、産まれた子にも戸籍は与えられないと思った。

だから、施設の前に捨てた。

「キミンは戸籍は取れないが、キジなら戸籍がとれるからって・・・」

と母親は言っていたらしい。

棄民は、捨てられた民
棄児は、捨てられた子供

日本の国は、捨て子には優しい国なのである。

「私に戸籍を取らせるために、母は私を捨てたのですか」
「棄民の親はいないほうがましと、カメさんは言っていた・・・」


戸籍がない。それは存在しないということと同じ。
だから、まともな職にもつけないし、まともな部屋も借りられない

そんな思いを娘にさせたくない
だから、母親は娘を捨てたのです。

ネタばれさせてしまいましたが、この話しはとても印象に残りました。
その母親の悔しさが想像できる。

母親は若くして癌で死ぬ
最後まで、まともな職業にはつけず
病院にも行けなかったので癌がわかった時には手遅れだったのでした。

無国籍だと保険証も手に入らないようです。
まさしく棄民です。




2022 8 18




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